母子家庭支援へ社会保障充実を

2012年3月13日 09時51分
(7時間46分前に更新)

 「平等と自立を手に入れるために~シングルマザー母と子・女性の人権を知る」と題したシンポジウムが10日、那覇市の県男女共同参画センター「てぃるる」で開かれた。日本の貧困とシングルマザーについて講演した、フランス国立東洋言語文化研究所日本研究センター博士課程の猿ヶ澤かなえさんは「先進諸国の中でも、日本の公的支援は圧倒的に不十分だ」と訴えた。

 全国民を所得順に並べて、中央値の所得の半分にも満たない人を表す「相対的貧困率」。2004年の日本のひとり親世帯の相対的貧困率は66%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最下位で、50%を上回るのも日本だけだと説明した。

 さらに、父子家庭の収入が、全世帯平均の約75%なのに対し、母子家庭ではわずか38%にすぎなかった。女性の非正規雇用率が53%と、男性の18%と比べても圧倒的に多いことも上げ、「出産後の女性は、低賃金で雇用されることが多く、母子家庭ほど貧困に陥りやすい」と指摘した。

 格差を生んでいる背景として、「リスクは基本的に個人や家族、親族が負担し、国家は最終的な保障のみを負担するという80年代に示された日本型福祉社会の考え方がある」と説明した。

 公的支援が入る前の貧困率では、フランスは30・7%と、日本の26・9%よりも高い。しかし、公的支援が入ることでフランスが7・1%まで貧困率を抑えているのに対し、日本は14・9%と逆転された。また、子どものいる世帯に限れば、OECD加盟国の中でも唯一日本が、公的支援が入ることでより貧困率が高まっていた。猿ヶ澤さんは「公的支援が不十分な上、現状に即していない」と、制度の不備を訴えた。

 猿ヶ澤さんは「貧困は、個人の責任だけではない」と指摘し、社会保障の充実が必要だとした。

 沖縄NGOセンター代表理事の新垣誠さんは、ネパールの女性が置かれる現状を紹介。識字率の低さや男性に従属的に扱われる状況など、人権意識の希薄さが女性を苦しめていると状況を説明した。

 DV被害の多い沖縄の現状についても触れ、「女性を下に見る価値観がある」と指摘。「しっかりした人権意識を持った政策が行われない限り、ネパールのような状況に逆行しないとも限らない」として、社会的な価値観を見直す必要性を訴えた。

 フリーライターの山城紀子さんは、シングルマザーが安全に安心して、生活の基盤を築けないことによる子どもへの影響を指摘した。しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄代表の秋吉晴子さんは、非婚シングルマザーの抱える問題として、寡婦控除が適用されない現状などを説明した。

有料携帯サイト「ワラモバ」では、PCサイトにはない解説記事やスポーツ速報を掲載しています。» 詳しくはこちらから
« 最新のニュースを読む

写真と動画でみるニュース [一覧する]