福島第一原子力発電所で懸命に続けられる復旧作業。
それを担う作業員を撮影し続けるジャーナリストがいます。
過酷な環境で作業を続ける作業員たち。
素顔に迫る写真で伝えたいことがあります。
福島第一原子力発電所から20キロ地点のゲート。
撮影するのは、岩手県盛岡市出身のフォトジャーナリスト小原一真(おばらかずま)さん(26)です。
小原さんは去年8月、福島第一原子力発電所の敷地内に入りました。
事故後の様子に加え、作業員の姿もカメラに収めました。
【小原一真さん】
「毎時15マイクロシーベルトとか18マイクロシーベルトとか、そういうような状況にあって、はっきり言ってあり得ないぐらいの線量の高さの中で食事とか仮眠だとか床にしてるわけですし、そういう状況の中で皆さん休憩してるんだなというのが一番最初のショックでしたね」
マスクを外し、煙草を吸う姿。
薄いマットの上で体を休める作業員。
マスクを置いて、報告書を書く姿もみられます。
【小原一真さん】
「僕ら自身も守られてるわけですよね、彼らの働きによって。それが仮にヤクザに斡旋されていようが、お金の為だけに働いていようが、それははっきりいって関係なくて、実際彼らがやっている事によって今の僕らの当たり前の生活っていうのが成り立っている。にも関わらず自分がカメラマンという立場を考えた時に、なにも出来てないんですよね、それを思った時に誰かが彼らの思いっていうのを伝えなくちゃいけないですし」
福島第一原子力発電所の写真を発表して以来、海外のメディアからも注目されるようになりました。
この日もオーストリアの放送局の取材を受け、作業員が置かれている実態を伝えました。
小原さんは震災発生から一年を機に大阪で写真展を開くことにしました。
日常の報道では顔が見えにくい作業員。
小原さんは、そんな彼らに正面から向き合い、顔や名前を出す承諾を取り付けました。
過酷な作業に当たる彼らはごく普通の人たちでした。
そして事故の被害者でもありました。
福島県川内村へ続く道です。
小原さんがこの道を走るのはもう100回を超えています。
【小原一真さん】
「結局、毎時0.3マイクロシーベルトの低い基準だと低くないんですけどすぐ鳴っちゃう。ウクライナ製で設定が毎時0.3マイクロシーベルトでやってるわけじゃないですか。設定は変えれますけど、変えちゃいけないなって思いますよね。経験則にしたがってこういうの作ってるわけですよね」
小原さんが川内村に通うのは、福島第一原子力発電所で作業に従事する村の建設会社を取材するためです。
この会社では、放射性物質に汚染された水を通す配管作業などを請け負っています。
事故後の被ばく量は、多い人ですでに30ミリシーベルトを超えています。
【建設会社の社長】
「家族食わしていかなきゃいけない、公共事業がストップしている、仕事が全くないっていったら、お金払ってもらうためには東京電力助けなくちゃいけないというのもあります。けどやっぱり家族、自分が食べていくのが一番ですからね」
この会社では現在25歳から55歳までの10人が作業にあたっています。
中には事故の後、失業して加わった人もいます。
労働者の被ばく限度は5年で100ミリシーベルト。
このままだといずれその値に達します。
川内村は村全体が福島第一原子力発電所から30キロ圏内にあります。
震災前およそ3000人いた村民は160人にまで減っていました。
村はこの春から役場や学校を再開することにしました。
原発から22キロ地点にある川内小学校。
校庭には除染ででた汚染された土が積まれています。
子どもたちが避難先の郡山市から戻ってくるため、汚染土の運び出しが急ピッチで進められています。
【建設会社の社長】
「自分らこうやって第一原発で働いていて、どういう状況かっていうのは行ってるんでわかりますよね、で、今帰ってもいい時期かっていったら帰れないと思うんですけどね」
写真が出来上がりました。
福島第一原子力発電所で働く27人の素顔です。
小原さんが聞き出した彼らの心境も合わせて展示しています。
【写真展・作業員たちのコメント】
「娘のお墓がここにあるんですよ。家族はみんな避難させたけど俺だけでも残ろうって」「震災直後だったら、俺どんなことできたんだろうなって。何で俺すぐ来なかったのかっていう後悔が強いです」
「若い人はこれから結婚して子供を作るんだから。やっぱり私らの年齢の人が頑張んないと駄目ですよ」
「でもテレビで見るほど俺らって全然悲観的じゃないですよ。福島頑張ろう、とか言われても頑張ってるしねぇ」
【小原一真さん】
「客観的にその原発の収束を考えた時に40年後にどうなっているんだろうって。40年後も業務が残っているってことは結局、今年生まれた赤ちゃんだって、今学校で勉強している子供たちだってそこで働いているかも知れないわけですよね、そういう事を考えると、本当にそれをしてくれる人がいなくなったらどうするんだっていう議論だとか、その人たちの労働環境だとかっていうのを見直さなくちゃいけないんじゃなのかなってすごく思います」
廃炉まで30年から40年かかるといわれる福島第一原子力発電所。
今日もおよそ3000人の作業員が収束に向けた作業を行っています。
『3.11小原一真(おばらかずま)写真展』
大阪市福島区「フォトギャラリーSai」
3月10日〜4月1日 入場料500円(子供は無料)
http://kazumaobara.com/
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