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 大手の一角、プロミスが三井住友フィナンシャルグループの完全子会社化となることを発表した席上、久保健社長が「もう、過払い金はこれ以上ない。今回の引当金が最後だ」と高らかに宣言したように、過払いネタの“在庫”は確実に無くなりつつある。他の大手消費者金融会社幹部も「もう過払いはヤマを越えました。われわれに請求してきた弁護士さんはこれから大変ですよね」と、もはや他人事だ。

過払いバブルがもたらした
弁護士界の変化

 過払いバブルは、弁護士界にさまざまな変化をもたらした。単にカネをもたらし、多くの法律事務所を潤しただけではない。

 「若手が育っていない――」。ある中堅法律事務所の30代の弁護士は嘆く。

 弁護士界では一人前になるまでの教育期間として、徒弟制度が伝統的に存在する。司法修習が終わって弁護士登録し法律事務所に入所した新人は、その法律事務所に雇われる形でキャリアをスタートさせる。これを“居候”しているということで、「イソ弁」と呼ぶ。反対に、雇う側の弁護士を「ボス弁」と呼ぶ。裁判で必要な書類の作成方法から、依頼人との信頼関係の作り方まで、それこそ手取り足取り、イチから弁護士としての仕事をボス弁から学ぶ。それを知っているこの弁護士は、次のように今の若手に同情する。

 「若手弁護士はボス弁から、国選弁護や離婚、交通事故、債務整理の案件からボスの顧問先の労働問題や株主総会まで、一人前になるまでまんべんなく、経験を積ませてもらえる。それは、ボス弁も“経験こそ弁護士を育てる”ということを、身をもって知っているからだ。でもいまは、みんな過払い。ボスもカネが稼げる過払い案件をたくさん引き受ける。自動的に、下っ端である若手はボスがたくさん受任する過払いを何件もやる。だから、まんべんなく経験が積めない」。

 また別の弁護士は「私のボス弁は、僕らの将来を考えて、やらせる案件をしっかり吟味してくれていた。でも今はみんな過払いとか債務整理、自己破産。若い奴らはかわいそう」と話す。

 過払いバブルはボス弁の振る舞いを変え、連綿と続いてきた若手弁護士育成方法をも変えてしまった。

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  • 第1回 “ポスト過払いバブル”は何でもあり  顕在化する弁護士界の憂鬱な現実 (2012.03.13)
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弁護士界の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年

司法制度改革から10年が経った。法曹界の2割しか機能していない現実を「2割司法」と呼んで問題視し、矢継ぎ早に司法制度が改革されてきた。市民に近い弁護士界を掲げたり、弁護士人数を増やそうと司法試験制度や法科大学院制度を整備したり、さまざまな改革を行った。同時に、過払い金返還請求という空前のバブルも到来した。しかし、弁護士界は制度の理想と現在の姿は必ずしも一致していない。改革とバブルに激しく揺らされ、ただ混乱をしているように見える。

「弁護士界の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年」

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