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 過払いバブルに乗り、飛ぶ鳥を落とす勢いで法人規模を急拡大してきた石丸氏が、寿司屋をオープンさせたとして、弁護士界では話題となった。

 「過払いで一発当てた後は、回転寿司――。いったい、石丸さんは何を考えているのか――」。この寿司店の存在を知った弁護士達は、必ずといっていいほど首を傾げた。そして「儲けたカネの使い道に困ったのでは」「われわれの気づかない、とてつもないウマい話があるのでは」と邪推した。

 ここで、弁護士界と過払い金返還請求について簡単に振り返ろう。

 2006年1月、最高裁判所は消費者金融会社に対して、「利息制限法」の上限金利である15~20%と「出資法」の上限金利29.2%の間の、曖昧にされてきたいわゆる「グレーゾーン金利」を認めないとする判決を出した。これをきっかけに、グレーゾーン金利分のいわゆる「過払い金」を消費者金融会社から取り戻そうと、債務者や過去に消費者金融会社を利用していた完済者がいっせいに動き出した。

 実際の過払い金返還請求の手順は、一般的に、弁護士や司法書士が代理人となって消費者金融会社に依頼人との取引履歴の開示を求め、過払い金を取り戻す。ただ、このやり取りの中では、消費者金融会社側との話し合いや交渉、裁判に持ち込まなければならない事態などの“面倒”な作業は、最高裁判所の判決が出たおかげでほとんど発生しなかった。

 弁護士と司法書士にとっては、時間と労力をかけずに過払い金という“成功報酬”が獲得できる、実にオイシイものだった。空前のバブル到来である。そこに食いついたのがアディーレをはじめとした新興の弁護士法人だった。他の代表選手はミライオ(当時はホームロイヤーズ)、ITJ法律事務所などだ。

過払いバブルは崩壊
請求件数は減少を続ける

 しかし、バブルははじけるもの。過払い金案件も2010年になると頭打ちとなった。消費者金融大手4社は過払い金返還に体力を奪われ、最大手武富士が2010年1月に破綻。業界は虫の息だ。今は過払い金を請求しても、カネがない消費者金融会社からは、過払い金等ほとんど戻ってこないような状況となっている。

 過払いバブルがはじけ、潤っていた弁護士界の環境は一変した。過払いをアテにしていた弁護士達は、いっせいに次の飯のタネを探さなければならなくなった。

 「いずれ過払い案件がなくなることは分かっていた。だから、ここ数年、ずっと次のビジネスを探していた。外食ビジネスはたまたま良い案件があったから」と、石丸幸人・アディーレ法律事務所代表弁護士は、寿司店経営をポスト過払い対策の一つであると話す。

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  • 第1回 “ポスト過払いバブル”は何でもあり  顕在化する弁護士界の憂鬱な現実 (2012.03.13)
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弁護士界の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年

司法制度改革から10年が経った。法曹界の2割しか機能していない現実を「2割司法」と呼んで問題視し、矢継ぎ早に司法制度が改革されてきた。市民に近い弁護士界を掲げたり、弁護士人数を増やそうと司法試験制度や法科大学院制度を整備したり、さまざまな改革を行った。同時に、過払い金返還請求という空前のバブルも到来した。しかし、弁護士界は制度の理想と現在の姿は必ずしも一致していない。改革とバブルに激しく揺らされ、ただ混乱をしているように見える。

「弁護士界の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年」

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