一体改革は、高齢化で膨らむ社会保障の安定財源確保と同時に、先進国中で最悪の財政状況の改善も狙っている。ただ、消費税率を10%に引き上げても、財政改善効果は限定的。財政赤字垂れ流しに歯止めをかけるには、消費税再増税が不可避の情勢だ。
財政の健全化度合いを測る代表的な指標が、毎年度の予算で、政策に使う経費(過去の借金の元利払いを除く)を、税収など借金(新規の赤字国債発行)以外の歳入でどれだけ賄えているかを示す「基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)」。PBがマイナスなら、予算のやりくりが借金頼みの赤字体質であることを示す。政府はPB(国と地方の合計)が国の経済規模を示す「名目国内総生産(GDP)」に占める比率を目安に財政健全化目標を策定済みだ。具体的には、15年度にPB(対GDP比)をマイナス3・2%以下とし、10年度に比べて赤字を半減させる考え。20年度にはPBをプラス(黒字)にするのが最終目標で、国際公約している。
一体改革に伴う今回の消費増税でこの目標は実現するのか。政府試算によると、消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げた場合、15年度のPB(同)はマイナス3・3%と、目標に少し届かない。税率10%への引き上げ時期を当初の15年4月から同10月に半年先延ばししたため、15年度中に税収増効果がフルに効かないためだ。
20年度のPB(同)は黒字化どころか、3%の赤字のまま。額にすると16・6兆円の赤字で、この歳入不足分をすべて消費税で穴埋めするには、さらに6~7%分の税率引き上げが必要な計算になる。しかも、これには民主党が公約する「最低保障年金」導入による社会保障費増額分は反映されていない。
消費税10%でも、財政健全化の最終目標達成や社会保障充実には足りず、無駄な歳出削減に加え、消費税の再増税が不可避の状況だ。一体改革大綱は消費税率10%実現を前提に「今後5年をめどに(次の税制改革に向けた)法制上の措置を講じる」と明記。政府は月内に国会提出する消費増税法案の付則に16年度をめどに次の増税に向けた法的措置を講じる趣旨を書き込み、将来の消費再増税の布石を敷きたい考えだ。=随時掲載
毎日新聞 2012年3月13日 東京朝刊