インタビューは、2006年10月、都内で行われました。伊藤賢治さん、インタビューをセッティングしていただいたCocoeBiz., L.L.C.代表の江崎さんと、3人でお料理やお酒を頂きながら、ゆったりと長時間にわたるインタビューになりました。インタビュアーと記事は木村(Kago)が担当しました。
2006年9月22日は、ゲーム音楽の歴史に着実な一歩が刻まれた夜になりました。様々な機種、様々な会社のゲームから、選りすぐりの名曲たちがオーケストラで演奏されたコンサート『PRESS START 2006 -SYMPHONY OF GAMES-』。伊藤賢治さんは、『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』から『オーバーチュア』『オープニングタイトル』の2曲を、オーケストラとともに自らピアノで演奏されました。壮大な楽曲、そして力強い演奏が聴く者を興奮させ、魅了したのです。
木村 | まず、コンサートの話から始めようと思いまして・・・ |
伊藤 | 『PRESS START 2006』ですね。 |
木村 | はい。植松伸夫さんがその企画者のおひとりでしたが、伊藤さんはその植松さんに誘われて参加されたとか。 |
伊藤 | ええ。もともとは、2年ぐらい前の『THE BLACK MAGES』ライブの『サガ』コーナーでピアノソロを弾いたとき、植松さんが「これぐらい弾けるんだったら、また一緒に何かできるかな」と思ってくれたらしいんです。で、『PRESS START』の企画のとき、『FF』以外にも、他のスクエニ(スクウェア・エニックス)作品の楽曲も挙がったらしいんですが、「そういえばイトケンってピアノ弾けたよな」って思い出したらしくて、じゃあ『サガ』やってもらおうかってことで、こちらに電話がきまして。 |
| 最初は、ピアノソロでどうだと言われてたんですが、オーケストラコンサートでピアノソロっていうのもどうかなあと思って、どうせならオーケストラと一緒にやらせてくださいと、セッティングしていただいて。 |
木村 | 植松さんに誘われたときのエピソードがありましたね。 |
伊藤 | 突然電話がきたもんだからびっくりしちゃって・・・自分の携帯に植松さんの番号を入れてなかったんです。だから、電話が掛かってきたとき、発信元の番号だけが出たんだけど、電波状態が悪かったのか、切れちゃったんですよ。「またイタズラかなあ」と思って放っといたら、1分後ぐらいにまた同じ番号から掛かってきて、やっぱり無言だったんです。だから「うおるぁ!」って(笑) |
江崎 | 怖っ(笑) |
伊藤 | 「・・・植松ですけど」みたいな(笑) |
一同 | アハハハ! |
伊藤 | もうそれからひた謝りで。何年ぶりかにドバーッと冷や汗が出ましたね(笑) |
江崎 | まさかー、って。 |
伊藤 | うん、まさかですよ本当に。それまで連絡とか取りあっていなかったので、いつの間にか植松さんの番号が消えてたんですよ。番号自体は変わってませんでしたけど。 |
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木村 | 『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』の曲を演奏するというのは、どのように決まったのですか? |
伊藤 | それはもう、出演するしない以前に、先に発表されてたんですよ。出演は植松さんの電話がきっかけでしたけど、「実はやるんだけど」って、ファミ通を見たら、ほんとだ『ロマサガ』入ってる、って(笑) |
木村 | (笑) |
伊藤 | 僕は全然ノータッチだったんです。で、「何の演奏する?」って言われて、ピアノと一緒にやる曲として思いついたのがあの2曲(『オーバーチュア』『オープニングタイトル』)で。 |
木村 | 曲は伊藤さんが決めて、でも『ロマサガ』の曲ってことは最初から決まってて。 |
伊藤 | そうですね。 |
江崎 | お気に入りの曲だったんですか? |
伊藤 | うん、それもありますし、『ロマサガ』の中では看板になる曲ということもありましたしね。 |
木村 | もし、『ロマサガ』というタイトル自体が先に決まっていなかったとしたら、何の曲を選んでいましたか? |
伊藤 | 時期的には『聖剣伝説4』が近かったので、(『聖剣伝説』シリーズの曲)『Rising Sun』とか選んでたかもしれませんし、あとスクエニ作品に限らなければ、『カルドセプト』とかもやりたかったなと思いますし。時期的なもの、旬なものってありますから、あの『PRESS START』の時期だと、『聖剣』か『カルド』かなと。 |
木村 | なるほど。 |
伊藤 | でも『ロマサガ』というのは決まっていたので、あの曲がいちばんオーケストラとしても聴きごたえがあるだろうし、ファンの人もそうじゃない人も、どっかで聴いたことがあるんじゃないかな、と思って。 |
木村 | どちらの曲も、『ミンストレルソング』のゲームのときから、伊藤さんがオーケストレーションをされて、生のオーケストラを使われていましたね。 |
伊藤 | そうですね。 |
木村 | 『オープニングタイトル』のほうは、もともとはピアノパートがなかったと思いますが、新しくコンサート用に。 |
伊藤 | そうです。あとづけというか、コンチェルト風にやってみました。 |
木村 | 堪能させていただきました。 |
伊藤 | ほかの曲目と比べるとちょっと短かったんですが、『ロマサガ』の代表曲といったらやっぱりあの部分ですし、あれにもう1曲加えるとまた意味合いが変わってきちゃうので、あれでよかったかなと。 |
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伊藤 | 「へーっ」と思ったのが・・・自分の曲だけだったんですよ、終わったあとシーンとして、2、3秒ぐらい間があってから「ワァー!」って。 |
木村 | ああー。 |
伊藤 | あの“間”って、なんかこっちのほうがジーンとしちゃいましたね、聴き入ってくれたのかなって。だから指揮者も、いつ拍手くるんだ・・・って、お互いに止まっちゃいましたけどね。曲の流れでワァーっていうよりも、ほんとに聴き入った結果ですから、だからこちらにとってはすごく感慨深いものがありましたね。 |
木村 | 演奏が終わったあと、入ってくる植松さんと出て行く伊藤さんが握手されて。あの瞬間も、けっこう感動しましたよ。 |
伊藤 | ハハハ! |
木村 | 演奏前には植松さんと舞台上でお話しされていて、面白いお話がありましたね。入社されたころ、音楽機材の配線を植松さんにしてもらったとか・・・ |
伊藤 | あの、要は、ミキサーに楽器とかエフェクターをつなぐときに、もちろん楽器をつなぐことはできましたけど、エフェクターはそんなに使ってなくて。エフェクター独特の配線の仕方ってあるんですよ、効果的な使い方とか。そのへんは僕もあまり把握してなくて。頼める人といえば植松さんしかいなかったので、頼んでしまったんですけど。今そういう話をすると、「なんて畏れ多い」とか、「あの植松さんに!」って・・・でも当時は“あの”じゃなかったし(笑) |
| で、当時、みんなマッキントッシュを使ってたんですけど、マックの社内LANを使おうということで・・・でも、LANをつなぐにも、どうやるんだ? って悩んでた時に、たまたま通りがかったのが坂口(博信)さんだったんですよ。「すいません坂口さん、これわからないんですけど・・・」「しょうがないな」って、ガチャガチャやって。あとでメールがきて、ちょっと転送してみろって・・・そこまで世話してもらって。その話をすると「坂口さんにまでですか!」って。何者ですかアンタ、みたいな(笑) |
木村 | (笑) ほかに、入社された頃のお話しがありましたら。 |
伊藤 | 僕が入った頃って、音楽室とは言えないようなところに押しこまれていたんですよ。それまで音楽スタッフは植松さんひとりだったので、音楽部屋というか植松部屋として個室が与えられたらしいんですけど、僕が入って、部屋をどうするかっていうのが、上層部の人に届いてなかったらしくて。2人して、かなり片隅に追いやられてしまいましたね(笑) 僕は入社した当初なのでそういうもんなんだと思ってたんですけど。 |
| とりあえずお互いにヘッドホンをして、仕切りを置いてたんですが、どうも僕の叩いてる鍵盤の音がうるさかったらしくて、ヘッドホン越しでも聞こえるって。こりゃ個室じゃなきゃ嫌だと(笑) それで、ちょうど菊田(裕樹)さんが入ってきた時が、開発部と同じフロアーにいた事務が別のビルに引っ越した頃だったんですよ。これはいいチャンスだと植松さん思ったらしくて、「社長室使わせろー」って(笑) |
一同 | (笑) |
伊藤 | 「そこの部屋を3等分して、イトケンと菊ちゃんで分けて使いたいから」って。植松さんの意見ってやっぱり大きいんですよ。開発部ではいちばん年長でしたし、説得力もあって。しょうがないなあ・・・って、でもこっちとしてはラッキー、みたいな(笑) いちばんいい部屋でしたからね。 |
木村 | 植松さんといえば、雑誌(『ガンガンパワード』)の付録CDで、第1号のゲストが植松さん、第2号が伊藤さんでしたけど、植松さんの回で、「次回のゲストは伊藤賢治さん」とお名前が出た時に、植松さんが「アイツ喋んないぞー」って(笑) でも実際にお話しされると、流暢ですよね。 |
伊藤 | あ、僕ね、植松さんと喋んないから(笑) |
一同 | アハハハ! |
伊藤 | あのね、年齢が離れてるから、話題もあんまり交わらないんですよ。ただ、音楽性の好みとか、根本的な部分の好き嫌いは似てるんですけど。スクウェア時代は、僕も『サガ』とか『聖剣』とかやらせて頂いて忙しかったし、植松さんも最初から忙しい方でしたから、そんなに話す機会もなかったですね。だから、その印象が強かったのかな。 |

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木村 | コンサートに関して、こぼれ話のようなものがありましたら。 |
伊藤 | なかなか合わなかったんですよ。僕も初めてのオーケストラとの共演だったので、タイミングとか、指揮者の振りとか。リハーサルはもちろんあったんですが、『ロマサガ』が他の曲よりちょっと短かったこともあって、あまり時間がとれずに。いちばん最初の、オーケストラとピアノの弾くタイミングが同じだったんですが、それが最後のリハーサルのときでも合わなくて。 |
| さすがに指揮者の竹本(泰蔵)さんのところへ行って、「すいません、実は僕もちょっと、アマチュアな部分もありまして、申し訳なかったんですけど」って言ったら、向こうも「いやいやそんな〜(笑)」とか言いながら・・・3、4分ぐらい話をして、打ち解けることができて、いろいろ考えたり、竹本さんにも合わせてもらったりして。そこで初めての演奏で、いちばん出音が合ったときは、すごく嬉しくなっちゃって、そのままの勢いでワアーと弾いちゃったようなところがありますけど。だから、演奏が終わった時の指揮者との握手って、なんか自然に出ちゃいましたね。できた! みたいなね。 |
江崎 | 一体感というか。 |
伊藤 | ええ。 |
木村 | あの、植松さんのラジオ番組に竹本さんが出演されたときのお話で。竹本さんは最後のリハーサルでも8割の完成度にしておいて、本番で100%の演奏が出るように持っていくんだそうで、お話しを聞いているとまさにその通りで。 |
伊藤 | そういう話を聞けば、なるほどなと思いますけど(笑) |
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木村 | コンサートが終わったあとに、出演者の方々が来場者をロビーでお見送りされてました。伊藤さんもいらっしゃいましたよね。 |
伊藤 | 僕はイレギュラーだったんですよ。もともとは、植松さん、桜井(政博)さん、酒井(省吾)さん、指揮者の竹本さん、元スクウェアの野島(一成)さんの5人、企画者だけで出るはずだったんだけど、なぜか僕とか近藤(浩治)さんとかも呼ばれて、どうせなら出演者みんなで行ってくださいって、舞台制作の人がいきなり言ったもんだから、慌てちゃって(笑) |
| 「え、俺たちも?」みたいな感じで。『モンスターハンター』の甲田(雅人)さんとか、カプコンの柴田(徹也)さんとかも・・・で、行ったは良かったんだけど、あんな大ごとになるとは思いませんでしたね。ああいう風になるんだったら、企画側も、もっとちゃんと仕切ったほうがよかったですね。怪我人も出たらしいんですよ。 |
木村 | そうらしいですね。 |
江崎 | 会場で? |
伊藤 | というか、我々が外で出待ちしていたんですよ。で、送ろうという感じだったので、やっぱりみんな、握手してくださいとか、写真撮らせてくださいとか言いますから、どんどん人がたまってきちゃって。それで、僕らならまだしも、植松さんや桜井さんとか、かなり人が集まっちゃって、仕切りきれなくなって。そこで、転んじゃった人がいたらしくて・・・。かわいそうでしたね。それから、「すみません、ここで中止させてください」って。 |
| イベント自体は、すごく良かったので、たぶん、来年・・・再来年ぐらいには、あるんじゃないかな。まあ僕が呼ばれるかどうかはわからないですけど(笑) |
木村 | 是非お聴きしたいです。 |
伊藤 | リクエストがいっぱいあれば、こちらとしては出させていただきたいですね。 |
木村 | コンサート、これからも続けていってもらいたいですけど、一方で、特に採算のこととか、どうなのかなと心配してしまいまして。心配してもしょうがないんですが(笑) |
伊藤 | 個人的なことを言わせてもらうと、主催者がどこであれ、僕らは関係ないんですよ。今回は“ファミ通Presents”と書いてありましたが、僕も・・・たぶん植松さんたちもそうだと思いますけど、熱意をもって、気配りもちゃんとした人なら・・・たとえアマチュアの人でも。主催をちゃんとやってくれて、出演者に対しても、来てくださるお客様に対しても、ちゃんと気を配れる人、プロフェッショナルな心を持った人たちが集まれば、アマチュアでも、どこかの企業でも、そんなに関係ないんじゃないかな。 |
木村 | そういう意味では、こちら(ファン)も頑張らないと。 |
伊藤 | ええ。 |
木村 | 植松さんも、以前からそういったことを仰っていましたので、今回は植松さんご自身がコンサートを企画されて、ひとつ借りができちゃったような感じなんです。 |
伊藤 | アハハ。でも本当、嬉しいのは、ゲームを制作する側もだんだん、僕らより下の世代の人たちが、一緒にやりませんかと言ってくれて。そういう人たちって、小さいときに、僕らが出していた作品を遊んでた世代なんですよね。その彼らが成人して、ゲームを作る側になって、あの時に絵を描いていた人、音楽を創っていた人と一緒にやりたいっていう希望が通って、こちらに話が来たときは・・・「ああ、自分たちの作品がちゃんと伝わったのかな」っていう実感がありますね。すごく嬉しいですね、そういうときは。 |
| 熱意とか、プロ根性が備わってる人って、大会社にいるとは限らないじゃないですか。どんな立場であれ、熱意を持った人と一緒にやりたいなあと思います。そうすると、今度はこっちのほうからプレゼンしたりして、こういうことも出せますよって、自分が持っている以上のことを発表したくなったりする。そういうのが、すごく健全だと思いますね。 |
| 決められた枠の中で、こういう予算、仕組みでやれば売れ行きも出るから、それに沿ってやってね、っていっても、ちょっとつまらないですしね。いい意味でのハプニングがないと。 |
江崎 | 自由な発想ができるっていうのが、アーティストにとってはいちばんいいのかなと思いますね。 |
伊藤 | ええ、まさに。自由な発想、こういう考えもあるのか・・・っていうのは、企業然とした人だとなかなか出づらいものがありますからね。 |
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木村 | 次は是非、『聖剣伝説』とか『カルドセプト』とか・・・ |
伊藤 | うーん、『カルド』は難しいでしょうけどね。『聖剣』といえば、『新約 聖剣伝説』の頃に、秋葉原のアソビットシティっていう所で、トーク&ライブイベントがありまして、ライブ演奏はそれが初めてだったかな。僕は音楽担当として、何曲か演奏しながらトークをして、石井(浩一)さんとか、ブラウニーブラウンの亀岡(慎一)社長、シナリオを書いた生田(美和)さんと。司会は、山下章さん・・・アルティマニアとかを作ってるベントスタッフの社長さんに担当していただいて。 |
木村 | 大勢の前での演奏というのはそれが最初で。 |
伊藤 | きっかけはそうですね。その後に『THE BLACK MAGES』のライブがあったんです。でも、あんまり得意じゃないんですよ、ライブって(笑) どっちかというとスタジオワークのほうが好きで。まあ、年に1回ぐらいならいいかなって・・・でも今年(2006年)はけっこうやりましたけどね・・・どこがやねんって感じで(笑) |
一同 | (笑) |
江崎 | 冗談かと思っちゃった(笑) |
伊藤 | や、本来そうなんですよ。緊張しますしね。 |
江崎 | 大変ですよね、気苦労とかも。 |
伊藤 | うん、そこまでの準備もありますし。 |
2006年は、伊藤賢治さんが長年あたためてきた夢、オリジナルアルバム『Everlasting Melodies』も発売されました。歌物1曲(『心のたからばこ』)以外はすべて伊藤さんの奏でるピアノソロ。優しさ、爽やかさ、切なさ、寂しさなど、いろんな感情を呼び起こす楽曲たちです。
江崎 | 大躍進でしたよね、本当に。 |
伊藤 | 今年はいろいろやらせてもらいましたね。ゲーム以外にもオリジナルアルバムを出したことに意義があったかな、また来年へのいい足がかりになったかなって。 |
木村 | 伊藤さんが、この英語公式サイトを開設されたときに、将来の夢として、オリジナルアルバムの発表を挙げていらっしゃいましたが、その頃から曲を書き溜めていらっしゃったのでしょうか? |
伊藤 | みんな、今回のために書き下ろした曲です。中には、レコーディングまであと2時間! という状況で、おそろしい集中力でダーッと作ってしまった曲もあるし・・・でも意外に、その曲が自分の中ではいちばん良かったりして(笑) |
木村 | あのような、落ち着いた感じのピアノ曲というのが、伊藤さんにとっていちばん自然に出てくるものでしょうか。 |
伊藤 | あれがベーシックです。あそこからいろいろ広げるのですが、根本的な部分は、あのようなピアノソロですね。 |
木村 | ジャケットは伊藤さんのアイディアですか? |
伊藤 | まず僕がイメージをプロデューサーのかたに伝えて、「こんな感じでどうですか」といくつか候補を挙げてもらい、その中から僕が選んだものをまたプロデューサーが持ち帰って、デザイナーのかたに描いてもらった、という手順ですね。 |
木村 | イメージというのは。 |
伊藤 | もともとウィンダム・ヒルというレーベルが好きで、ああいった感じのをやってみたいなと思って。 |
木村 | ウィンダム・ヒルというと、花畑とか枯れた木の写真とか、ああいう自然のものというイメージで? |
伊藤 | そうですね。 |
江崎 | 伊藤さんの英語ウェブサイトも、そういうコンセプトなんですよ。自然との調和とか。 |
伊藤 | 自然回帰しようとか、そういった主義ではないんですが、自分の奥底にはずっとそういうイメージがあるんですね。自分の求めるものは、結局はそこなんだ、という。 |
木村 | CDのレーベル面のデザインは、シンプルで、ちょっとレコードっぽい感じですが。 |
伊藤 | あれはプロデューサー側の指定で、僕も特に反対はなかったので。僕が意見を出したのはジャケットだけですね。 |
| あと、今回は生ピアノじゃなかったので、次回からは生のピアノでやってみたいですね。ストリングスも加えたりして。 |
さらに、時田貴司さん(スクウェア・エニックス)などの方々が結成した『青春演劇ユニット・Pures』の旗揚公演『終わらない僕たちの夜 〜The spring time of life〜』、そして時田さんらが関わった舞台『魔王降臨「Live SIDE & Evil SIDE」』と、2つ(3つ)の演劇作品にも伊藤賢治さんが音楽担当として参加されました。他にもいろんな方々がその音楽を手がけられたのです。
2001年に発売された『カルドセプト セカンド』は、伊藤賢治さんとしてはスクウェアからの独立後初めて音楽を手がけられたゲーム作品であり、その後の仕事への大きな自信になったといいます。そして2006年11月、最新作『カルドセプト サーガ』が発売されました。もちろん、メインコンポーザは伊藤賢治さん。
江崎 | 『ミンストレルソング』の音楽はいいですよね、すごくバラエティに富んでるというか。 |
伊藤 | じゃあ、『カルドセプト サーガ』は是非(笑) もうちょっと違ったバラエティがあるので、聴いてもらいたいですね。初挑戦のジャンルもあるんです、まだちょっと言えないんですけど。 |
木村 | ちょっとお聴きした感じだと、『カルドセプト セカンド』の延長上にあるような音楽なのかな、という印象だったのですが。 |
伊藤 | メインテーマだけを聴いているとそう思うかもしれませんけど、違いますよ(笑) 「えーっ!?」というような・・・作ってる自分でも「これ『カルド』に合うのかなあ?」みたいなのもありますね(笑) でも、プロデューサーの武重(康平)さんは「全然問題ないです、むしろいい意味で壊しちゃってください」って。一度は出しておきたかったけど『サガ』でも『聖剣』でも出せなかったジャンルを、『カルド』で出せました。古代(祐三)さんや僕がやってきた、クラシカルなファンタジー路線の『カルド』音楽から、まったく逸脱した曲もあるんです。 |
木村 | 『カルドセプト サーガ』は、今までよりストーリーに力が入っているという話なので、むしろRPG的な曲が増えるのかと思っていました。 |
伊藤 | それも、当たり前に入っている上で、ですね。ストーリーも、冲方(丁)さんが参加されて、力が入っていますけど、その流れだけにこだわらずに、曲のジャンルとしてやってみたいことをやって、出すことが出来ました。これが受け入れられたら、面白いかもしれない。 |
江崎 | 初めてのジャンルの曲を作るときに、勉強とかはされたんですか? |
伊藤 | 勉強というか、根本的な部分を聴いたりはしました。でも、自分はメロディーから作るほうですから、周りからも「どんなジャンルや曲調でも“イトケン”だよな」といわれますし、それは外せない部分ですね。 |
木村 | 『カルドセプト サーガ』は伊藤さんが初めてXbox360で手がけられたゲームですが、Xbox360は5.1chサラウンドが扱えるということで、特別なところはありましたか? |
伊藤 | いえ、それはミックスの問題なので、曲を作る自分としては意識していないです。 |
木村 | CDはステレオですから、このままサラウンドが当たり前になっていくと、いずれ、ゲームで鳴ってる音よりサウンドトラックのほうが音が悪いってことになっちゃうのかなと・・・。 |
伊藤 | どうですかね・・・そのときはそのときで考えようか、という感じですけれど(笑) |
木村 | 『カルドセプト サーガ』に関しては、心配なく? |
伊藤 | どうミックスされようが、曲として完成しているので、そういう意味では心配していないですね。5.1chが主流になっても、そこでミックスしなおせばいいだけであって。 |
| サラウンドに対する曲の作り方っていうのもあるかもしれませんけれど、今は始まったばっかりですから、どう作るか、手探りの部分もあって。だから、まず2chのステレオの中でいい作品を残した上で、だんだんそっちにシフトチェンジできればいいと思います。自分としては、あくまでも作品ありきで、メディアがどう変わろうと、曲自体が良ければ・・・だって、ビートルズなんて、いろんなメディアがあっても曲自体は変わらないじゃないですか。そういうのが理想ですね。 |
長時間にわたり、お話しを伺うことができて楽しかったです。これからのことを語る伊藤さんの熱い意欲に圧倒される場面あり、雑談の中から文字通りぽろっと出たこぼれ話ありと、聞き応えのあるお話、そして読み応えのあるインタビュー記事になったと思います。伊藤さん、江崎さん、そして、長い記事をここまでお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!
Interviewed & Interview Contents by Kago. Editorial Supervised by Kahori Ezaki (CocoeBiz., L.L.C.) Contents may not be reproduced or published without the permission of CocoeBiz., L.L.C.