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事件
【故郷 大震災から1年】酪農家 できる限りのことをやろうとする気持ちが、「希望」ってことだ。
なだらかな丘の裾野に広がる牧草地は真っ白な雪に覆われていた。標高500メートル、福島県相馬市の阿武隈高地。この地で酪農を営む片平芳夫さん(65)は、牧場を見つめてこうつぶやいた。
「夏になると緑いっぱいの牧草地を茶色いジャージー牛が自由に歩き回る。本当にきれいなんだ。あの景色が見られないかと思うと苦しいね」
片平さんは国内で頭数の少ないジャージー牛だけを集め、牛舎ではなく放牧で育てていた。こうした牧場は国内では珍しい。昨夏は東京電力福島第1原発事故の影響により、36年目で初めて放牧ができなかった。牛舎に隣接する部屋の壁に張られた紙には、「2011年 不可」と黒いマジックで書かれた文字が残る。
毎朝、日が昇る前から30頭の牛の鳴き声が響く牛舎でエサやりと掃除を始める。以前とは違い、牛に食べさせているのは業者から購入した米国産と豪州産の牧草だ。
「酪農を辞めるわけにはいかない。いつ果てるともない放射能との戦いだが、頑張っていくんだ」
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