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  著作権法18条(公表権) 

  1 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。

2 著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものと推定する。
 <1> その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。
 <2> その美術の著作物又は写真の著作物でまだ公表されていないものの原作品を譲渡した場合 これらの著作物をその原作品による展示の方法で公衆に提示すること。
 <3> 第29条の規定によりその映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。

3 
著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものとみなす。
 <1> その著作物でまだ公表されていないものを行政機関(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「行政機関情報公開法」という。)第2条第1項に規定する行政機関をいう。以下同じ。)に提供した場合(行政機関情報公開法第9条第1項の規定による開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 行政機関情報公開法の規定により行政機関の長が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。
 <2> その著作物でまだ公表されていないものを独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)に提供した場合(独立行政法人等情報公開法第9条第1項の規定による開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 独立行政法人等情報公開法の規定により当該独立行政法人等が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。
 <3> その著作物でまだ公表されていないものを地方公共団体又は地方独立行政法人に提供した場合(開示する旨の決定の時までに別段の意思表示をした場合を除く。) 情報公開条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該地方公共団体の条例をいう。以下同じ。)の規定により当該地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が当該著作物を公衆に提供し、又は提示すること。

4 
第1項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。
 <1> 行政機関情報公開法第5条の規定により行政機関の長が同条第1号ロ若しくはハ若しくは同条第2号ただし書に規定する情報が記録されている著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき、又は行政機関情報公開法第7条の規定により行政機関の長が著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき。
 <2> 独立行政法人等情報公開法第5条の規定により独立行政法人等が同条第1号ロ若しくはハ若しくは同条第2ただし書に規定する情報が記録されている著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき、又は独立行政法人等情報公開法第7条の規定により独立行政法人等が著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、若しくは提示するとき。
 <3> 情報公開条例(行政機関情報公開法第13条第2項及び第3項に相当する規定を設けているものに限る。第5号において同じ。)の規定により地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第5条第1号ロ又は同条第2号ただし書に規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき。
 <4> 情報公開条例の規定により地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が著作物でまだ公表されていないもの(行政機関情報公開法第5条第1号ハに規定する情報に相当する情報が記録されているものに限る。)を公衆に提供し、又は提示するとき。
 <5> 情報公開条例の規定で行政機関情報公開法第7条の規定に相当するものにより地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示するとき。

最終内容確認日2011/11/14

解説・重要判例 

 
本条は、未公表の著作物を公表するか否か等を決定する権利は、原作品やその複製物を直接的に提供・提示する場合であろうと、その二次的著作物を通して間接的に提供・提示する場合であろうと、そのいずれであるかを問わず、著作者が有することを定めた規定です。

 
著作者は、「その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)を公衆に提供し、又は提示する権利」を有するとされています(1項)。この「自己の未公表著作物を公衆に提供・提示する権利」が、「公表権」と呼ばれているものです。「(著作物を)公衆に提供・提示する」行為は、著作権法上の「公表」(4参照)と重なっているため、「公表権」と名付けられています。
 「公表権」とは、いわば、著作者に認められている、未公表著作物の公表に係わる決定権のことですが、具体的には、次の3つの内容を含むとされています。
 
① 自己の未公表著作物を公衆に提示・提供するか否かを決定すること
 
② 公衆に提示・提供するとしたならば、いかなる態様で公表するか(例えば、出版か、上演か、放送か等)を決定すること
 ③ いつ・いかなる時期に公衆に提示・提供するかを決定すること
 従って、著作者の同意を得ずに無断でその者の著作物を公表してしまう行為はもちろん、著作者による著作物の公表(公衆への提供・提示)を無権限で妨害する行為なども公表権の侵害となりうると解されます。もっとも、公表権をもって、著作者が第三者に対し自己の著作物を公衆に提供・提示することを積極的に請求する権限まで認めるものではないと解されます。

 
公表権の対象となる「未公表著作物」には著作者の同意を得ないで公表された著作物を含みます1項かっこ書)。そのため、外見上は「公表」されていても、それが著作者の同意を得ずになされたものであれば、公表権との関係では「未公表」として扱われ、よって、そのような著作物をさらに著作者に無断で公衆に提供・提示する行為には、なお公表権が働きます。


 
原著作物が未公表である「未公表の二次的著作物」を公衆に提供・提示する場合には、当該二次的著作物の著作者の同意を取り付けることはもちろんですが、そのもとになっている原著作物の著作者の公表権も働きます1項後段)。従って、そのような二次的著作物を、その原著作物の著作者の同意を得ずに公表する行為は、当該原著作物の著作者の公表権を侵害することになります。

 
公表権の存在によって著作権の行使に過度の制約を加えることを回避するため(1号、3号)、また、原作品の所有権との調整を図るため(2号)、一定の場合には、著作者の公表意思を推定する規定が設けられています(2項)。すなわち、2項各号に掲げる行為には法律上著作者の公表の同意が「推定」されるため、当該行為を著作者の同意を得ずに行ったとしても、通常は、つまり同意の「推定」が覆る事情がない限り、公表権を侵害することには当たりません


 重要判例
   ・ 『KLS著作権判例エッセンス>公表権の侵害性』参照












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