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【大相撲】

白鵬 思い重い1勝

2012年3月12日 紙面から

◇大相撲 春場所 初日

栃煌山(手前)を突き落としで下した白鵬=大阪府立体育会館で

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 昨年は八百長問題で中止となり、2年ぶりに開幕した大相撲春場所。27歳の誕生日を迎えた横綱白鵬=宮城野=は小結栃煌山(25)=春日野=を突き落とし、貴乃花に並んで歴代5位となる22度目の優勝に向けて白星発進。初の綱とりに挑む大関把瑠都(27)=尾上=は新小結の臥牙丸(25)=北の湖=を上手投げで下し、白星スタートした。大関2場所目の稀勢の里は栃乃若に押し倒された。他の大関陣は快勝した。

 誕生日だからこそ誰よりも強い思いがある。東日本大震災から1年。そして27回目の誕生日を迎えた初日。「言葉で励ますこともできるけど、やっぱり違った形、行動で示すこともある」。白鵬は満員御礼の場内で、取組を通じて無言の激励を日本中に送った。

 1年前。宮城野部屋で若い衆から誕生日をケーキで祝ってもらい、自宅の高層マンションに到着するや地震が起きた。テレビに映る津波の様子が目に焼きついて離れなかった。

 「同じ空の下でこんなことが起きているのが信じられなかった。映画の世界というか、夢を見ているようだった」

 モンゴルの家族から電話があった。原発の影響を心配し「早く帰ってきなさい」「お前がだめなら、将来のために子どもたちだけでも帰しなさい」と言われた。

 それでも白鵬は帰らなかった。「帰ると言ったら大変なことになる。ほかのスポーツと違うんだ、という気持ちがあった」と連日の猛稽古で責任を示した。

 力士会の援助で被災地に作っている土俵が4月に完成する。「コツコツと小さいことをやっていれば、それが大きいものになる」。モンゴルにはこんなことわざがあるという。「水滴が集まれば海ができる」。

 この日、白鵬は栃煌山にもろ差しを許し、攻め込まれた。「いつも通りの感覚だけど、また違うと感じた」。特別な思いが、少しばかりのすきを生んだ。だが、「組んでよし、離れてよし。ある意味、自分の目指す相撲かもしれない。勝負に勝って相撲に負けた内容だったけどね」と前向きにとらえる。この白星が集まって、22回目の優勝につながっていくことを知っている。 

   (岸本隆)

 

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