大阪市西成区で17年前に起きた看護師刺傷事件で、重傷を負った被害者の林裕子さん(51)らが殺人未遂罪の公訴時効(当時15年、現在25年)で不起訴となった男(61)に慰謝料などを求めた訴訟の判決が12日、大阪地裁であった。男が口頭弁論に姿を見せず、反論もなかったため、石原稚也(ちがや)裁判長は請求通り約4500万円の支払いを命じた。
石原裁判長は男を犯人と認定したうえで、別の看護師を逆恨みした男が勘違いして裕子さんを刺したとみられる動機や、車いすが必要になった裕子さんの介護にかかる費用などを考慮して慰謝料を算出した。
訴訟では、事件への関与を時効後に認めた男の供述調書を大阪地検がほぼ全面開示。判決後、夫の良平さん(58)は大阪市内での記者会見で「調書を読み、妻に落ち度がないと分かったことが一番の収穫」と語った。一方、男は所在不明で支払い能力もないとみられている。全国犯罪被害者の会(あすの会)の代表幹事も務める良平さんは「被害者を経済的に支援する新たな仕組み作りに取り組みながら男を捜し続けたい」と述べた。(岡本玄)