福島第一原子力発電所の事故から1年になる。この間、韓国の原発21基は、安全性が高まったといえるだろうか。国民はこの問い掛けに対する答えをいまだに得られていない。われわれは原子力に替わる代替エネルギーと再生エネルギーの開発に向け、以前より熱心に取り組み、近い将来その成果が出るはずだと期待できるのだろうか。これに対する答えもやはり「いいえ」だ。
福島第一原発の周辺は地獄のような状況だ。乳牛は、水を一口飲もうと干上がった水路に落ちてもがき、放射線に被ばくしたペットたちが人けのない道をさまよい、牛や豚の死骸があちこちに横たわって腐敗している。田畑には背の高さほどに伸びた雑草だけが生い茂っている。海辺に位置する福島第一原発から半径20キロ以内の地域、628平方キロメートルは立ち入り禁止区域となっている。ソウル(605平方キロメートル)よりも広い地域がゴーストタウンと化しているのだ。
東京の人々は九州から米を取り寄せ、水道水が怖いためミネラルウォーターを購入して飲む。原発事故前に製造された缶詰だけを子どもに食べさせるという主婦も多い。日本政府は、今後10年間の復興費用を23兆円と見積もっている。
世界の原子力発電は、福島原発のような事故が今後二度と起こらないという確信、「ノー・モア・フクシマ」を各国の国民にしっかりと植え付けることができなければ未来がない。福島の事故の衝撃で、韓国よりも技術が進んでいるドイツは2022年までに、スイスも34年までに原発を全て閉鎖すると宣言し、原発に替わる新しいエネルギー源の研究開発に国家の総力を上げて取り組んでいる。日本も原発54基のうち52基が運転を停止しており、来月までには残りの2基も定期点検のため稼働を中断する予定で、全ての原発が停止した状態を迎える。これは、現在の状況では原発の安全性を確信できないからだ。
韓国政府は福島の事故以降、原発21基に対する緊急点検を行った。昨年7月にはIAEA(国際原子力機関)専門家チ-ムによる安全点検も実施した。また、古里原発(釜山)の海岸防護壁を高くしたほか、地震発生時に原子炉が自動停止するシステムを設置し、非常発電設備を増やすなど、46種の短期的、中期的対策を進めてきた。昨年10月には大統領直属の原子力安全委員会も発足した。しかし、委員長は原子力産業の振興に生涯をささげてきた人物で、その後、委員会が現在の原発の状況に対する検査や規制基準をさらに強化したという話も出ていない。このような中で、国民の原発への不信感は膨らんだのかしぼんだのか分からない状況だ。