土居文代弁護士
プロフィール詳細
私は、もともと「女性でもずっと仕事を続けていけるように何か手に職を付けた方が良い」と考えていました。これに加えて、祖母が不動産バブルの際に地上げの被害にあったこと、阪神大震災の際にマンションが全壊認定を受けたにも拘わらず区分所有者の決議がとれず建て直しができなかったことなど、実際に弁護士の必要性を感じる場面が多々あり、弁護士を目指すきっかけとなりました。
その後、修習の際には、裁判官と弁護士のどちらを選択するべきか、どちらの方がより人を支える仕事ができるのかで悩んだのですが、弁護修習の中で、裁判に至らない事件が数多くあることを目のあたりにし、人をより身近で支えることができるのは弁護士であると感じて弁護士の道を選ぶに至りました。
弁護士の中でも企業法務を選んだのは、人々の日常生活に対する企業活動の影響が非常に大きい現代社会では、企業に対してしっかりした法務サービスを提供することが結果的に人々の生活を支えることにつながると思ったこと、また企業法務が社会にある法律問題を網羅的に俯瞰できる分野であり、弁護士としての基礎を作るのに適していると考えたことにあります。
執務環境は本当に良いと思います。2年目以降の弁護士の執務室は全て個室になっており、必要に応じて自分の業務に集中できる環境が整っています。データベースや図書室が充実している点も執務環境として優れている部分だと思います。
雰囲気についていえば、「朗らか」というのが今私が所属している育成グループに関する印象です。明るい人ばかりですし、案件の関係で忙しいときも、皆どこかその状況を楽しむ傾向があるような気がします。あまりに忙しそうなときはお互いに助け合っているので、その点も雰囲気に反映されているように思います。
事務所に入って最初の1年半の間はM&Aに係る仕事が多くの部分を占めていました。M&Aは弁護士が30名程度関与するようなものから2から3名程度で対応するものまで幅広く経験しましたが、どの案件も個性的であり、とても印象に残っています。M&Aは人と人の関わり合いの中で成立する部分もあり、相手方との関係上弁護士として苦労を強いられたものもありました。その案件においては、苦労したからこそ私自身も弁護士として貴重な経験を得られましたし、また相手方に対して論理的に堂々と交渉するパートナーや先輩弁護士がとても頼もしく、当事務所を誇らしく思った記憶があります。
これに対して、現在ではM&Aよりも企業の日常的な業務について法的観点からアドバイスする仕事が多くなりました。先ほど申し上げたとおり、私は弁護士を志望した動機から、有事の際の仕事だけでなく、日常的に企業をサポートする仕事をしてみたいと育成グループのパートナーに相談していたところ、ある会社の日常的な業務をサポートする仕事を紹介されたのです。企業の日常業務に対するアドバイスはM&Aとは全く違う視点が求められるうえ、必要とされる法律知識も異なる部分があり、最初は随分戸惑いました。そのうちに、M&Aで得た知識や経験をうまく応用して使えることがわかるようになり、今まで勉強・経験してきたことが使えるようになってくると、仕事にもより充実感を感じることができるようになりました。
事務所の教育体制について一番大きいのは育成グループの存在だと思います。育成グループがあることで、パートナーとアソシエイトの距離がとても近く、案件に限らず育成グループのパートナーとの意思疎通が密になります。このおかげで、アソシエイトにとっては将来の進路や今後関与したい仕事の方向性についてパートナーに相談しやすい環境となっているように思います。実際、私は、関与したいと思っていた分野の仕事について育成グループのパートナーに相談し、それを耳にした育成グループの他のパートナーから「別の育成グループのパートナーがその分野に関する仕事を手がけている」と紹介され、現在では育成グループの枠を超えた仕事を担当するようになりました。
ほかに研修制度として、入所してから1ヶ月の研修期間と、仮配属(新人弁護士は1年間は仮配属という形で育成グループに所属します。本配属は入所後2年目以降となります。)されてから1年間パートナーと執務室を共にする同室制度があります。研修期間中には、色々な法律について各分野の専門家から講義を受けることができますが、それだけでなく、実務上の論点に関する討論に参加したり、実際の仕事の段取りを体験しながら、より具体的に実務を学ぶことができます。日常の企業法務においては、司法試験や研修所の際には見たこともなかったような法分野にぶつかることもありますので、この研修で各分野の土地勘を身に付けることは有用だったと実感しています。
また、仮配属されてから1年間のパートナーとの同室制度も、最初の1年間で複数のパートナーと同室になりその仕事ぶりを間近で見ることができたので、仕事の進め方や依頼者とのやり取りの方法などについて早い時期から具体的なイメージを持つことができました。これは親の背中を見て学ぶような気持ちで、私は個人的にはとても良かったと思っています。
物理的な面からも精神的な面からも非常に働きやすいと思います。休憩が必要なときなど、執務室が個室で他の人の目を気にせずに自分のペースで仕事を進めることができるというのはとても助かります。精神的な面でいえば、相談できる女性の先輩が多数いるというのがとても大きいです。結婚や出産を経験されている方も多く、その生活スタイルや仕事のスタイルから学ぶことも少なくありません。
新しい法律問題を抱える多様な案件に関与できることだと思います。企業が活動するにあたっては、法律に抵触していないか常に気を配らなくてはなりません。企業は経済活動を担う社会的存在ですが、そもそも法によって権利・義務の主体と認められているにすぎませんし、事業を行うには業法による規制や消費者との関係など配慮すべき法律問題は無数にあります。しかも、法律は日々変わり続けており、継続的に行ってきた事業でさえ、法改正によっては規制の対象になってしまうこともあります。そんなときに対応を要求されるのが企業法務弁護士です。
これからも、法律が変われば新しい問題が出てきますし、新しい分野ができると思います。新しい問題にどんどんぶつかって、それを一つ一つ丁寧に処理していくことが、弁護士としての足腰を鍛えてくれると信じて、更に経験を積んでいきたいと思っています。