東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の37市町村のうち35自治体が「役所の人員が不足している」と感じていることが日本経済新聞社の調査で分かった。復興への障害として財源不足を挙げる例も目立つ。2つの制約が復興の足かせになりかねない状況だ。
各自治体では今後、防潮堤などの復旧や高台移転、区画整理などの事業が本格化する。宮城県石巻市の2012年度の一般会計予算案は2632億円で11年度の4.2倍。亀山紘市長は「経験したことのない巨額の予算執行で、手続きなどを十分に行える人的体制が確保できない」と訴える。
復興に向けた業務の増加に職員数が追いつかないという状況は被災自治体に共通している。職員が「かなり不足」との回答が29自治体(78%)に達し「やや不足」も6自治体(16%)あった。不足分野は土木や建築、都市計画関連が目立つ。宮城県名取市の佐々木一十郎市長は「国の職員を各自治体に2、3人常駐させてほしい」と提案する。
復興事業を支える復興交付金や復興特区制度の利用にも職員不足が影を落とす。仙台市の奥山恵美子市長は「特区申請でマンパワーが割かれ事務処理にも時間がかかる。手続きの簡略化が望まれる」と指摘する。
震災発生直後から各自治体は被災自治体に職員を派遣し復旧を支援した。全国知事アンケートでは、1月末時点で被災3県を除く44都道府県のうち43自治体が職員を派遣していると答えた。今後も「増やすことが決まっている」(34%)、「増員検討中」(25%)と自治体間の連携による支援が続く。ただ「現状維持」との回答も30%あった。
もう一つの障害は財源だ。復興に向けて最大の課題・障害は財源だと答えた自治体は21あり、12年度の税収が11年度より減るとしたのは30自治体。福島県南相馬市の12年度の税収は前年度のほぼ半分に落ち込む見通し。同県川俣町の古川道郎町長は復興に向けた国への要望に「人的支援、制約の少ない交付金など財政支援」と回答した。
亀山紘、奥山恵美子、古川道郎