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食の不安 どう払拭 検査や情報公開 手探り

2012/3/11 3:30
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 東京電力福島第1原子力発電所事故による放射性物質の拡散は、消費者の「食」への不安をかつてないほどまでに高めた。「絶対安全」を保証する明確な食品基準がない中で、小売りや外食企業は独自検査の徹底や検査そのもののルールを自ら設定。産地への情報伝達にも工夫を凝らすなど「安心」の獲得に腐心している。

産地を大きく表示した鮮魚売り場(東京都品川区のイオン品川シーサイド店)

 「放射性物質『ゼロ』を目標に検査体制を強化しています」。東京都品川区のイオン品川シーサイド店。野菜や魚、肉が並ぶ生鮮売り場に向かうと、こんな表示がすぐ目に飛び込んでくる。

 昨年3月の東日本大震災の発生から現在までに、同社はプライベートブランド(PB)のコメ、牛肉、野菜などを対象に放射性物質の自主検査を実施。件数は1万にのぼる。昨年11月には放射性物質を微量でも検出したら、原則として販売しないという踏み込んだ独自基準も決めた。

 厚生労働省は4月から食品に含まれる放射性セシウムについて、昨年3月に策定した暫定規制値を見直し、4分の1~20分の1に引き下げる。イオンの取り組みはこうした流れを先取りし厳格化したものだ。原発問題が長期化し「食品に対する消費者の不信感が増大しかねない」との危機感が後押しする。

 関東中心に宅配事業を手がけるパルシステム生活協同組合連合会(東京・新宿)も2月、もともと低く設定していた独自の放射性物質基準をさらに引き下げた。「頻繁に食べる商品を中心に厳しくした」もので飲料水、牛乳、コメなどは1キログラムあたり10ベクレル以下に改めた。コメに関しては4月から適用される国の新基準の10分の1となる。

 こうした自主検査は外部機関に依頼するケースが大半だ。イトーヨーカ堂も第三者機関を通じて牛肉や東日本で生産する生鮮PB「顔が見える野菜。」などを対象に実施。一方で牛丼店「すき家」を運営するゼンショーのように、川崎市の自社施設で簡易測定器を使い、抽出検査しているところもある。

 ただ検査体制をどこまで厳しくしても「絶対安全」という保証は得られない。そこで消費者に産地や検査結果などの情報を正確に伝え、「これなら安心」と納得してもらう努力も必要となる。イオンなどは自主検査の結果をホームページで公表。例えば消費者から問い合わせが多かった水産物の場合では、店頭で魚が取れた海域を地図付きで細かく表記した上で、「サンマ」「アジ」など商品名よりも大きな文字で明記している。

 あわせて原発や放射性物質の情報が飛び交う国内だけでなく、海外で風評被害を拡大させないための取り組みも欠かせない。

 コメ卸最大手の神明は2月9日、米ロサンゼルスにファストフード式の日本食店を開き、ソバ、おにぎり、てんぷらを販売した。試食を通じて原発事故で日本食を敬遠する動きを払拭してもらいたい思いがある。

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東京電力、イオン品川シーサイド店、福島第1原子力発電所、厚生労働省、すき家、ゼンショー、イトーヨーカ堂、神明

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