3人に1人が就職できない未曾有の氷河期時代。たしかに気の毒ではあるが、多くの学生たちの大企業志向、企業研究不足、無知も目に余る。
まず現実を知ることから
就職人気ランキングの「上位常連」として知られるある大手企業には、万を超すエントリーシート(ES)が送られてくる。採用担当者がまず始めにやるのは、そんなESの「仕分け作業」だ。
東大、京大、慶應、早稲田など有力大のESは大学名が記された箱に入れられるが、それ以下の中堅大学については「中堅国立大」、「中堅私立大」という箱に一緒くたに放り込まれる。さらに残った大学については「それ以外」としてまとめて扱われるという。
「東大、早慶などの有力大学からは『毎年○○人』採用しなければいけないという厳格な目標が設定されていて、採用担当者にとってはこの数字を確保することが至上命題となる。一方で中堅大については『数人』、それ以外は『人材がいれば採用する』という程度にしか決めていない。
採用段階で学歴差別はしないと謳っているけど、実際は少しの有力大学に絞って採用活動をしているのが現実です」(同企業で採用担当を務めたことがある幹部社員)
こうした手法は「ターゲット採用」と呼ばれ、企業の採用担当者の間では公然の秘密とされている。3人に1人が就職できない超氷河期にあって、何十社、百社とエントリーする大学生も出てきているが、その中にははじめから門戸が閉ざされている者がいるということだ。
就職難は混迷を深めている。大学生の内定率は過去最低を2年連続で更新、統計を取り始めて以来初めて7割を割り込む水準まで落ち込んだ。
背景には不況による求人数の激減もあるが、一方で学生の「無知」「企業研究不足」も顕著で、自ら首を絞めていると見る専門家も多い。元日本経済新聞編集委員で現在は大学ジャーナリストの恩田敏夫氏はこう指摘する。
「4月末時点の内定率を見ると文系では旧帝大、早慶は8割に上るが、その他私大は35%と開きがある。こうした大学間格差が出てくるのは、中堅大の学生が大手企業や有名企業に就職したいという夢を捨てきれず、受かる見込みのない企業ばかりに殺到しているから。そうした学生に『就活は厳しい』と言われても、『君は大手以外の企業に目を向けたのか』と問いたくもなる」
トヨタや高島屋がリクルーター制度を復活させたのも、上位校の学生を狩りにいくためと見られ、こうした「格差」は今後さらに広がる可能性が高い。恩田氏が続ける。
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