「ピッツァ」「ピザ・パイ」 |
ひらの あさか
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ピッツァの先祖とは
ピッツァの発祥といえば、イタリアのナポリといわれていますが、その前身は、発酵させない小麦粉生地を薄く、円型にのばして焼き、油とにんにくを塗っただけのものだった。また、小麦粉生地にイーストを加え発酵させて塩、オリーブオイルを加え、やわらかい生地に仕上げて焼いた「フォカッチャ」が、ピッツァのルーツともいわれている。フォカッチャは、ラテン語で「火で焼いたもの」「炉端焼き」を意味することばで、古くからイタリアで食べられていた。保存がきいて、かさばらないので、携帯用のパンとして好まれていた。現在でも、フォカッチャは、野菜やチーズやハムなどをのせたり、はさんでパニーニ「サンドウィッチ」にして食べられています。
王妃が火付け役に
新大陸からもたらされたトマト。最初は観賞用だったトマトが、食用になって、ピッツァに使われたのは、18世紀のこと。ピッツァ生地にトマトソースをのせて、オイルをふったシンプルなもので、オイルとトマトを意味する「オーリオ・エ・ポモドーロ」「ポモドーロ」は、黄金のリンゴ=トマトを表すことばで、ピッツァには欠かせない材料となった。 この「オーリオ・エ・ポモドーロ」は、別名を船員風「マリナーラ」と呼ばれている。これは、トマト、にんにく、オレガノ、オイルなど船積みができる材料なので海の上でも作ることができたからその名がある。 それから約100年後、ナポリのピッツァ職人ラファエロ・エスポシートの店に、時の国王とその妻マルガリータ王妃が、庶民の食べものピッツァに興味をもってあらわれた。ラファエロが出したピッツァは、ピッツァ生地の上に、トマトソース、モッツァレラチーズ、バジリコののったシンプルなもので、トマトの赤、モッツァレラの白、バジルの緑、イタリアの国旗を表したピッツァに、王妃はいたく感動し、恐れ多い名ではありますが以降このピッツァを「ピッツァ・マルガリータ」と呼ぶようになった。
ピザ、アメリカへ、日本へ
19世紀後半に多くのイタリア人が、アメリカのニューヨーク、シカゴに移り住んだ。そして、20世紀に入るとイタリア系移民によるピザ(アメリカでは、この名)の店がニューヨークのリトルイタリーに開店する。ロンバルディという名の店で、これがアメリカにおける「ピザ」の誕生となる。 生地が厚く、アメリカナイズされてゆくピザは、パイの一切れ「ピース・オブ・パイ」から、ピザ・パイと呼ばれるようになったとか。最近では、正しく「ピッツァ」と呼ぶこともあるという。ハンバーガー、ホットドッグと並んで、手軽に手づかみで食べられることから、ピザはファーストフードの仲間入りをし、アメリカンスタイルの食べ方は定着してゆく。 さて、時は下って第二次世界大戦戦時下の神戸。イタリア海軍付きの料理人だったアントニオが、神戸のレストランに伝えた味が、日本初のピザとなる。日本に上陸したピザは、小麦粉にイーストを加えて作ったパンのように厚い生地に、その頃、日本にあまりなじみの少なかったトマトソースにチーズがのったものだった。その後、同じ港町横浜にイタリア系アメリカ人の開いた店は、ステーキハウスだったが、ここでの売れ筋は何とピザだった。70年代には、世界最大のピザチェーンが上陸し、ハンバーガーなどのファーストフードと同時にブームを引きおこすようになり、今日では、宅配にまでピザが定着している。
ピッツァの種類
イタリアでは、丸型のおなじみのものから1m近くに細長い「ピッツァ・ア・メートロ」これは、はじめは「まかない」用のピザだったが、今では、具を何種類かチョイスして生地の上にのせ、いろいろな味が楽しめるピッツァとなっている。「カルッツォーネ」は、別名「リピエーノ」つまり詰めもの入りのピッツァで、見た目は餃子の親分のような形をしていて、モッツァレラチーズやハムなどを詰めて焼く。「ピッツァ・フリッタ」揚げピッツァは、リコッタチーズや豚肉を詰めて、ふたをして揚げたものです。このほか、フォカッチャにトマトソース、オリーブの実、ペコリーノチーズ、紫たまねぎスライスなどをのせて焼いたフォカッチャベースのものもある。
やみつきの味、ピッツァ
「ピッツァ・ナポリターナ」ピッツァ生地の上に、トマトソース、アンチョビー、モッツァレラチーズ、ケッパーをのせて焼いたもので、ケッパーの酸味がピッツァの味をうまく整える。 「牛そぼろピッツァ」ピッツァ生地の上にトマトソース、そして牛肉をしょうゆ、清酒、本みりんを加えて煮込んで作った牛そぼろにチーズをのせて焼いたもので、冷めてもおいしいしょうゆ味。チーズとの相性もいい。 「ピッツァ・プロシュート」ピッツァ生地は厚めに作る。焼き上げた生地に、生ハムと、たっぷりとルッコラをのせて、パルミジャーノ・レッジャーノを削ってのせる。 「ピッツァ・プロシュート」きのこを使ったピッツァは、生地に、椎茸、舞茸、しめじをちぎって、にんにくのみじん切りと一緒にオリーブオイルで炒めてのせ、モッツァレラチーズをのせて焼く。 「あさりのむき身ピッツァ」生地にトマトソースをのせ、オリーブオイルで、にんにくスライス、セロリみじん切り、あさりのむき身をさっと炒めてのせ、赤・黄ピーマンを細切りにしてのせ、チーズをのせてこんがりと焼く。 「サラダタイプのピッツァ」生地は焼いて冷ましておく。その上にサワークリームをぬり、生トマト、セロリ、オニオンを細かく切ってのせ、スモークサーモンはレモン汁にくぐらせて、上にのせる。
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(食文家)
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参考文献 |
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イタリア味の原点を求めて |
バートン・アンダーソン |
白水社 |
クックブックに見るアメリカ食の謎 |
東 理夫 |
東京創元社 |
至福のナポリピッツァ |
渡辺陽一 |
NHK出版 |
ダンチュウ |
1997.7月号 |
プレジデント社 |
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