孤立死 プライバシーの壁、希薄な人間関係 立川
産経新聞 2月23日(木)7時55分配信
|
拡大写真 |
女性と男児の遺体が見つかったマンション=22日、東京都立川市(伴龍二撮影)(写真:産経新聞) |
「1回目に郵便受けにあふれていた郵便物が、2回目にはなくなっていた。長期の不在と判断してしまった」(市障害福祉課)。生活保護は受けず、保育園や幼稚園にも通わない。2人と行政の唯一のつながりだった障害児世帯向けの紙おむつの支給サービスも「都会の孤立死」を防ぐ手段にはつながらなかった。
「虐待の疑いがあるならともかく、ケースワーカーに家庭に無理やり立ち入る権限はない。プライバシーに踏み込むのは難しい」と厚生労働省障害福祉課の担当者は行政の限界を示す。
なぜ孤立を深めたのか。知的障害児を持つ親たちでつくる「全日本手をつなぐ育成会」の宮武秀信事務局長(63)は「障害児というレッテルを貼られることへの抵抗感や、子供に対する自責の念を抱き、自分の子供を障害児と周囲に伝えられない親は多い」と話す。
障害者支援施設への短期入所、児童ヘルパーなど、障害児を持つ保護者への行政のサポートは拡充されつつあるが、「気後れもあり、サービスを受けたくないという人もいる」。マンションの住民も、男児に障害があることを知る人はほとんどいなかったという。近隣住民との関係の希薄さも漂う。
こうした孤立は、障害児を持つ家庭に限った問題ではない。日本福祉大学健康社会研究センターの鈴木佳代主任研究員(社会階層論)は「小さな子供を抱える母子家庭や老老介護の世帯など、一人が一人を支える世帯であっても『他人の手は借りない』と肩肘を張って生きている人は多く、孤立の危険性は高い」と指摘する。
75歳以上の要介護者のいる世帯のうち、75歳以上が介護する割合は平成22年に25・5%に及んだ。未成年の子供がいる母子家庭も元年は55万4千世帯だったのが、22年には70万8千世帯となり増加傾向にある。
鈴木主任研究員は「難しい問題だが、地域とのつながりが大切だ。行政はプライバシー保護と孤立を混同させてはいけない。ある程度の介入があってもよいはず。こうした人たちを社会につなぎ留めておくことも行政の仕事だ」と話す。
【関連記事】
「組長を撃った男」鳴海清の死体は背中の天女で特定された
昨年の孤独死、最少36人 阪神大震災の復興住宅
増え続ける孤独死に需要高まる 遺品整理士の資格
女子大生衰弱死 同居の男に懲役10年求刑
「被告が毎日殴った」と同居の姉 茨城の女子大生衰弱死公判
1回生議員130人 首相新たな「敵」
最終更新:2月23日(木)8時13分