復興の実像…復興利権に“マル暴”暗躍
2012年3月10日(土)17時0分配信 夕刊フジ
大津波で甚大な被害を受けた東北の沿岸部。流された瓦礫の山から金品を“盗み出す”輩も [ 拡大 ]
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復興に向かう東日本大震災の被災各地の様子が連日報じられている。一部では、復興バブルも指摘されているが、現地を歩くと、不条理な現実も横たわっていた。復興利権を狙って暴力団や周辺者が入り込み、街の治安を脅かしているのだ。沿岸部では未曾有の災害に便乗する“火事場泥棒”も横行していた。被災地の光と影とは−。
仙台一の繁華街・国分町。きらびやかなネオンに彩られた街には、かつての活気が戻っている。「震災後、県外から働きに来る人や、新しい事業を始めようとする人がかなり増えた。ブランド品や高級外車も飛ぶように売れているらしい。復興バブルです」(地元タクシー運転手)
昨年5月から10月まで、仙台地区のデパートでは前年比の売上高が6カ月連続で増加した。昨年下期の高級外車の販売台数伸び率は、全国でもトップになったという。仙台市内は高層マンションの建設ラッシュに沸いているが、いいことずくめではない。
「復興利権を狙って、県外から多くの暴力団と関係者が入ってきている。往来ではケンカが頻繁に起きているし、関西弁の柄の悪い連中が一部の飲食店をたまり場にしている。街の治安が悪化しなければいいが…」(県政関係者)
瓦礫の山が残されたままの沿岸部では、別の問題も発生していた。
宮城県気仙沼市は死者1017人、行方不明者387人という甚大な被害に見舞われた。地元飲食店主(61)は「このあたりの復興はまだまだ。仙台との格差を感じる」とため息をつく。
漁師町として栄えた同市では、多くの人々が水産業に関わる仕事に就いていた。だが、津波で港や水産関連施設が壊滅状態に陥り多くの住民が失職。無力感が人々の心を蝕んでいるという。
「震災後3カ月ほどは、瓦礫の撤去作業を市から請け負って臨時仕事としてやっていたが、それもなくなった。義援金をもらっても使い道がないから、毎日パチンコ通いしたり、贅沢品を買ったりして散財する者も多い。1〜2年後の生活を考えると不安でしようがない」(同店主)
宮城県によると、家族の中に死亡・行方不明者が出ると、1人につき110万円の義援金が被災者に支給される。加えて、自宅が全壊すれば100万円。津波による被害なら、20万円が加算される。こうした“悲しみの対価”が「復興バブルを支えている面もある」(前出・市政関係者)というからやり切れない。
一方、混乱に乗じて利益を得ようとする不届き者の存在も、被災者に動揺をもたらした。
「このあたりには現金収入の多い網元が結構いて、数百万円ものタンス預金をしている人がいた。でも、津波で多くが流されてしまった。ボランティアらに紛れて、海に流れ出した現金や札束を集める輩がいた」(同)
地元警察によると、こうした“火事場泥棒”による被害が続出。金融機関の金庫から約4000万円が盗み出されたケースもあったという。
「現金だけでなく鉄くずも狙われた。『トラックで乗り付けた集団が、線路を持ち出した』という報告もありました。泥棒には違いありませんが、厳密に言うと海に流れ出したものは遺失物ではなく漂流物の扱いになる。横領や窃盗などの罪に問うことができないのが現状です」(宮城県警幹部)
被災者の心に真の平穏が訪れるのはいつか。