東日本大震災の発生から11日で1年。住民に少しでも早く知らせ、避難してもらうにはどうするか。大分県内の自治体は「3・11」の教訓を新たな防災対策に生かそうとしている。
江戸時代の宝永地震で、高さ11・5メートルの津波が押し寄せたとされる佐伯市は、昨年から携帯電話会社の災害情報速報サービスの活用を始めた。市民の携帯電話に、避難指示や避難所の位置などの情報をメールで配信する。回線が混んでいても影響を受けないのが特長で、市防災危機管理課は「出張などの滞在者にも早く情報が届く」と話す。
県は住民に注意を促すために、沿岸部の自治体に海抜表示を明記した表示板を設置したが、別府市は独自に中国語と韓国語を併記した海抜表示板を約50カ所に掲示する。同市は「大型船寄港などで、中国や韓国の観光客も多い。避難を迅速にするため」と狙いを話す。
国東市は、2012年度に作製する防災ハザードマップに、高さ10メートルの津波を想定した浸水想定区域を掲載する。同市総務課は「10メートルだと相当、内陸部まで被害が出る」と市民への周知を徹底する方針だ。
避難路や避難指定地の新たな確保も課題だ。佐伯市は約130の避難路を整備。大分市は避難指定地を3カ所から14カ所に、避難指定ビルを1カ所から143カ所に増やした。
被災地では、長期の避難所生活を強いられる地域もあった。このため、県は物資の備蓄量を従来の5万人分から18万人分に増やす。品目も従来の8品目から防寒用カイロや非常用電源などを加えて倍増させる計画だ。
震災後は、原子力災害への懸念も強まった。県は昨年9月、大分市佐賀関から約45キロにある四国電力伊方原発の重大事故に備え、愛媛県と迅速な情報提供を受けるなどとした確認書を交わした。
=2012/03/11付 西日本新聞朝刊=