松山市幹部が、8日開かれた、同市議会の「裏金」疑惑を調べる調査特別委員会で、疑惑を告発した孫請け会社の元社長について、前科や別の事件で公判中であることなどを公表した。この幹部は「どういう方が証言しているのか市民が知らないで判断するのはアンフェア」と説明したが、専門家は「告発者に社会的制裁を加えることにつながる」と批判してしている。
同調査委は、市の公共工事を巡る「裏金」疑惑報道を受けて、昨年3月に設置。同7月には元社長を参考人招致して告発内容を聞き取ったが、市議会はその際、「元社長のプライバシーを守る」として、秘密会にしていた。
しかし、一般公開されたこの日の委員会では、渡辺滋夫・公営企業管理者が、元社長の刑事裁判の検察側の冒頭陳述を引用し、実名は明かさずに、前科や経歴などを報告。渡辺管理者は委員会後、「公の裁判で出たことを言っただけ」と強調した。
田島泰彦・上智大教授(メディア法)は「前科前歴はきわめてセンシティブな情報で、刑事裁判の冒頭陳述を本来の目的と違うところに利用するのは適切でない。前科を公表することは、内部告発など大事な証言をしにくくする」と批判している。【栗田亨】
毎日新聞 2012年3月9日 地方版