(平成15年11月第82号)

 現在、ほとんどの人が持っていると言っていい程普及している携帯電話。街中で話している人、メールをすごい速さで打っている人をよく見かける。そんな日頃から何気なく使っている携帯電話が、視覚障害者などの目になることを皆さんは、知っているだろうか。

携帯電話でサポート

 NTTドコモには、FOMAというテレビ電話がある。そのFOMAが視覚障害者の目になるという。

 例えば、視覚障害者が一人で自動販売機で飲物を買おうとしても、どこに何があるか分からない。そんな時に、このテレビ電話で、離れた場所のテレビ電話を利用している相手に電話をかけ、説明して欲しい物(ここでは自動販売機)にカメラを向けて相手に見せる。そうすれば、その画像を見て相手が説明するのをイヤホンから聞き、好きな飲物を買える。また、知らない場所でも、電話の相手さえいれば同じ要領で道案内にもなる。

 こういった方法で視覚障害者の外出などをサポートしている「テレサポートNET」という団体がある。代表の長谷川貞夫さん自身も視覚障害者。長谷川さんは、このテレサポートを利用するようになって、家に来る手紙や外出先でお店の名前や商品を電話一つで読んでもらうことになり、便利になったそうだ。

 2001年10月に発売されたFOMA。長谷川さんは、それを利用して視覚障害者支援のためにテレサポートを実証実験し、できるだけ多くの視覚障害者に知ってもらうためにテレサポートNETを立ち上げた。そして現在、全国で講習会を行っている。この「テレサポート」(telesupport)という名称は、「電話」(telephone)と「テレビ」(television)と「サポート」(support)の意味を合わせたものである。

テレサポートを利用するうえで、様々な説明してくれる電話相手のことをサポーターという。サポーターはボランティアで行われており、利用する視覚障害者とサポーターは登録制となっている。

 そんなサポーターの中に興味深いものを発見した。それは、私と同じ筋ジストロフィーの人が視覚障害者のサポーターをしたということだ。目が見えて話すことが出来れば、重度身体障害者でもサポーターになれる。日頃からボランティアをしてもらう側の重度身体障害者が、サポーターとして、逆にボランティアする側になれるということは、「人の役に立てる」という気持ちになれ、自信にもつながる。また、このような活動を行うことで重度身体障害者の社会参加にもつながり、視覚障害者のボランティア確保にもなる。

様々な障害者に

 このサポートは、視覚障害者だけではなく、重度身体障害者や聴覚障害者にも利用できる。

 身体障害者の中には、重症化しなかなか外出する機会が少なく、「自分が気に入った洋服を買いたい」と思っても気軽に行くことができない。そんな時、サポーターが利用者のために外へ行き、要望される情報を画像として伝える。そうすれば、自宅にいながら外の情報を入手でき、自分の気に入った物が買える。この他にも美術展などに出展した自分の作品を見るためにサポートを依頼したなどとサポートの利用法は様々だ。

 聴覚障害者とのコミュニケーションは、以前、ファックスでのやり取りが主だったものが、メモ機能やメール機能を使いリアルタイムで相手の反応が分かる携帯電話が利用されるようになった。このような文字を見るだけの携帯電話ではなく、テレサポートによって手話でサポートしてもらうこともできるようだ。その場に応じてメモ機能を使ったり、テレサポートで手話サポートと自分にあったものを利用できる。

お得な割引サービス

 このようにテレサポートしてもらうことの問題の一つに料金がある。利用すれば、利用した分、携帯電話の料金は割高になるからだ。しかし、料金が割高になるからといってなかなか抑えることは難しい。なぜなら、テレサポートは、視覚障害者の目であり、生活を支えるもの。そういったものを料金気にせずに普段から「いつでも」「どこでも」利用したい。

 そんな障害者のための割引サービスが各携帯会社から最近始まった。各会社によってそれぞれ細かく割引料金は違うが、大体基本料金は半額になるようだ。特にテレサポートを利用する者として、この半額はかなり嬉しいこと。これから携帯電話も携帯会社を変えても番号が変わらないようになる。そうなれば、各社競争となるので通話料金も競って安くなるだろう。そうなれば、たくさんの人がテレサポートをもっと使いやすくなる。

各社 割引内容 割引対象者
NTTドコモ 1.基本使用料 50%割引
2.付加機能使用料
  ・iモード使用料、
  ・留守番電話サービス使用料等
               50%割引
・身体障害者手帳
・療育手帳
・精神障害者保健福祉手帳
のいずれかの交付を受けている方
au 1.基本使用料 50%割引
2.au携帯電話
  一般電話向け通話料 50%割引
3.他社携帯電話
  PHS向け通話料 20%割引
・身体障害者手帳
・療育手帳
・精神障害者保健福祉手帳
のいずれかの交付を受けている方
vodafone 1.基本使用料 50%割引
2.通話料
  ・vodafone
  ・一般電話 50%割引
3.メール送受信料
  ・スカイメール
  ・ロングメール 50%割引
・身体障害者手帳
・療育手帳
・精神障害者保健福祉手帳
のいずれかの交付を受けている方

早期実現を

 現在テレサポートNETでは、2002年10月に車両財団からの助成金で、電話機と通信料を援助してもらい、約45台の電話機を用いて活動している。長谷川さんは、今後の問題として、「視覚障害者で一人住まいの人は多数おり、その人は、目が必要なはず。自殺者防止のための命の電話が24時間あるように、いつでも頼めるセンターが必要」とセンターの必要性を語っている。

 このようなセンターが全国各地に設置されれば、視覚障害者だけではなく、様々な障害者も利用でき、生活がしやすくなる。そんな「いつでも」「どこでも」「だれとでも」利用できるセンター設置の早期実現を望んでいる。

波留子