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災害時に広がるツイッター活用
去年3月11日の地震発生直後、電話などがつながらないなか、比較的つながりやすかったのがソーシャルメディアです。
中でも短い文章を投稿する「ツイッター」は、安否確認や情報交換の有効な手段として威力を発揮しました。
今、次の大災害に備えて、そのツイッターをさらに活用しようという動きが、全国の自治体や教育現場で広がっています。
災害とメディアの関係について取材を続けてきた生活情報部・山下和彦記者が、最新の動向をまとめました。
通信手段の確保に向けて
去年3月11日、多くの人が直面したのは、緊急時こそ頼りにしたかった通信手段が、ほとんど役に立たないという困った事態でした。
政府は9日のIT戦略本部で、災害時の通信手段確保のあり方を検討する官民共同組織、「IT防災ライフライン推進協議会」の設置を決定しました。
ここでテーマのひとつになっているのが、「ツイッター」の活用です。
威力を発揮したツイッター
東日本大震災では、地震発生直後、携帯電話の通話やメールはダメでも、ツイッターで家族や友人と連絡を取り合うことができたという人が多くいました。
ツイッターはインターネット上のサービスですが、固定回線だけでなく携帯電話やスマートフォンからも利用できます。
通話がほとんでできなかった携帯電話もインターネットは比較的つながりやすかったため、ツイッターを使うことができたのです。
ツイッター本体のサーバーがダウンしなかったことも功を奏しました。
災害情報の発信に活用
今回の震災で特徴的だったのは、自治体が災害情報の発信にツイッターを活用したことです。
岩手県や宮城県気仙沼市は、ツイッターを通じて津波からの避難を呼びかけ続けました。
また茨城県鹿嶋市は、3月11日の夜から急きょツイッターで情報の発信を始めました。
役場が停電したり役場内のサーバーがダウンしたりするなかで、モバイル環境からアクセスできたツイッターを情報発信の手段として活用したのです。
その後もツイッターの活用に乗り出す自治体は増加していきます。
地方自治体以外にも、総理大臣官邸や東京電力がツイッターでの震災関連情報発信を始めました。
今月に入って、福島県もツイッターを始めるなど震災前に120余りだった自治体や公的機関のツイッターは、現在およそ500にまで拡大しました。
またNHKも含めたマスメディアも、さまざまな情報発信にツイッターを利用しています。
学校現場では
教育現場でも活用の動きが広がっています。
災害時に「子どもの安否を保護者に知らせる手段」としての利用です。
例えば、おととしから学校行事などの情報をツイッターで発信してきた埼玉県の越谷市立大袋中学校は、東日本大震災の発生直後から、ツイッターで学校にいる生徒の様子を伝えていきました。
“生徒は教室待機中です。けがはありません”
“引き取りが可能な保護者の方は中学校までお越し下さい”
携帯電話も固定電話も通話ができないなか、校長先生の機転でツイッターを使うことを決断。
保護者に向けてメッセージを発信していったのです。
これを見てホッと胸をなで下ろした保護者もいました。
当時2年生の息子が中学校に通っていた栗原皐さんは地震が起きたあと、中学校のツイッターで子どもの無事を知りました。
さらに「引き取り」を求めているのを確認して学校に急ぎました。
栗原さんは、「震える手でスマートフォンを操作し、ツイッター上に『待機中です』の文字を見つけました。そして最後の行に『ケガはありません』とあるのを見て、すごく安心しました」と話していました。
震災後、中学校では、ツイッターを使える教員の数をそれまでの3人から13人に増やしました。
緊急時に情報を書き込める人を多くするねらいです。
こうした取り組みに全国から問い合わせが相次ぎ、近くの学校でもツイッターの導入が広がっているそうです。
さらにこの中学校では、ツイッターに加えて、新年度から「フェイスブック」の利用も計画しています。
次の大災害に備えて「複数の情報発信手段をそろえておきたい」というのが理由です。
大袋中学校の大西久雄校長は、「保護者もどの手段で安否情報を見るか分からない。色々な方法があれば選択肢が増えていいと思っています」と話していました。
「子どもの安否を何とかして確かめたい」というのは、災害時の保護者に共通する思い。
それに学校側も応えようとしているのです。
次の大災害に備えて
さて、ツイッターの公式案内サイト(http://twinavi.jp/hope/)は、9日、震災から1年になるのを前に、今後の災害時の活用方法について発表しました。
このなかでは、災害時に膨大な書き込みが予想されることから、必要な情報を検索で見つけやすくするため、情報に「ハッシュタグ」と呼ばれる識別用の符号をつけることを提案しています。
たとえば、地域の情報については「#東京」のように#と漢字の地域名を、また、支援情報は「#支援」、避難情報は「#避難」などと文末に書き込むものです。
このほか、災害時に役立ちそうな公的機関のツイッターアカウントも、まとめて紹介しています。
ただし、去年の震災時に威力を発揮したからといって、次の大規模な災害で問題なく使えるかどうかは分かりません。
利用者や投稿数の急増が、システムに負荷をかける要因になるからです。
日本国内では利用者が2000万人を超えたとも言われていて、「あけましておめでとう」の投稿が増えた今年の元日は、一時的に接続しにくい状況になりました。
会社側も今後、サーバーの強化を進めるということです。
一方、利用者側も、ひとつのツールに頼るのではなく、できる限り複数の通信手段を使えるようにしておくことや、日頃から使い方について習熟しておくことが欠かせません。
普段使っていない道具はいざというときに使えないものです。
またこうしたサービスは苦手でよく分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
ITに詳しい人に情報を教えてもらったり、使わせてもらったりするのも1つの手かもしれません。
東日本大震災からまもなく1年。
次の災害時にどうやって連絡を取り合うのか。
それを考えておくことは重要な防災対策のひとつです。
(3月9日 22:05更新)