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【福井発】

「近すぎる」オフサイトセンター 原発事故対応の拠点 頭抱える自治体

2012年3月10日

敦賀市は代替施設求める

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 全国各地にある原発のオフサイトセンター(OFC)が見直しを迫られている。原発で事故が起きた際の対策の拠点となる施設。福島第一原発事故では全く機能せず、被害の拡大につながった。巨額の税金を投じた施設の在り方に国や自治体は頭を抱えている。

 二月中旬、駿河湾を震源とするマグニチュード(M)8を想定した静岡県の原子力防災訓練。国や県、中部電力、自衛隊、周辺自治体など関係者五百人が参加、御前崎市の浜岡原発OFCには災害現地対策本部が設置された。訓練終了後、川勝平太知事は「原発から近すぎて、OFCも待避が必要な場合があるんじゃないか」と皮肉たっぷりに話した。

 OFCは、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を活用し、安全で効率的な住民避難を指示する、いわば「司令塔」。ところが、福島事故では、原発から五キロ先のOFCが放射能漏れの影響で全員避難となり、その役割を果たせずに住民らは余分な被ばくを受ける結果になった。

 浜岡のOFCは福島より近い二・三キロしか離れておらず、放射能どころか津波で押し流される可能性も。管轄する橋本唯一・浜岡原子力保安検査官事務所長も「不安といえば不安」と心もとない。

 一九九九年のJCO臨界事故(茨城県東海村)をきっかけに建設されたOFCは、そもそも大規模な原発事故や自然災害を想定していない。全国に十六ある原発OFCのうち五キロ圏内にあるのは、福島、浜岡を含め五カ所。十キロ以内だと、美浜、大飯、高浜など三分の二近い十一カ所にのぼる。敦賀は十三キロ。

 保安院は事故の教訓として、OFCの換気設備に放射性物質を除去するフィルター設置などの対策を施すが抜本策にはほど遠い。川勝知事は浜岡のOFCを二十キロ離れた静岡空港西側に移転させることを国に求めているほか、敦賀市も「代替施設を建設するべきだ」(原子力安全対策課)と注文する。

 関西電力の美浜原発が立地する美浜町のパート森久みどりさん(57)は「迅速で的確な避難指示を取ってほしいのが地元住民の願い。これでは不安」と漏らす。

 国がOFCの建設で投じた税金は、百六十億円以上で、移転や代替施設となれば、さらに金がかさむ。静岡県原子力安全対策課の藤原和夫課長は「国は金だけ出して『あとは県でやってください』では同じ。国も覚悟を持って取り組んでほしい」と話している。 (蜘手美鶴、安福晋一郎)

 

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