ただ、こうした調査・研究には批判もある。地震調査委の観測地域拡大は「東日本大震災を契機に、過小評価を嫌って想定震源域を広く考えすぎている」とみる地震学者がいる。石橋名誉教授が根拠とするアムールプレート仮説を否定的にとらえる研究者も多い。地震調査委は昨年12月、南海トラフ沿いと糸魚川―静岡構造線断層帯とはメカニズムが異なり、連動しないとの判断を示した。
地震調査委は大震災後、地震計やGPSによる地震波・地殻変動の観測結果に加え、過去の津波堆積物や古文書の記録を、将来の地震を想定する手段として重視する方針を打ち出した。江戸時代以前の大地震を知り、見落としや「想定外」が少ない地震予測地図を作るのが目的だが、地震計などを使った観測体制に比べ、堆積物や古文書の調査では地震の規模・震源の位置などを見極める精度が落ちる。
今後も各地で想定される巨大地震の規模や震源域が改訂されていく見通しだが、注意したいのは、地震の規模や発生確率の数字の大小にとらわれすぎないことだ。発生確率が高い地震はすぐに起き、低い地震は当分起きない、ということにはならないからだ。例えば阪神大震災は、発生直前の時点で30年以内に起きる確率は0.02~8%と推定されていた。
津波堆積物や古文書の記述も、過去の地震を考えるうえで貴重な資料だ。調査・研究の結果は冷静に受け止めて、防災対策の整備につなげたい。自治体は避難経路や津波避難用ビルなどの検討・確保、個人は家具の固定や住宅の耐震対策、食料や日用品の備蓄などに、それぞれ努める必要がある。地震や津波が起きる国に住んでいることを忘れてはならない。
(科学技術部 草塩拓郎)
地震、石橋克彦、巨大地震、GPS、東日本大震災
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