boing boing からですが、第二次世界大戦中の1944年に米国のOSS(戦略諜報局)が作成した「サボタージュ・マニュアル」なるものが存在しているのだそうです。当然敵地での話ですが(自国でやったら大変)、仕事の進みを遅らせるように人々をトレーニングするためのマニュアルとのこと。その内容が掲載されているのですが、なかなか面白いです:
■ Sabotage manual from 1944 advises acting like an average 2008 manager (boing boing)
意訳込みでてきとーに訳してみると、こんな感じ:
- 何事をするにも「通常のルート」を通して行うように主張せよ。決断を早めるためのショートカットを認めるな。
- 「スピーチ」を行え。できる限り頻繁に、長い話をすること。長い逸話や自分の経験を持ちだして、主張のポイントを解説せよ。「愛国的」な主張をちりばめることを躊躇するな。
- 可能な限りの事象を委員会に持ち込み、「さらなる調査と熟考」を求めよ。委員会のメンバーはできるだけ多く(少なくとも5人以上)すること。
- できる限り頻繁に、無関係なテーマを持ち出すこと。
- 議事録や連絡用文書、決議書などにおいて、細かい言葉遣いについて議論せよ。
- 以前の会議で決まったことを再び持ち出し、その妥当性について改めて問い直せ。
- 「警告」せよ。他の人々に「理性的」になることを求め、将来やっかいな問題を引き起こさないよう、早急な決断を避けるよう主張せよ。
- あらゆる決断の妥当性を問え。ある決定が自分たちの管轄にあるのかどうか、また組織上層部のポリシーと相反しないかどうかなどを問題にせよ。
以上8ヵ条。信じられないですが、米国の国家機関が本気で作ったマニュアルです。なぜこんな活動をしていたかという理由は、マニュアルの解説部分にあります:
Acts of simple sabotage, multiplied by thousands of citizen-saboteurs, can be an effective weapon against the enemy. Slashing tires, draining fuel tanks, starting fires, starting arguments, acting stupidly, short-circuiting electric systems,
abrading machine parts will waste materials, manpower, and time. Occurring on a wide scale, simple sabotage will be a constant and tangible drag on the war effort of the enemy.無数の市民によって行われる単純なサボタージュ(※マニュアル内では、破壊活動を伴う本来の意味での「サボタージュ」と区別するためにこの言葉が使われています)は、敵に対する有効な武器となり得る。タイヤを傷つけたり、燃料タンクから燃料漏れを起こしたり、火事を起こしたり、議論を巻き起こしたり、愚かな行動を取ったり、電力をショートさせたり、機械の部品をすり減らすことで、資源や労働力、時間が無駄になるだろう。広範囲で行われることによって、単純なサボタージュは、敵の戦争行為に対する継続的かつ効果的な障害物となるのである。
とのこと。つまり上で指摘されていたような行動が蔓延すれば、敵国の社会や経済にダメージを与えられるわけですね。ひょっとして、会社の○○さんが仕事を妨害しているのも、敵国のスパイだからなのか!?(きっといまの日本が停滞しているのも、スパイが大量に送り込まれているからに違いありません。)
マニュアル全体(計36ページ)については、こちらからPDFファイルをダウンロードできます。興味のある方はどうぞ、って「ライバル会社を潰したいからこのマニュアルで……」という意図で使ってはいけませんが。
< 追記 >
そもそも何でこんなマニュアルが世に出たの?という点ですが、どうもボストンで開催中のイベント"Enterprise 2.0"が震源のようです。以下にまとめましたので、よろしければこちらもどうぞ:
■ CIA版ウィキペディア"Intellipedia"、順調に稼働中 (シロクマ日報)
私の会社にはこのようなマニュアルはないですが、きちんと実行されているような気がします。少人数ではなくそれなりに多くの人が無意識に実行しています。
しかし、第2次世界大戦のころから、米国は勝つためには何をすべきか体系的に研究していたことに驚きです。
私たちがこのマニュアルを実行しないことに気をつければ、少しは物事が迅速に動くようになりますね。
投稿情報: yasuo | 2008/06/12 08:12
yasuo さん、コメントありがとうございます。
幸いウチの会社にもこんなマニュアルはありませんが、密かに配布されているのを知らないだけかもしれません。いや、親会社にはきっと配布されて(ry
……それにしても、米国はしたたかな国ですよねー。
投稿情報: アキヒト | 2008/06/12 09:35
興味深い記事ですね。
日本の国会答弁や日本の企業体質をそのまま表している様で笑いが出ました。この様な工作活動を行わなくとも自らする国ですからね。アメリカもさぞ楽だった事でしょう。
投稿情報: aki | 2008/06/12 12:38
日本と違って米国は公文書を原則公開する法律が整備されているので、一部の軍事機密などを除いて入手することはそんなに難しくないみたいですよ。
投稿情報: aaa | 2008/06/12 15:31
GHQ指導の下、マニュアルを使ってみた実験的国家が日本…ってわけじゃないんですよね?
投稿情報: pico | 2008/06/13 08:53
あれ?なんかこのマニュアル通りな国知ってるけど・・w
投稿情報: ker | 2008/06/13 13:44
確かに、絶対避けるべきこともあるけど、
(2とか4とか5、6はね。バカな**どもに読ませてやりたいよ。
2は愛国だけじゃなくてイデオロギーでもヒューマニズムでも
宗教でもなんでもあてはまるな)
これ民主主義社会では仕方のないコストも含まれてないか?
軍ではなるべく避けるべきかもしれんけど、日常の組織運営では仕方ない部分もあると思う。
それを簡単に押さえつけられる組織ってもっとひどいことになると思うんだけど。
投稿情報: mm | 2008/08/22 01:23
これは非常に興味のある内容ですね。
原文をみてかなりのボリュームで、
マネージャとスーパーバイザーという部分がとても気になったので私のブログに日本語訳をおいておきました。
英語はかなり難しく、誤訳等あれば連絡くだされば助かります。
投稿情報: flat_planet | 2010/06/07 18:12