これから書く話は、俺が傷を治すために温泉へ行った時の話である

指輪の力をもってしても治癒が危ぶまれた重傷。それをわずか一日で治してしまった俺は、皆に変態扱いされ、客室の隅で落ち込んでいた。

(俺って・・・変態なのか?)

一晩のうちに何百回と繰り返した己への問い。それを再び自分へ向けた時、部屋のドアがノックされた。

「望月さん。いますか?」

夏奈子の声だ。

「・・・」

「望月さん?朝ですよ?」

「・・・」

「望月さん、入りますよ?」

ドアが開き、蛍光灯の光りとともに夏奈子が顔をのぞかせた。

部屋の様子を見て、夏奈子の顔が強張る。

「ど、どうしたのですか?こんなに部屋を暗くして・・・」

俺は身体を丸め、夏奈子に背を向けた。

「変態には・・・お似合いだろ?」

「す、すねているのですか?」

「・・・別に」

「あの、とにかく部屋を明るくしましょう。カーテンと障子を開けてもよいですか?」

「夏奈子、部屋に入るつもりか?いいのか?変態が伝染るぞ?」

俺はクックックと暗く笑った。






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