東日本大震災に対処する会議の議事録がなかった問題で、政府は9日、福島第1原子力発電所の事故を受けた原子力災害対策本部などの議事概要を公表した。当時の閣僚らは「米スリーマイル事故が3つ重なった」「統率がとれていない」などと発言。情報不足から意見がかみ合わず、政府の意思決定は混迷した。突然の大地震と原発事故の前に国の備えが機能不全に陥った様子がうかがえる。不十分な連絡体制は復旧を急ぐ現場と、政府・東京電力本店が再三衝突する形で表れた。
震災当日の昨年3月11日夜に開いた原子力災害対策本部の初会合で、松本龍防災担当相は「官邸に情報が入っていない」と発言。1号機の水素爆発後の同13日には、海江田万里経済産業相が「深刻な破損はない旨報告を受けている」と述べた。
同14日には菅直人首相が「避難範囲は20キロメートルで十分」との見方を説明したが、玄葉光一郎国家戦略相が「違う意見もある」と反論。同戦略相は同17日にも「これは戦争だ。3つのスリーマイル事故が重なったようなものだ」と語った。同15日は片山善博総務相が「消防活動への要請も断片的かつ子供っぽい」「統率がとれていない」と悲鳴を上げた。
昨年7月19日、平野達男復興担当相は「除染をしても簡単には戻れない高線量の地域」に言及。「福島県双葉町などは帰還できないことを覚悟している」と述べた。
政府・東電統合対策本部の議事概要では、現場との衝突も描かれている。同11月2日には、核分裂が続く再臨界の可能性を発表した東電本店に対し、吉田昌郎所長が「作業員がおびえる」と主張。再臨界は起きていないとの立場から「(会見できちんと説明しないなら)明日の作業を全てストップさせる」と述べた。
累積100ミリシーベルト超の放射線を浴びた作業員は5年間作業できないとの見解を厚生労働省が示したとする報道を受け、同4月29日の会議で吉田所長は「人を割けなくなり、収束シナリオが厳しくなる」と指摘。同5月に予定していた厚労相の視察を「本部が認めても発電所長としては拒否する」と反発した。(肩書は当時)
福島第1原子力発電所、東京電力、海江田万里、松本龍、玄葉光一郎、片山善博、平野達男、菅直人
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