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病院など 避難に平均1週間余

3月9日 18時50分

病院など 避難に平均1週間余
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原発事故の直後に、福島県内の30近い病院や高齢者施設が、医療設備などの整った施設に避難する際、平均で1週間余り、中には10日以上も避難先が決まらず、その場にとどまったり、転々としたりしていたことが、NHKの取材で分かりました。
避難中に死亡する人も相次ぎ、施設の関係者は、避難の際の混乱が影響した可能性があると指摘しています。

事故のあと、政府は、原発から20キロの範囲で次々と避難指示を拡大し、周辺も含めた福島県内の29の施設が患者や入所者を避難させました。
このうち、NHKの取材に応じた27の施設について、医療設備などが整った施設に避難するまでの期間を調べたところ、去年の3月11日から平均で1週間余りかかっていたことが分かりました。
原発から9キロ余りの富岡町の病院は、福島県のあっせんで高校の校舎にいったん避難しましたが、医療設備は十分でなく、自分たちで探した避難先に移るまでに7日間かかったということです。
また、原発から25キロで避難指示の範囲の外にあった南相馬市の高齢者施設は、県に避難先の確保を要請しましたが、なかなか見つからず、12日間、元の場所にとどまったほか、南相馬市の別の施設は、周辺の店舗などが避難したため、食料や暖房用の燃料などが足りなくなり、受け入れを申し出てくれた300キロ離れた施設に避難するまでに9日間かかりました。
こうした施設のうち、国が避難区域としていた原発から10キロ以内の9つの施設は、避難計画を立てて避難先を確保しておくことが、県や自治体の原子力防災計画に記されていますが、いずれの施設も移転先を確保しておらず、県や自治体から具体的に避難計画を立てるよう求める指導もなかったということです。
これについて、周辺の自治体の1つの双葉町は「指導していたはずだが、確認できない」としていますが、ほかの自治体は「原発事故による大規模な避難については想定が甘く、指導が足りなかった」などと話しています。
また、これらの施設では、3月中に92人が亡くなり、施設の関係者は避難の際の混乱が影響した可能性があると指摘していて、原発事故の避難の在り方が改めて問われています。

福島県も避難計画作成を確認せず

福島県は、病院や高齢者施設で、県の防災計画で記している原発事故を想定した避難計画が作られていなかったことついて、「当然作られていると考えていた」としていますが、その後、実際に作ったかどうかは、自治体や施設に確認していないということです。
そのうえで、福島県は「避難計画の重要性は施設に周知してきたが、作成されていなかったとすれば、誠に遺憾だ。今後は防災体制の充実を図りながら、避難計画の作成を促したい」というコメントを出しました。
また、原発事故を想定した防災対策を所管する国の原子力安全・保安院は、福島県内の病院や高齢者施設で、あらかじめ避難先などを決めた避難計画が作られていなかったことについて、「施設の避難計画の策定状況は把握しておらず、今後、実態を把握して、実践的な防災体制の構築に努めていく」とコメントしています。
また、国が避難区域としていたところより広い範囲で施設の避難が必要となったことについては、「今回の事故で、避難の範囲が事前の想定を大幅に超えたことを受けて、原子力安全委員会で範囲の拡大について見直しを行っている。今回の事態を教訓として、国としても、病院などの施設が適切な避難ができるよう、防災指針を改定して、基準の見直しを進めていく」としています。