議事概要公表:閣僚次々「原発再稼働を」…昨年7月

2012年3月10日 1時26分

 政府は9日、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の対応に関し、原子力災害対策本部や緊急災害対策本部など7会議の議事概要などを順次公表した。政府は緊迫した状況で多忙だったことなどを理由に、震災関連15会議のうち10会議で議事録を作成していなかったが、未作成への批判を受け、会議出席者のメモや聞き取りをもとに概要を作成した。電力需給に関する検討会合の議事概要からは、菅直人首相(当時)の「脱原発依存」方針をよそに、複数の閣僚が原発再稼働を次々に訴えるさまが明らかになった。

 ◇菅・前首相の方針よそに

 関西電力管内の10%節電要請を決めた昨年7月20日の会合では、大畠章宏国土交通相(当時)が「原発が(定期検査入りで)次々と停止していく状況だ。政治の責任としてこれでよいのか」と指摘。「このままでは電力会社も弱っていく。つらいとは思うが、政府としての方針を示すべきだ」と、原発再稼働を暗に求めた。

 自見庄三郎金融担当相(同)は「どうすれば原発が再稼働できるのか。ビシビシと道筋をつけていただきたい。泥をかぶってでもやる話だ」と力説。九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を菅首相に止められた海江田万里経済産業相(同)は、自見氏の発言を受け「ありがたいお言葉」と述べた。菅氏はこの会合には出席していなかった。

 ◇燃料不足「見通し甘い」

 昨年3月13日の緊急災害対策本部第8回会合で、大畠氏は「(被災地への)油(の輸送)が最優先だ。『軽油は足りている』と経産省から聞いたが、見通しが甘いのではないか」と経産省の対応を批判。「米軍に輸送協力してもらってはどうか」と訴えた。

 15日の第10回会合で海江田氏は「十分な石油製品が確保できるよう、石油業界に対し強く働きかける」と述べ、石油生産量の確保や民間備蓄の放出による対応策を示したが、燃料不足は改善されなかった。16日の第11回会合では「燃料がどうして届かないのか」(東祥三副防災担当相=当時)、「備蓄をもっと使うべきだ」(玄葉光一郎国家戦略担当相=同)などの批判が噴出。片山善博総務相(同)は「単に呼びかけただけでは事態は解決しない」と指摘した。

 経産省は当初、石油生産量を重視していたが、業界への聞き取りの結果、燃料輸送の停滞が原因と判明。震災から1週間の17日の第12回会合で海江田氏は被災地にタンクローリーを追加投入する方針を報告、燃料不足は解消に向け動き出した。【中井正裕、野原大輔】

 ◇議事概要が公表された会議◇

 議事概要が公表された東日本大震災対応の会議は次の通り。

 原子力災害対策本部▽政府・東京電力統合対策室(旧・福島原子力発電所事故対策統合本部)▽緊急災害対策本部▽被災者生活支援チーム(旧・被災者生活支援特別対策本部)▽官邸緊急参集チーム▽電力需給に関する検討会合(旧・電力需給緊急対策本部)▽電力改革及び東京電力に関する閣僚会合

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