河村氏南京発言 日中の歴史認識共有は難しい(3月7日付・読売社説)名古屋市の河村たかし市長の南京事件を巡る発言が、日中関係に影を落とし始めている。 友好都市である南京市の共産党幹部が2月に表敬に訪れた際、河村氏は「いわゆる南京事件はなかったのではないか」と述べた。 反発した南京市は、名古屋市との交流を中止した。中国外務省も、「歴史を 今月9日から日本政府が南京で予定していた文化交流行事は延期が決まった。出演者の安全などを考慮しての判断とされるが、残念な事態である。 今年は日中国交正常化40周年にあたり、数多くの交流行事が計画されている。日中関係がこれ以上こじれ、外交や経済に悪影響が出ることがないよう、互いに冷静に対処していくことが必要だ。 南京事件は1937年12月、日本軍が当時の中国の首都南京を占領した際に起きた。日本軍による捕虜などの処刑や民間人への暴行が多発したが、その死亡者数を巡っては様々な説がある。 歴史問題を政治と切り離して学術的に議論するために、日中両国政府が2006年にスタートさせたのが日中歴史共同研究だった。しかし、中国側の政治的制約の中で議論は深まらなかった。 共同研究委員会が2年前に発表した報告書は、日中双方の学者の主張を併記した。 南京事件の犠牲者数について日本側は「20万人を上限として、4万人、2万人など様々な推計がなされている」とした。中国側は、政府公式見解の30万人虐殺説を繰り返すのみだった。 河村氏は自らの発言について、30万人とされるような組織的な大虐殺はなかったという趣旨だったと釈明した。そういう趣旨なら理解できるが、不用意な発言であったことは否めない。 河村氏は、自身が南京を訪れて南京事件を巡る討論会を開催したいとも述べた。日中間で率直に議論し、歴史問題という「ノドのトゲ」を抜くことが日中友好につながると主張している。 しかし、そのような議論が現在の中国で可能だろうか。言論の自由が保障されない中国で討論会を開いても、政府公式見解の30万人虐殺説を否定する議論に、中国側参加者が 日中間の歴史認識の共有は極めて難しい。そのことを十分踏まえた上で、建設的な両国関係を築いていく必要がある。 (2012年3月7日01時27分 読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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