2012.03/06(Tue)
血液型とパーソナリティ(4)
NATROMさんの「遺伝学からみた血液型性格判断」をざっと読みました。遺伝学や統計学に造詣の深そうな内科医で、ニセ科学批判なども積極的に行っているようです。その子ページの一つ「ABO式血液型と性格の関連を示す医学論文」に、次のくだりがあり興味を引きました。少し長くなりますが、引用します。
****引用はじめ****(赤字はNATROMさん;桃色は私)
DBH遺伝子の位置は9番染色体の約127.6 Mb、ABO式血液型の遺伝子座は約127.2Mbです。その距離は少なくとも300 kb(300000塩基対)以上です(NCBI, 2002/10/11)。ABO式血液型を決定する遺伝子と同じ場所にDBH遺伝子があるという主張は間違いです。同じ場所ではなく、300 kb以上離れた場所に存在します。北ヨーロッパ由来のアメリカ人を対象にした大規模なスタディでは、連鎖不平衡の及ぶ距離は平均60 kbだと示されていますし(Reich et al, 2001)、私の所属する研究室の日本人集団のデータでも300 kbを超えた連鎖不平衡はきわめて例外的です(一塩基多型でのデータ)。
連鎖不平衡の程度は集団やゲノムの場所によって異なりますが、300 kb以上も離れた位置にあるDBH遺伝子とABO式血液型の遺伝子が連鎖不平衡にある可能性は小さく、仮に連鎖不平衡があったとしてもきわめて弱いものだと考えられます。ABO FANで引用されている情報だけでは、「血液型と性格の関係があっても不思議ではない」とは言えません。DBH遺伝子で血液型と性格の関連を説明できる、すなわち300 kb以上も離れた位置にあるDBH遺伝子とABO式血液型の遺伝子が強い連鎖不平衡あるとすれば、私にとってはそっちのほうが不思議です。
****引用おわり****
私の知人、帯広畜産大学の後藤が、本川達雄「ゾウの時間、ネズミの時間」を批判して異説「ゾウの時間 ネズミの時間」の中で次のように書きました。
この言葉に付け加えることは一つもありませんが蛇足します。
上記NATROMさんの文章は多くの読者にとって専門的で分かりにくいと思いますが、ここでは、その細部(つまり、科学的な内容)にこだわる必要は少なくとも一般の読者にとっては必要ありません。私が紹介した理由は、その科学的な態度を問題にしたかったのです。おい、おめぇ態度悪いじゃねぇかよ、って言いがかりをつけているわけではありませんよ
。ただ、科学の芽をつんでしまうのはもったいないな、と。科学者は、少なくとも科学の場では、どのような態度をとろうと自由ですからね。興味をひかなければ無視されるだけだし、おかしすぎることを言っても無視されます。大胆で空想的な仮説だったら反応はまちまちかな?・・・といった具合にね。
さて、蛇足です。「きわめて例外的です」という部分ですが、私は、「きわめて例外的に存在します」と読みました。皆さんはどうでしょうか?だとすると、NATROMさんがこの論考を執筆する時点(2004/7/24最終改訂)では、今までの常識では信じられないほどの例外中の例外を手に入れていたわけです;羨ましい!。そうすると、論理的にはABO遺伝子とDBH遺伝子との関係も「例外中の例外」でありうるわけです(という科学的議論をするつもりはないのですが)。この例外の中にこそ、遺伝子間の物理的距離に比例すると考えられてきた(今でもそう?)遺伝子組換え頻度についての生物学常識を覆す(かもしれない)、何らかの生物学的メカニズムを予感させる何かが潜んでいるようで、わくわく、します。
****引用はじめ****(赤字はNATROMさん;桃色は私)
DBH遺伝子の位置は9番染色体の約127.6 Mb、ABO式血液型の遺伝子座は約127.2Mbです。その距離は少なくとも300 kb(300000塩基対)以上です(NCBI, 2002/10/11)。ABO式血液型を決定する遺伝子と同じ場所にDBH遺伝子があるという主張は間違いです。同じ場所ではなく、300 kb以上離れた場所に存在します。北ヨーロッパ由来のアメリカ人を対象にした大規模なスタディでは、連鎖不平衡の及ぶ距離は平均60 kbだと示されていますし(Reich et al, 2001)、私の所属する研究室の日本人集団のデータでも300 kbを超えた連鎖不平衡はきわめて例外的です(一塩基多型でのデータ)。
連鎖不平衡の程度は集団やゲノムの場所によって異なりますが、300 kb以上も離れた位置にあるDBH遺伝子とABO式血液型の遺伝子が連鎖不平衡にある可能性は小さく、仮に連鎖不平衡があったとしてもきわめて弱いものだと考えられます。ABO FANで引用されている情報だけでは、「血液型と性格の関係があっても不思議ではない」とは言えません。DBH遺伝子で血液型と性格の関連を説明できる、すなわち300 kb以上も離れた位置にあるDBH遺伝子とABO式血液型の遺伝子が強い連鎖不平衡あるとすれば、私にとってはそっちのほうが不思議です。
****引用おわり****
私の知人、帯広畜産大学の後藤が、本川達雄「ゾウの時間、ネズミの時間」を批判して異説「ゾウの時間 ネズミの時間」の中で次のように書きました。
生物学に例外はつきものである、とは昔よく言われたことです。しかし、法則や原理と呼ばれるものに例外があるのなら、それが法則や原理としては誤りであることは自明のことでしょう。学問の進歩とは、こうした例外的事実を包含的に説明する法則を発見することによって成し遂げられるといっても良いのです。だから、例外の存在に科学者は胸を躍らせ、未知の理論の発見にいそしむのです。
この言葉に付け加えることは一つもありませんが蛇足します。
上記NATROMさんの文章は多くの読者にとって専門的で分かりにくいと思いますが、ここでは、その細部(つまり、科学的な内容)にこだわる必要は少なくとも一般の読者にとっては必要ありません。私が紹介した理由は、その科学的な態度を問題にしたかったのです。おい、おめぇ態度悪いじゃねぇかよ、って言いがかりをつけているわけではありませんよ
さて、蛇足です。「きわめて例外的です」という部分ですが、私は、「きわめて例外的に存在します」と読みました。皆さんはどうでしょうか?だとすると、NATROMさんがこの論考を執筆する時点(2004/7/24最終改訂)では、今までの常識では信じられないほどの例外中の例外を手に入れていたわけです;羨ましい!。そうすると、論理的にはABO遺伝子とDBH遺伝子との関係も「例外中の例外」でありうるわけです(という科学的議論をするつもりはないのですが)。この例外の中にこそ、遺伝子間の物理的距離に比例すると考えられてきた(今でもそう?)遺伝子組換え頻度についての生物学常識を覆す(かもしれない)、何らかの生物学的メカニズムを予感させる何かが潜んでいるようで、わくわく、します。
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