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プロフィール
じゃが・バタ子

2012年03月08日

プチ一人旅 5

再び駅まで帰ってきた私。
構内には観光案内コーナーが併設されています。

そこで、先ほどの事を案内の女性に話すと、

「あぁ、〇ネットレンタカーね。あそこは表側に移転したんですよ、この三月からちょうどね。」

なるほど、それで誰もいなかったんだ。
(土〇さん、ピンポンしてごめんなさいw)

「ほら、ここからストリップの看板が見えるでしょ、あの裏の方に行ったらすぐですよ」

このまちはストリップを中心に動いているのか?

「だけど、東尋坊ならバスのほうが便利ですよ。ここから出てますから。」

ストリップには近づきにくいから、バスで行こうかな?

そう思い、お礼を言って案内書を出た私。

そこでちょうど携帯に着信。

友達の〇橋ちゃんからだ。

「ねぇ、バタ子ちゃん。今日の誕生会、ケーキとかどうする?」



やばい!

完全に忘れてた!!!

そうです、今日は親友の誕生会の日だったんです!!!

東尋坊に行ってる場合じゃない!

むしろ、これをブッチしたら、東尋坊行きです。

東尋坊に行かなくても済むように、東尋坊行きは後日にすることにしよう!

何がなんだか解りませんが、つまりそのぐらい動転してしまいました(笑)


ちょうど、一時間に2本の福井行きは後5分で到着です。
〇橋ちゃんには私が駅でケーキ用意すると伝え、改札をくぐりました。

いつもバタバタ、バタ子ちゃんの小さな冒険は、これにて終了。


次回、「激突!東尋坊大決戦!!」お楽しみに!!

※ウソです!
  

Posted by じゃが・バタ子 at 17:33Comments(0)TrackBack(0)バタ子旅行記 越前鉄道編

2012年03月08日

プチ一人旅 4

ホームを跨ぐ駅の歩道橋をこえると、そこは本当に何もないところでした。

少し歩くと、線路沿いに更地が続きます。
地面はロープで区切られ、所々に「分譲中」の幟。
駅前の一等地?
他にいくらでも広いところがあるのに、わざわざ線路の隣・・・。

端っこの区画にはエンジンをかけたままの軽自動車と、タバコをすって時間をもてあまし気味の
不動産営業マンらしき人物。

目が合いますが、女子大生に興味があっても、客としてはまるで関係ないといった態度でジロジロ見てるだけでした。

初めて動いてる人を見かけたのにぃ・・・。

と、そこへ地元の小学生っぽい男の子が二人。

「こんにちはー!」

元気いっぱい、とても明るい声で挨拶してくれました。
私も思わず「こんにちわー!」

さっきのおじさんとはまるで対照的な感じ。

あの子達も大人になったら擦れちゃうのかな?
そのまま素直に育って欲しいな。

ふと、ボランティアで出合った三陸の子供達がダブって、心がほわっとしました。


表は観光、裏は生活。
完全に分かれてるのかな?
こっちは温泉湧かないのかな?

そう思って歩いていると、レンタカー屋さんの看板が見えてきました。
一応、裏側にも観光の部分があるんだ・・・。

そうだ!

車借りて東尋坊あたりまでいってみようかな?

またも思いつき(笑)

そう思い、近づいてみると、なんかちょっと変。
看板はあるけど、車が無い。
正確には、大きなガレージがあるんだけど、シャッターが閉まっている。
そして、ここもまた人気が無い・・・(笑)

ガレージ付近をぐるっと一周してみると、隣の民家の表札にも
同じレンタカーの看板がかかっています。

ここが事務所・・・?
普通に民家なんですけど・・・。

しかし、ここは一番、車を借りるためにピンポンを押してみます。
普通に4人家族?の名前が書かれた表札の隣のチャイム・・・。
勇気が要るなぁ~・・・。

「ピ~ンポ~ン♪」

・・・


・・・


出ない・・・。

お休み?

肩透かしです。

なんか、このままではピンポンダッシュのイタズラしてるみたいな罪悪感・・・。

しょうがない、諦めるか・・・。


つづく  

Posted by じゃが・バタ子 at 16:11Comments(0)TrackBack(0)バタ子旅行記 越前鉄道編

2012年03月07日

プチ一人旅 3

真昼の温泉街を一人ぶらつく私。
ほんと、誰もいません。
ゴーストタウン?

だけど、そんな空間が今の私には心地いい。

ハンドバック一つで飛び出してきたので、お風呂に入るのはちょっと・・・。

とおもってたら、


あ り ま し た !


無料の足湯コーナー♪


早速足を浸けて見ます。

う~ん、サイコー!
ちょっとヌルめだけど、あまり熱いと足だけでも上せちゃうんですよね。

飲用と書かれたコーナーもあって、湧き出すお湯を備え付けのひしゃくですくって
恐る恐る口に含んで・・・。

ちょっとショッパイ味でした。
これならさぞ温泉卵がおいしいだろうな・・・と見回すと、
なんと「温泉卵コーナー」も併設!

食いしん坊な私は早速行って見ましたが・・・。

残念、こちらは今やってないみたい。

気を取り直して再出発です。

一旦駅に引き返して辺りを見渡す私。

きれいなロータリー、温泉宿、お土産屋・・・。

確かにこちらが表側の様子。

そこでふと・・・。

「裏はどうなってるんだろう?」

見た目はきれいだけど、生活感がなく人の息遣いもまるで感じられない「表」に対して、
急に「裏」を覗いてみたくなりました。

足湯パワーで元気も回復!

思いつきだけが私を歩かせます(笑)


つづく  

Posted by じゃが・バタ子 at 20:24Comments(0)TrackBack(0)バタ子旅行記 越前鉄道編

2012年03月07日

プチ一人旅 2

さほどスピードが出ているわけでもないのに、電車はあっという間にビル街を抜け、郊外の住宅地を
通り、程なく車窓はどこまでも続く田園風景に変わりました。

ここで車内掲示の路線図を確認。
どこで降りようかなぁ・・・。

そこへ、ちょうど検札に来た乗務員のおねえさん。
「なにかお探しですか?」
と優しく声をかけてくださいました。

じつはカクカクしかじかで降りる駅を検討中なんですと伝えると、

「それでしたら、あわら湯のまちで降りられてはいかがですか?」

とのこと。
寂れた温泉街、いいかもしれません。
行った事なかったしね。

そして程なく電車はあわら湯のまちへ到着。
それまでの駅と比べると、比較的立派な駅舎です。

改札を通り抜けると、けっこう立派なロータリー。
駅前はキレイに整備されています。

しかし人がいないなぁ・・・。

観光地だというのに、まるで人気が無い。

見渡せば、温泉宿と商店、そして・・・
「ストリップ」と書かれた看板(笑)
わたし、ストリップ劇場とか初めてみました。
(中までは見てないヨ!)

後日このことを友人に話したとき、
「寂れた温泉街と聞いたとき、オトナは言葉通りのイメージとは別に、
もう一つ淫靡な妄想を膨らませるものだよ」
って言われました。

なんとなく解ったような解らないような私は、オトナの階段を昇ってる最中なのかな?


真昼間からオトナの洗礼を受けた私は、とにかくその看板を見ないように意識しながら
宿屋街へと歩を進めました。


つづく  

Posted by じゃが・バタ子 at 18:59Comments(0)TrackBack(0)バタ子旅行記 越前鉄道編

2012年03月06日

プチ一人旅 1

今日は、ちゃんと日記的なものを書いてみます。

バタ子は先日旅行に行きました。
といっても近場なんですが・・・。

特筆すべきはどこへ、ではなく誰と?ってところ。

実は、今回はなんと一人旅なんです!

考えてみたら、初めてかも!

福島でのボランティアで、人間の、特に田舎の人たちの優しさに触れ、
にぎやかな街よりも静かな場所に興味が出てきた私。
身近な場所にそういうのがないかな?と探しに出かけたわけなんです。

というわけで、特に行き先も決めず福井駅にやってきた私。

JRの路線図をみて、適当に行き先を・・・

と・・・待てよ・・・。
福井駅には、えちぜん鉄道が乗り入れてるじゃないか!

うん、こっちの方が断然イイ!

そういえば、花火大会で一度乗っただけだ。

というわけで、買っちゃいました!
「一日フリーきっぷ:¥800」

一日乗り放題というお得な切符です。

何度でも乗りなおせるので、とりあえず来た電車に乗っちゃいました。
気分が向いたら降りてみようって魂胆。

乗った電車は三国港行き。
花火の時に乗った方だな。
勝山行きは乗ったことが無かったから、そっちに当たればよかったかな?

何はともあれ電車が動き始めました。
小さな冒険の始まりです。



つづく  

Posted by じゃが・バタ子 at 20:07Comments(0)TrackBack(0)バタ子旅行記 越前鉄道編

2012年03月05日

おひさしぶりです

暖かい日が続き、福井にも春の雰囲気が漂ってきました。


震災の事もあり、すっかりブログをはじめた頃とは生活が変わってしまいましたが、
最近ようやくもとの感じに戻ってきました。

バタバタしてたので、このブログのこともすっかり・・・
なんて、意識的に忘れたことにしてたりkao08

書き物の続きも、書きたい気持ちや、書かなきゃって焦りがあって・・・。
ドタバタのせいにして、ほったらかしちゃいましたpig

まあ、考えてるストーリーがちょっと暗いので、今はまだ悲劇のストーリを書く気になれないかな。


(ネタバレ注意!!:淡く甘酸っぱい方向に走り出そうとしていた青春真っ只中の彼が、父親の奇行が原因で
学校中の笑いものになり、それでも片思いの先輩や幼馴染の友達との友情(恋?)の力で乗り越え用とした主人公。
うだつの上がらない父親が輝きを取り戻せる唯一の時間。
それを奪うぐらいなら、自分ひとり、どうにか耐え忍んで・・・。
しかし、弟がもっと陰湿で苛烈ないじめに遭って同じく一人で耐えていた事に気づく・・・


学校裏サイトに代表される、子供達を取り巻くIT社会の問題と、それに対する世代間の認識のギャップ。
高度成長期を脱した現代を生きる中年男性の悲哀。親父のプライド。
多感な時期の親子の距離感。
そんなテーマを、青春の時の中で揺れながらも強く育っていく主人公の姿を通して書いてみたいなと。
あの日からもうすぐ一年。続きが書けるような気持ちになれる様、私も頑張ります!


  

Posted by じゃが・バタ子 at 18:52Comments(0)TrackBack(0)

2011年05月31日

保守

バタ子は、今学校を休学して、震災の被害に遭った母方の実家に戻り、ボランティア活動をしています。

ブログどころじゃないんだけど、書かないと消えちゃうみたいなので、とりあえず更新・・と。

実家ではインターネットできないので、次は消えちゃうかもです。

そのときは残念だけどサヨナラです。


気仙沼に平和が戻り、バタ子のブログが消えてなかったら、また頑張って続きを書くぞ!


※ボランティアスタッフのKさん、ノーパソ貸してくれてありがとう^^
  

Posted by じゃが・バタ子 at 20:15Comments(0)TrackBack(0)

2010年12月06日

第七章 ~運命~


「 だ~れ~か~! た~す~け~て~!!!!! 」


渾身の咆哮。
中身は情けないが、腹の底から叫んだ竜に、舐めてかかっていたヤンキーは若干動揺したようだ。
パンチが泳ぐ。
今度はかわせそうだ。
体をかわし、半歩距離をとる。
空を切る拳。


「おまえら!なにやってんだ!!」


道路向かいの家の窓から、肌着姿のじーさんが叫んだ。
背後からも誰かが駆けてくる気配がする。

奥義が発動した瞬間である。

竜は勝利を確信した。


「ふざけたガキだ!てメ、覚えてろ?」

「おい、シゲちゃん、いこーぜ!」


捨て台詞を残し、ヤンキーたちは走り去っていった。

竜は、呆然とへたり込んだ。
開放された中学生が駆け寄ってくる。
その顔は今にも泣き出さんばかりにしわくちゃだ。
逃げる事しか考えなかった自分が恥ずかしくなった。
それでもこの中学生は竜の胸に飛び込んでくるのだ。

「怪我は無いかい?」

尻を地面についたまま手を差し伸べた竜の脇を、中学生は走り抜けていく。


「おねーちゃーん!」


・・・へ?
後ろを振り返る。

「ナオキ、大丈夫だった?」

ナオキと呼ばれた少年は、背後から駆け寄って来ていた女子高生に抱きついていた。

「ありがとうございます。弟が・・・」

偶然居合わせた姉・・・。
顔を上げ、目が合う。


竜は運命だと思った。


「あ・・・ あの・・・  こ、この前は、どうも・・但野さん。」



少女は少し困惑し、目の前の少年について一生懸命思い出そうとしていた。

  

Posted by じゃが・バタ子 at 18:15Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年12月02日

第六章 ~究極奥義~

図書館から追い出された竜の帰路は、いつになく足取りの重いものだった。

憧れは憧れで割り切ったほうがいいのかも知れない。
少し頭を冷やそう。

そんな事をぼんやり考えながら歩いていた。

そう、ぼんやり歩いていたのが悪かったのだ。
何故この距離まで気が付かなかったのだろう?

今、竜の4メートルほど前方に三人の男が立っている。

背中を向けている少年は、おそらく竜の母校の隣の学区の中学生だ。
その前に、彼と向かい合うように立っている高校生、それが問題だった。

だらしなく崩して着ている特長ある学ラン、派手なシャツ、アメリカのアイスクリームのような髪・・・。
たとえこいつ等が悪名高き××工業高校の生徒だと気付かなくても、お人柄は容易に推察できるヒントが揃っている。

その彼等がまだあどけなさの残る中学生に対し、何か一方的な交渉をしているのはすぐにわかった。

目を合わせちゃダメだと思ったが、既にそれで凌げる様な状況ではなかった。
右側をガードレールで道路と隔てられた歩道の幅は約2メートル。
迂回しようにも曲がり角はそれぞれ家一軒先と二軒後ろだ。


竜は覚悟を決めた。


『Uターンしよう』

きびすを返そうとしたその時だった。


「ンだ、おめぇ?ンか文句あンのか?」


詰んだ・・・。

大体、この距離まで気が付かなかった時点で手遅れだったのだ。
言い訳を色々考えたが、言葉が口から出てこない。
見ていない、僕は何も見ちゃいない・・・。
竜は視線を逸らし続けるが、彼等の視線(ガン)は容赦なく竜の眉間付近に突き刺さる。
背の高いほうの高校生が、大きく肩を揺さぶりながらわざとらしい蟹股でにじり寄ってくる。


「俺たちさぁ、ちょーっぴりお小遣いかしてほしいんだよねー? わかるだろう?」

「お兄ちゃんさぁ、こんな中坊より、もうちょっと持ってるんじゃネェの?ひへへへへ」


やめろ・・・。
やめてくれ・・・。

竜は、お尻のポケットの財布を意識した。
今日の昼代300円、引くことのアンパン80円、焼ソバパン120円、牛乳80円。
昨日からの繰越630円を足したなけなしをはたいたところで、アイスクリームを逆上させるのは目に見えていた。

中学生は、今にも泣き出しそうな目でコッチを見ている。
泣きたいのはコッチも一緒だが、あんな目で見られると泣く事すら許されない雰囲気だ。
つまらない下心で図書館に長居した事を悔やんだ。

やるしかない・・・。
一日に二度も命がけの覚悟をしたのは、もちろん今日が初めてだった。

腕に覚えはないが、武道の嗜みはある。
相手をひるませれば、あるいは逃げるチャンスもあるかもしれない。
でかいほうのヤンキーは、既に目の前まで迫って竜を見下ろしながらながらニヤついている。

半歩下がり両手を突き出し、右半身に構える。
腰が引けているのが自分でもわかるのが情けなかった。


「あァん?やンのか?コラ!」


ニヤケ面が見る見る恐ろしい形相に変わっていく。

刹那、大振りの右パンチが飛んできた。

「ひぇー!」

素人の竜から見てもいいパンチとはいえなかったが、喧嘩慣れしていない悲しさ、思わず体を捻って固まってしまった。
クリーンヒットは免れたようだが、殴られたらやっぱり痛い。
唇に鉄の味が広がる。
完全に壁を背負わされてしまった。
絶体絶命・・・。


しかし、この一発で完全に竜は目が覚めた。
ブロック塀を背中に感じながらも、再度構え直す。
道場の師範に教わった護身術のレッスンが、走馬灯のように頭を駆け巡る。


「ヤマサキィ、こいつやっちゃってもいいかなぁ?ひへへへへ!」


さっきの竜の醜態を見て、デカいヤンキーは完全に油断しているようだ。
肩を回しながら、指を鳴らして余裕のポーズで威嚇してくる。

竜はキッと相手をにらめつけた。
初めて自分から目を合わせた。


「おメ、舐めてんのか?」


再び精一杯の般若顔で睨み返してくるヤンキー。

竜は腰を深く落とし、大きく息を吸い込んだ。
丹田に力が溜まっていくのを感じる。

今にも殴りかからんとするヤンキー。

今だ!今しかない!
放て、究極の護身術!!

竜は生まれて初めて腹の底から本気で叫んだ。



「 だ~れ~か~! た~す~け~て~!!!!! 」
  

Posted by じゃが・バタ子 at 02:41Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年12月01日

第五章 ~視線~

図書室に入った竜は読み掛けの本を本棚から引き出し、いつもの窓際に陣取った。
窓の外を覗いたが、講堂周辺に器楽部の姿はない。
屋内で全体練習をしているのだろう。
そういう日もある。器楽部の練習スケジュールなど知る由もなく、空振りも初めてではない。

「ふぅ。」

竜は軽くため息をつき、椅子に深く掛け直して本のページを開いた。
2ページほど読み進め、花という活字のところで手が止まった。
「高嶺の花」
雄介の言葉が蘇る。

(確かにそうだよなぁ・・・。)

心につぶやく。
ページは捲るものの、焦点は活字を追っていない。

考えるほど、あんなかわいい女子はそうそういない気がしてくる。
一つ先輩だし、上級生が目をつけていない筈がない。
こんな気持ちになったのは初めてだったし、ライバルの事なんてこれっぽっちも考えていなかった。

(ライバル・・・か。)

雄介の話では、少なくともサッカー部のアイドルのようだ。
他の部活とて例外ではあるまい。
サッカー部のレギュラーなんて、モテモテだと聞いた。
何のとりえもない自分が、ライバルと呼ぶのもおこがましい気がしてくる。

大体、自分はどうしたいんだ?
どうしていいのかもサッパリだし、何かする度胸なんて・・・。
ここでただ眺めてるだけで十分だったんじゃないのか?
そうだ、あの日ここで言葉を交わすまでは・・・。

(あれでのぼせ上がっちゃったんだな。)

竜は勢いでサックスまで始めようとした事を自嘲した。
そして、いまここで本を読んでいる振りをしている自分の本当の気持ちに気が付き、なんだか恥ずかしい気持ちになった。
一度ブラバンが合同練習に入ったら、大抵最後まで出てこないのは竜も気付いていた。
しかし彼女は近いうちに必ず借りた本を返しに来るはずなのだ。

(来たらどうするつもりなんだよ?)

自虐的に自問したが、答えは出ないままだった。
しかしそれでも席を立つ気にはならなかった。

結局この日は彼女がやって来ることはなかった。
閉館を促すベルで席を立った竜は、それでも入り口のほうを気にせずにはいられなかった。
人もまばらな館内で視線を痛く感じた。
きっと自分の後ろめたさのせいだ、と、そのときは思っていた。


 

  

Posted by じゃが・バタ子 at 21:19Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年11月27日

第四章 ~オタク~

竜は今日も学校、というより図書館へといつもの道を歩いていた。

結局、竜の希望は適わなかった。
サックスがあんなに高いなんて思っていなかった。
そりゃ、安くは無いとは思っていたが・・・。

実際、竜の予想の数倍、即ち親父の予算の10倍以上の金額だった。
現実的に諦めざるを得ない。
親父はジーパンを買ってやろうと言ってきたが、竜は断固拒否した。
このカードはまだ残しておこう。

「浮かない顔だな。どうした?」

不意に背中を叩かれる。
雄介だ。

「昼練か?」

「おう。」

中学の時から一緒の雄介はサッカー部だ。
野球部などとグラウンドを共有しているため、休み中は朝練、早練、昼練、遅練などが有るらしい。
基本的には毎日練習がある。

「毎日大変だな。顔も真っ黒だ。」

「へへ!黒いほうがモテるんだぜ!しかし、お前もちょくちょく学校で見かけるな。帰宅部だろ?」

「ほっとけよ。」

「何しに通ってるんだ?まさか、英語の補修クラスに引っかかったとか?」

「ちげーよ馬鹿。俺は期末82点だ!」

「おー、やるじゃん。俺は63点でギリギリだ。ハハハ!」

「お前は補修を受けろ。休み明け付いて行けないぞ?」

「いーじゃん。ギリギリでもセーフはセーフ! で、結局何しに通ってるんだよ、教えろよー。」

「べつに・・・ ただ、図書館で暇つぶしてるだけだよ・・・。」

「うわー、暗い青春だな。あそこはオタクのスクツらしいじゃんか?ほら、隣のクラスの中田。アイツも毎日通ってるらしいぜ。」


中田・・・。確か中田啓太。
地味な奴だが、逆に地味すぎて目立つタイプだ。
確かに図書館にいつもいる気がする。
目が合うと、変な薄ら笑みを浮かべてすぐ逸らす、ちょっと気持ち悪い奴だ。
ああ、あんなのと一緒に見られてるのか?
それはゴメンだ。


「あのなぁ、それは巣窟と書いて『ソウクツ』だ。おまえ国語の期末もヤバかったろ?少しは勉強しろ。それから、図書館はあんなネクラだけのものじゃないぞ。」

「おいおい、国語もギリギリセーフだよん。それにオタクのスクツってのは俺が言ってる事じゃない。みんな言ってるぜ?」

「俺はオタクじゃないし、それに図書館には但野先輩みたいな人だって・・・。」

「但野先輩?!二年のか?それがマジなら、俺も通っちゃおうかな?しかしお前があの人知ってるなんて、なかなかやるなぁ。」


雄介がニヤつきながらつついてくる。
少し動揺してしまった。


「雄介も知ってるのか?但野先輩。」

「知ってるも何も、グラウンドからブラバンの外練丸見えだし、大体先輩達がいつも噂してるからな。」

「き・・キレイな人だよな?楽器もなんかイイし・・・。」

「お?おまえ・・・。 止めとけ止めとけ。ありゃ高嶺の花だぞ。俺たち1年が彼女の練習風景によそ見したら、先輩からぶん殴られるくらいだからな。ハハ。」

「ち・・・違うわい!」

「そうか?ま、色々がんばれや!じゃな!」


校門まで残り50メートル。
雄介はダッシュで部室へと飛んでいってしまった。


「高嶺の花・・・か。」


そりゃそうだよな・・・。
呟いてみたが、それでも竜は図書館に向かうのであった。


 
  

Posted by じゃが・バタ子 at 16:23Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年11月21日

第三章 ~サックス~

「親父、サックス。」

「ゴッ・・ブゴッ! ・・・な、なんだ?竜。」

日当たりの良いとはいえない朝食のテーブル。
粥状の白飯を撒き散らし、親父がむせる。

「サックスだよ、サ ッ ク ス 。」

「あ、あぁ、楽器のあれか・・・。 ビックリさせんな、朝っぱらから唐突に。」

親父は、右手でコップ、左手で台拭きを引き寄せようとしてマゴついている。
元々同時に二つのことを出来るようなタイプではないのだ。

弟の修はオカズのシシャモを半分残したまま席を立ってしまった。
狭いテーブルだ。ナイーブな年頃でなくても「お粥」塗れの朝食では箸が進まない。
竜は構わず切り出した。

「約束だろ?一学期の期末、4つ以上80点取ったら好きなもん買ってやるって。」

「そんな事言ったけなぁ・・・。」

「親父、誤魔化してんじゃねーよ!」


つまらない不祥事で官職を棒に振った、うだつの上がらない親父。
懐具合が厳しいのは解ってるつもりだったが、竜はあの娘に近づく方法を他に思いつかなかった。


「わ、わかった、わかったから・・・。よりによって楽器かよ・・・。どーしたんだよ?急に。」

「べ・・・別にどうでもいいだろ! それより男の約束、守るのか守らないのか?」


諭旨免職された親父は自営で便利屋を始め、仕事だ付き合いだで生活が不規則だ。
かーちゃんが出て行って以来、竜は炊事・洗濯・掃除など家事の大半を負担している。
強く出れば勝算はあると踏んでいた。


「ま、まぁ考えといてやる。しかし、サックスったって色々有るぞ?」

「そ・・それは確か・・・ なんってったかな・・? ソー・・ ソー・・ ソープラ何とか。」


二度目のお粥シャワーで朝食はお開きとなった。
   

Posted by じゃが・バタ子 at 15:59Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年11月11日

第二章 ~図書館~

「あっ・・・。その本・・・。」
どうやら、いま自分が読んでいたこの本が読みたいらしい。
背が低い人用の踏み台も用意されているが、けっこうな重さがあり取に行くのも面倒なのだ。
「あぁ、この本?」
再び本を引き出し振り返った竜は、驚いて固まってしまった。

(き・・金のクラリネット!)

そこに立っていたのは、先ほどまで講堂で練習をしていた憧れの子だった。
「ありがとう。読みたかったの。」

変な汗がじわっと出てきた。
手にしてる表紙が染みてしまわないだろうか?
どうすればいい?何て話しかける?

「あ、こ、この本、面白いですよね。」

彼女は笑って答える。

「私、これから読むの。」

何か話さないと・・・。

「あ、ほ、ホント面白いですよ、これ。特に川に捨てたトカゲが最後怨霊となって・・・」

「ちょっとぉ、ネタばらししないでくれる?」

「あ・・・、ご、ごめんなさぃ・・・。」

彼女はちょっとムっとして見せたが、すぐに笑って

「いいわ、コレ、あなたのお墨付きってことね?」

そういって、竜の持っている本に手を掛ける。
胸には、「2-C 但野」とかかれたプラスチック製のネームプレート。
ひとつ上の先輩だ。

思ってもいなかった初めての会話。
何か話さなければ、もうこんな事は二度とないかも知れない。
話題・・・、何か話題は無いか・・・。

彼女が本を引き、竜の手が緩む。
表紙が手のひらを滑っていく感覚。
彼女が行ってしまう・・・。

「あ、あの・・・。」

「ん?なに?」

「あ、いや・・・、上手ですね、クラリネット。」

「あぁ、コレ?」

これはね、と言いながら、彼女は左手に持っていた茶色い皮のケースを少し引き上げて見せた。

「これはね、クラリネットじゃなくて、サックス。」

「さ、さっくす・・・?」

なんだかよく解らないが、顔が赤くなっていくのを感じた。
しくじったのか?
どうすればいい?

「そう、これはソプラノ・サックス。普通の人には馴染みが薄い楽器かな?」

「そ、そうなんですか。スイマセン、よく知らなくって。」

「う~ん、でも、いいセン行ってるかも。クラリネットとは従兄弟みたいな楽器ね。
 金管楽器と間違える人のほうが多いから。」

なんか、フォローしてくれてる。
どうしていいやらサッパリ解らない竜だったが、とりあえずこの流れが心地よいものに感じられてきた。
少しでも長く話していたかった。

「き、キンカン楽器ですか?」

「そう、トランペット知ってるでしょ?ラッパのことね。あーゆーの。
 材質も色も一緒だから、よく間違われるの。
 ホントは木管楽器なのにね。全然「木」のイメージ無いから・・・」

「すいません、そういうの全然知らなかった・・。」

「いいのよ。普通知らないわ。でも、褒めてくれてありがと。また練習に気合が入るわ。
 定期演奏会とか聞きに来てくれてるの?」

演奏会?なんじゃそりゃ。
自分はただ偶然練習風景を見かけて、それから・・・

「は、はい、そうです。演奏会みて、いいなーって。」

「ほんと?うれしいなぁ。ありがと!今度休み明けに定演があるから、また見に来てね!」

じゃ、といって彼女は振り返る。
何か、もう一言、もう一言だけでも・・・



『ぼくに、サックスを教えてください!』


心の中で叫んだが、彼女はもう図書室を出て行ってしまっていた。
  

Posted by じゃが・バタ子 at 17:31Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年11月08日

第一章 ~夏休み~

夏休みも中盤を過ぎたある日、竜は学校にいた。
別に補習で呼び出されたわけじゃない。
それに竜は帰宅部だった。
じつは、夏休みに入って竜はちょくちょくこの図書室に通っているのだ。
別に竜は読書が嫌いではなかったが、今はそんな事はどうでも良かった。
読みかけの中篇小説を選んで手に取り、彼は窓際の席に腰を下ろした。
校舎の二階にある図書室から見える講堂周辺では、ブラスバンド部の部員達がそれぞれのパートに分かれて練習をしていた
これが竜のお目当てだった。。
竜は小説などそっちのけで、窓越しに「金色のクラリネット」を探していた。

(いた・・・。)

おそらくこれが初恋なのだろう。
竜はぼんやりとそう考えていた。
中学の時にだってかわいいと思う女子はいたし、気になる子もいた。
でも、それだけだった。
もっと知りたい、とか、話がしたい、とかそんな思いがエスカレートする事は無いまま卒業を迎えた。
しかし、今回は何かが違う気がしていた。
考えずにいることが出来ないのだ。
だからと言って彼の性格で何か積極的に行動できるわけではなかったが、
ついつい彼女のことを思うと、こうやって図書室に足を運んでしまうのだった。

金色のスリムな金属楽器が、透き通るように真っ白な彼女のブラウスの上で
右に左にと揺れるたび、何か女性が囁くような優しい音色を響かせていた。
楽器のことはよくわからないが、竜にとってそれはとても心地の良いものだった。

気が付くと、時計は三時半を回っていた。
ブラスバンド部は片づけをはじめている。
竜は栞のあるページを開き、視線を落とした。
図書館の閉館まではあと一時間ある。
さっきまでの余韻に浸りながら読書するのが、いつしか彼の楽しみとなっていたのだ。

15分ほど読み進め、竜は最後のページを閉じて立ち上がった。
閉館まで、まだ時間がある。もう一冊読もう。
そう思い、今読み終えた本があった棚へと向かった。
その本は本棚の最上段に置かれていたため、身長171センチの竜は軽く踵を浮かせて
本を持っている右手を伸ばした。

背後に「あっ・・・。」という女子の声を聞いたのは、その時だった。  

Posted by じゃが・バタ子 at 23:44Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年11月06日

プロローグ ~夕暮れ~

【烏の哭く街】



「どうしてこんな事になってしまったんだろう・・・」

少年はそう呟くと、学校を出てからここまでずっと地面に落としていた視線を空に向けた。
秋の夕暮れは足早に夜へと向かっていた。
電柱から伸びる街灯には一羽のカラスが止まっている。
顔を合わせているわけではないのに、何故か視線を感じる。

(またコイツか・・・)

今日はまっすぐ帰宅する気になれない。
右に曲がるいつもの丁字路を、今日は左へ進んだ。
背中にカラスの羽音を聞いた気がした。



富樫 竜
高校生。
これまでクラスでは普通に過ごしてきたつもりだった。
入学して最初のクラス。
同じ中学の出身が5人いた。
そのうちの一人、加藤雄介とは中学の時から同じクラスで互いに気心が知れていたので、ほんの少し人見知りなところがある竜は安堵した。
竜と比べ遥かに活発で社交的な、いわゆるお調子者の雄介と一緒にいたおかげで、
他のクラスメイトとも割とスムーズに打ち解けることが出来た。

成績は中の中。
小学校の頃から柔道で鍛えてきたので体育の授業ではそこそこ活躍したが、特に目立つほうでも地味なほうでも無かったつもりだ。
高校生活は平穏そのものだった。
そう、あの夏休みの、あの出来事までは・・・

(続く)  

Posted by じゃが・バタ子 at 15:00Comments(0)TrackBack(0)烏の哭く街

2010年11月06日

はじめまして♪

皆さんはじめまして♪
福井の学生バタ子です。
趣味の書き物とか、日々の日記なんかしたためて行こうかなーと思ってます。
書き物のほうは、下手の横好きなのでほっといてやってくださいface_warai
では、蟹漁解禁にあわせて、元気良くイッテミヨー('-^*)/  

Posted by じゃが・バタ子 at 13:42Comments(2)TrackBack(0)