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【放送芸能】

「ラジオ人」 この1年の思い

 東日本大震災ではラジオの力が見直された。きめ細かい情報を伝えたり、癒やしの音楽や語りを届けるなどしてリスナーに寄り添ってきた。そして、三・一一から一年。節目の日にラジオはさまざまな特番を組むが、その番組に登場する「ラジオ人」にこの一年の思いを聞いた。 (山岸利行)

◆唐橋 ユミ 「収束」の流れまだ

 「国会議事堂前に地下鉄が到着して扉が開いた時、体験したことのない揺れでした」

 文化放送「吉田照美ソコダイジナトコ」でアシスタントを務める唐橋ユミはこう振り返る。福島県出身で、かつて勤務していたテレビユー福島も被災した。震災後、何度か故郷に帰り、先月も取材に訪れたばかり。

 「景色は震災前とそんなに変わらないところでも、目に見えないところで変化していると思う。どこまで安全か危険かわからない状態で、ホットスポットも少なくない。昨年暮れに収束宣言が出ましたが、そういう流れにはなっていません」

 震災後、リスナーから「いつもの声を聴けてよかった」という反応が多く寄せられ、日々つながっている感覚がうれしいとも。

 福島に帰って気付いたことがあるという。「心のケア」「寄り添う」という言葉をうれしく思わない人もいるということ。深い人間関係でもないのに「心のケアを」「寄り添いを」と押しつけられることに戸惑いを持つ人もいるようだ。

 中間貯蔵施設の問題にしても現地にはいろいろな声があって一つにまとめられないと言いつつ、「福島の人が何を考えているのか、そして、正確な情報をぶれずに伝えていきたい」。

◆上柳 昌彦 信頼築く大切さ

 「マイクの前に座って三十年以上になりますが、あれほどの揺れは初めての経験。声が上ずりそうになり、それを抑えようとしたら胃液が出て胃痛に。自分で何をしゃべっていたか記憶にないんです」

 ニッポン放送の上柳昌彦アナウンサーは自身の番組「ごごばん!」の真っ最中だった。倒れてくる家具などから身を守ってほしい、この揺れを乗り切ってほしいという一心でマイクに向かった。

 「ぐちゃぐちゃした一年でした。『防災のためにラジオを聴いて』と簡単に言うけど、思い上がっちゃいけないと思う」と冷静に現実を見つめる。

 震災時、さまざまな情報が入り乱れ、多くの人たちは戸惑ったこともあった。

 「急にラジオのスイッチを入れて、そのパーソナリティーの言うことを信じるのは難しい。普段から番組を聴いてもらう努力が大切で、信頼関係があって初めて、リスナーにしてみると『こいつの言うことは信用できる』」

 震災後、東北放送やラジオ福島に足を運んで話を聞いた。そして今、パーソナリティーとしての責任をより強く感じているという。「この苦しみ、悲しみはどこでも起き得る。危機感を煽(あお)るだけじゃだめ。いざというとき、何をするかをもう一度考えてみる必要があると思います」

 

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