|
焦点−大震災から1年/人口流動 深刻な転出超過/少子高齢化に拍車
東日本大震災と福島第1原発事故に伴い、宮城、福島両県の人口に著しい転出超過が生じている。福島はほぼ全域で社会減となり、宮城は仙台市を除く沿岸部で高い転出超過率(人口に占める転出超過の割合)を示す。岩手、宮城は内陸の中心都市に集積する傾向が表れたのも特徴だ。岩手県大槌町や宮城県山元町は震災前人口の約9%が流出するなど、自治体の存続にもかかわる深刻な事態に陥っている。
◎「年少・親世代」顕著/自治体存続の危機も
<群抜く福島> 東北6県の推計人口に基づく転出超過の推移はグラフの通り。いずれも人口流出は減少傾向にあったものの、震災後に宮城、福島が大きく反転。岩手を含む被災3県の転出超過は4万6766人に上る。 原発事故に見舞われた福島の転出超過は3万3160人と群を抜く。主な移転先は東京をはじめとする関東圏のほか、宮城、山形など。社会動態が前年(6627人減)と同数だったと仮定すると、2万6533人の転出が震災、原発事故の影響と県はみている。 切実な問題は人口構成だ。年齢階層別の年間社会動態は、0〜4歳が4508人減(前年9人増)、5〜14歳が4845人減(268人減)と、年少人口の流出が顕著に表れた。 その親世代に当たる20〜44歳の転出超過も多く、35〜44歳の階層では5023人減(334人減)に上る。他方、55〜64歳は688人減(359人増)、65歳以上は1645人減(10人減)で、急激な少子高齢化への懸念が広がっている。
<沿岸部深刻> 1万人近い転出超過を記録した宮城は昨年7月以降、社会増が続き、「転入と転出の差が縮まり、流動は落ち着いてきている」(県統計課)。ただ、市町村単位で見ると、津波の被害を受けた沿岸部と内陸の中心都市とで変動の違いは大きい。 人口ベースでは、石巻市が5652人の転出超過となっているのをはじめ、気仙沼市、山元町、多賀城市、南三陸町、東松島市が1000人を超す社会減。転出超過率で見ると、山元町、女川町、南三陸町で約8〜9%の人口流出があった。 一方、仙台市は5796人の社会増を示し、市北部に近い富谷、大和、利府の3町と大衡村は自動車産業の進出もあって転入超過を維持した。このほか、大崎、登米、角田の3市と大河原、柴田、涌谷の3町は3桁の社会増を記録した。
<市部に移動> 陸前高田市や大槌町で1200〜1300人台の社会減がありながら、転出超過の推移に大きな変化がなかった岩手も、内陸の市部が被災者の受け皿になった格好だ。 2010年に転出超過だった盛岡市は転入が転出を1519人上回った。北上市は592人、一関市は333人の転入超過で、県調査統計課は「統計上、沿岸部から内陸部への移動が確認でき、住居の供給力がある市部に移動した」と説明する。
2012年03月06日火曜日
|