ドイツで行われた国際競技会に出場した伊藤みどりさんに、同じく選手として出場していたイタリア人が行った
インタビューを訳しました。
みどりさんに会えたことで感動しているインタビュアーの喜びと、あくまでも謙虚で地に足のついたみどりさんの応答で、素敵なインタビューだと感じました。元記事には写真も添えられています。ぜひご覧下さい。
(ここから記事訳)
ISU Adults Competition: イタリアチームが伊藤みどりにインタビュー
オーバーストドルフのマスターズ競技の会場でイタリアチームは伊藤みどりと出会う機会を得た。 日本人のチャンピオンは、とても気さくで謙虚な人柄を見せ、すぐにインタビューと写真を取る許可を与えてくれた。
土曜日にリンクに降りた瞬間、異様な静寂が辺りを包み、その場に居合わせた人々の視線が彼女に集中していた。彼女の最初のダブルアクセルは、割れるような歓声でむかえられた。
この瞬間からみどりは緊張を解き、満面の笑顔で演技を続けた。 あたかも観衆によって、本来の自分自身を取り戻すことが出来たとでも言うかのように。
惜しむらくはジャンプのエレメンツは3つだけだったことだが、間違いなく素晴らしいクオリティーのジャンプを見せた。 彼女が誰もと変わらぬ一競技者なのだと感じるのは、感動的だった
リンクサイドにみどりを指導するコーチはいなかったが、チームの一人である女性が、厳しくアドバイスを与えていた。しかし彼女のほうから他のチームメンバーにアドバイスを与えることや、他の競技者を見下すような言動を見せることは、一度たりともなかった。
イタリアチームと日本チームの間には自然な友好関係がはぐくまれ、みどりとの出会いは、今回の最も素晴らしい経験になったと言えるであろう。
Q: あなたのような偉大なチャンピオンがマスターズの様な機会に競技に復帰するのを見るのは、非常な驚きでした。 今回の参加を決めたのは何故でしょうか?
伊藤みどり: 成人になってからもフィギュアスケートのトレーニングを続ける人が多いと言うことを、近年特に感じるようになりました。 フィギュアスケートの世界に身をおいてきて、多くの成人が競技に復帰するのを見、真剣にプログラムを構成し、努力と深い献身を捧げるのを見ます。
私はフィギュアスケートとそれを取り巻く世界が心から好きなんです。 競技のレベルやスケーターの質が、人数の上でも質の面でもこの3年で爆発的に増えたことから、復帰は私にとって自然な成り行きでした。
Q:マスターズ競技に関するあなたの意見を聞かせてくださいますか?
伊藤みどり: オリンピックも、ISU主催のオーバーストドルフ開催のマスターズも、選手たちがどのようにその競技に取り組むかにはそれほど変わらないと思うのです。
全てがそのレベルに見合っているとはいえ、ここに出場する成人たちは非常な努力を払っています。オリンピックの出場選手たちと全く変わらず、誰もが自分の最善の演技を見せたいと願っているのです。 この競技会は「成人スケーター」のためのオリンピックだと思います。そして素晴らしい点は年齢制限に阻まれて引退しなくてもよいと言うことです。
たとえ年齢と共に体力に衰えが見られるとしても、持てるエネルギーと技術の範囲内で最善を尽くしたいと思いますし、他の選手も同様に取り組んでいるのですから。
Q:われわれ成人選手の一番の弱点は緊張感のコントロールで、リンクの中央に立つとパニックに陥りがちなのですが。 あなたも土曜日にリンクに立つときには緊張すると思いますか?それともこの種の感覚には慣れていらっしゃるでしょうか?
伊藤みどり: かつては成人になってから難しい技術を見につけるのは無理だと考えられていましたが、今では多くの人がそれが可能だと知っているのです。 非常に勇気があり強い意思の力のおかげだと思います。
かつてオリンピックに出場していたとき、私には多くの期待がかかっていました。土曜日には楽しむことだけを考えて滑ります。とはいえ、15年間競技から遠ざかっていたわけで、観客の応援があればとても嬉しく感じるでしょうが。
Q:あなたは女性としてはじめて競技でトリプルアクセルを成功させました。その後も成功した女性選手は多くないはずですが。
このジャンプが女性選手にとってこれほど困難なのは何故だと思われますか? もっと多くの選手がこのジャンプに成功するためには、どのような身体能力の発達を必要とするのか、若しくはどのような改善が必要なのでしょうか?
伊藤みどり:私が現役のころと現在では、競技の内容やルールが大きく変わりました。 現在ではトリプルアクセルのように大きなリスクを伴うジャンプに時間を割く選手はそれほど多くはなく、それよりプログラムの構成を練り別の戦法をとるほうを好むのです。
Q: 浅田真央さんについて、トリプルアクセルを取り入れる労力のために、他のエレメンツを行う技術の多くを犠牲にしているとする意見がありますが。
伊藤みどり:トリプルアクセルは素晴らしい技術を伴うジャンプで、それを身につけることが出来ていれば、トリプルアクセルのために、他の技術的エレメンツや芸術性を犠牲にすることになるとは思いませんが。
確かに浅田真央さんのプログラムは3Aの成功如何によってその成果が大きく変わる構成だと言う印象はあります。 彼女にとって、成功させ限界に挑むことが大きな意欲を生むのでしょう。自分のトリプルアクセルに誇りを持って良いと思います。
Q:現役時代のあなたは、技術的には最強でしたが、規定と芸術性の評価が弱点になっていたかと思いますが。
現在現役だったとしたら、今のジャッジングシステムで、あなたの技術的才能により、メダル獲得の面でより高い評価を得られる気がしますが。悔しい思いはありませんか?
伊藤みどり:現在のプログラムが、ステップやジャンプなど多くのエレメンツを含めなければならず、どれほど複雑になっているかに、驚くばかりです。 良くこれだけのものをこなすと感心しています。今日のスケーターが成し遂げるのは、本当に素晴らしいことだと思います。
私の現役時代には総合的なプログラムと言う考え方は、あまり重要視されていませんでした。 新システムでメダルが取れたかどうかは分かりません。あまりにも違いすぎますから。高い技術点を獲得することは出来たかもしれませんが、高いコンポーネンツを取れたかどうか・・・
Q:近年日本を始めアジアのフィギュアスケート選手は非常な進歩を成し遂げ、多くの観衆を集めるポピュラーなスポーツになりましたね。 どんなことがこのような進歩の決め手となったと思いますか? あなたの大きな知名度も、貢献したのだとは思いますが。
伊藤みどり:確かに私がオリンピックでメダルを取ったことでフィギュアスケートへの関心が高まったと思います。 日本人のこのスポーツへの関心の持ち方が根本的に変わりました。
今日では非常にポピュラーなスポーツとなり、競技会やアイスショーのチケットは争奪戦が繰り広げられます。 ファンの間でも評価システムについての非常に深い知識が広まり、だからこそ選手たちが技術や表現面で高いレベルに到達するためにどれほど多大な犠牲を払っているかも、広く理解されています。
日本人は客観性を重視する新評価システムに好意をもっており、これが選手たちに課されるプレッシャーを軽減する役に立っていると思います。私の現役時代には一国の期待を一人で背負っていて、経済的にもこのスポーツを続ける困難は多大なものがありました。
今日では、このスポーツに投資することが企業イメージの向上に大きく貢献することを悟った大企業が、選手のスポンサーとなっています。企業の後援を受けることで、フィギュアスケートの経済的負担は軽くなり、選手たちも継続するための莫大な出費を捻出するのに苦労しなくなりました。
Q: 引退後、コーチを経験されましたか?
伊藤みどり:フィギュアスケートの世界からは離れていませんが、コーチを務めたことはありません。
あるスケートスクールのコースや遠征、他のスケートリンクでのスタージュなどの管理を担当しています。管理を担当していると言っても、常にあらゆる年齢層のスケーターと接触を保っています。
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伊藤みどりさんがドイツの競技会に出場した際の、イタリア人がインタビューした記事の日本語訳を載せているこちらのブログにトラックバックします。Notte sul ghiaccioaもとの記事はこちらArt On Iceほんとうにすばらしい内容で、現役の選手だけでなく、趣味でスケート?...