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研究炉:運転30年超が7割 IAEA原発安全報告案

国内の研究炉の立地(計22基) ※文部科学省の資料をもとに作製。2010年7月1日現在
国内の研究炉の立地(計22基) ※文部科学省の資料をもとに作製。2010年7月1日現在

 【ウィーン樋口直樹】世界で運転中の研究用原子炉254基のうち、70%で運転期間が30年を超えていることが7日、毎日新聞が入手した国際原子力機関(IAEA)の原発安全報告案から明らかになった。日本で運転中の研究炉も15基中、8基は運転期間が40年以上に及ぶ。IAEAは、老朽化した研究炉の多くが、「深刻な懸念を提起している」と指摘し、加盟国に対し、老朽化に対処する「積極的な戦略」の構築を求めている。

 報告案によると、運転期間が20~30年の研究炉は24%で、20年未満はわずか6%。研究炉の主要な事故原因のひとつは、老朽化による構造やシステムの故障が占めているという。このため、IAEAは、「研究炉の運営機関は経年劣化した性能を回復・維持し、新たな規制に応じるため、数々の活動に取り組まなければならない」と指摘している。

 研究炉の老朽化は事故の可能性を高めるだけでない。09年には故障や保守管理による運転停止が重なり、研究炉でつくられる放射性医薬品の原材料モリブデン99などの世界的欠乏を招いた。

 原発安全報告案は、開会中のIAEA理事会などでの協議を経て、9月の年次総会に提出される。

 ◇日本で15基稼働、12基は30年以上

 文部科学省原子力規制室によると、日本で運転中の研究炉は15基。このうち東京大の原子炉「弥生」(茨城県東海村)は運転を停止し、近く廃炉措置に入るため、14基になる。12基は運転期間が30年以上、うち40年以上が8基ある。最も長い近畿大原子力研究所(東大阪市)の原子炉は約50年に上る。

 一方、廃炉中の研究炉は、立教大原子力研究所(神奈川県横須賀市)や日本原子力研究開発機構の原子力船「むつ」など7基。既に完了したのは同機構などの8基で、廃炉に関するトラブルは確認されていない。【野田武】

 ◇研究用原子炉

 商用炉と異なり、医療・工業用アイソトープの製造▽原子炉に関する工学的な基礎データの収集▽原子力に携わる人材の育成--などを目的とした原子炉で基本的に発電しない。60年代に世界中で多数建設されたが、その後は減少傾向にある。

毎日新聞 2012年3月8日 15時00分

 
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