札幌医大が、国立函館病院と浦河赤十字病院の常勤麻酔科医計2人の派遣を打ち切ることを決めた。同大は麻酔科医全体の不足を理由にしているが、麻酔科医は手術の麻酔を管理する専門医で、緊急手術への対応など地域医療の影響が懸念されている。
札医大は現在、道内44病院に150人の麻酔科医を派遣している。国立函館病院は2人いる常勤医のうち1人が自己都合で退職。浦河赤十字病院の常勤医1人についても4月以降の常勤派遣は見送る。
札医大は函館には札医大出身の近隣病院の医師に応援してもらえるよう要請。浦河には札医大から4月以降、週替わりで1人を非常勤で派遣することにしている。
同大の山蔭道明教授(麻酔科)は「麻酔科医は夜間勤務がないため女性が多いが、産休や育休で全体的に不足している」と説明。「新人医師も地方派遣を敬遠することが多く、人手のやりくりが付かない」と話す。
同大の派遣打ち切りについて、高橋はるみ知事は7日の道議会本会議で「12年度に策定する札医大の次期中期目標や中期計画で、具体的な取り組みを示したい」と述べた。【田中裕之】
札幌医大の麻酔科医の派遣をめぐっては、苫小牧市立病院でも昨年10月、常勤医3人を12年3月末で全員引き揚げるとの連絡を受けた。同11月には担当教授が同市を訪れて通告。これまでの折衝で4月以降は常勤医1人の派遣を受けられることが7日までに決まったが、市は苫小牧市医師会とも連携して他の医療機関に麻酔科医の出張を依頼するなど、態勢の立て直しに苦慮している。
「派遣停止」の背景には医療事故をめぐる病院の対応のまずさもあった。市は昨年6月、日高管内の女性患者を全身麻酔で手術し下半身にしびれが残ったとして、医療事故の示談金300万円の支払いを市議会に提案。この際、院内の医療事故対策委員会などは開かず、院長らが「全身麻酔が原因」と対外的に説明したことに医師や医大側が不快感を示した経過がある。
岩倉博文市長は「病院の対応が不適切だった」と陳謝。医療事故解明のため第三者を加えた「医療事故調査検討委員会」を近く設置する。【斎藤誠】
毎日新聞 2012年3月8日 地方版