上杉隆の東京脱力メールマガジン 「ツイッターデマとテレビ・新聞のウソ1」
『 ツイッターデマとテレビ・新聞のウソ1 』
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民間の原発事故調が報告書をまとめた。
結論から言えば、「何をいまさら」という感が強い。それは自由報道協会所属
のフリーランス記者などが、3月の原発事故以降、再三指摘してきたことをな
ぞったにすぎないからだ。報告書は、フリーのジャーナリストが東電会見、保
安院会見、ときに枝野官房長官などの官邸中枢に直接働きかけ、指摘してきた
ものばかりを並べているにすぎない。繰り返そう、何をいまさらだ。
ところが、この程度の報告書が日本の社会では新鮮に映ってしまう。なぜか。。
その最大の理由は、情報隠蔽に加担したマスコミの罪には一切触れられず、ま
た自由報道協会所属の記者や原口一博衆議院議員などの正しい指摘を意図的に
避け、現実を直視することをしていないからだろう。
先月(2月)、オーフス会議参加のために訪れた欧州ではまったく逆だった。
欧州の原子力専門家たちが、日本政府、官僚、学者、マスコミを信頼しない代
わりに、自由報道協会の代表である私を招き、当時の状況を報告させたことな
どその象徴的な事例だろう。
世界、少なくとも欧州の原子力・放射能の専門家たちは、日本の権威を信じて
いない。むしろ日本政府とそのパワーエリートたちの作ってきた虚構を早々と
見破り、日本政府を情報隠ぺいを常態化させた「犯罪集団」だという認識を強
めている。
私はまた、4月にはドイツ各州での講演旅行に呼ばれている。一方で、権威に
溺れ、自己検証すらできず、直視したくない現実に対して「嘘」や「デマ」と
いうレッテル貼りを繰り返して、自らの陳腐なメンツを守ろうとする日本のパ
ワーエリート、とくにマスコミから声がかかることはない。
相手が憎かろうがなんだろうが、結果を直視しないアンフェアな日本社会の現
実はここに端的に表れている。
ちょうど民間事故調の報告書が明らかになったことで、本メルマガにおける私
自身の中途の作業を思い出した。
3・11直後からの私自身のツイログを遡ることで、日本の言論界のそれと比
較・検証し、その上で自らの過ちと、あるいは大手メディアのアンフェアさ、
さらには日本の言論社会の不健全性をあぶりだそうとしている最中だったのだ。
日本の大手メディアは震災1年の近づくこの冬、軒並み「検証報道」を行って
いる。だが、私から言わせれば、それは「検証」ではなく、単なる「言い訳」
にすぎない。本気で検証をするのならば、一年前、自らが報じた記事や番組を
手を加えずにそのまま報じ、それを検証すれば十分のはずだ。
だが、彼らは絶対にそれを行わないであろう。なぜなら、そこには「恥ずべき
誤報の山」しか認められないからだ。
私は現実から目を逸らすつもりはない。たとえそれが自分自身にとって都合の
悪い結果になろうとも。
そして、大手メディアがやろうとやるまいと、私はひとりでもそれをやるまで
だ。そう、6年前の『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)のときと同じ
ように、フェアに自己批判を続けようと思う。
3・11からの私自身のツイログの続きを載せて検証を行おう。
〈【速報】 原子力安全・保安院によると、福島第1原発1号機で炉心溶融(メ
ルトダウン)が始まった模様。放射性セシウムが検出。安全を確保して退避を。
posted at 14:28:02 〉
「上杉隆はデマ野郎だ」という評判は3月12日のこのツイートを境に始まった。
一年後の今となっては、結果の正しさを疑う者はいまや誰一人いないだろうが、
残念ながら、当時私に貼られたレッテルの方はそのままである。驚いたことに、
具体的な内容の検証もせずに、「デマ」「嘘つき」の評価を続けているのは同
業者に少なくない。そう、ジャーナリストにとっては私の方が間違えであって
くれた方が都合がよかったのだろう。
実は私自身も自分自身が「デマ野郎」になってほしいと心の中では祈っていた。
私の指摘がすべて嘘で現実は何の問題もなければこんなに嬉しいことはない。
そうすれば、今頃福島の人々は3・11前と同じように普通の生活ができてい
たはずだ。
だが、現実はそうはならなかった。テレビ・新聞の言うように事故は収束して、
普通の生活ができるなど、まったくの嘘っぱちだったのだ。
そして、結果とてそうした「デマ」と「ウソ」を流し続けてきたテレビ・新聞
は何のお咎めもなく、いまや被害者面で政府や東電を叩いている。こうなるこ
とは当時、すでに私の指摘していた通りである。
原発事故における官報複合体との戦いは3月12日に始まった。私は少しでも多
くの情報が国民に届くよう、あの手この手と手を尽くすことになる。それは3
月12日のツイートの続きをみていただければ理解できるだろう。
〈被災者の多くはSNSなどによって安否や災害情報を交換している。記者クラ
ブなどどうでもいい。せめてUstやニコニコ動画だけでも入れてほしい。 QT @
_nat ぜひ自由報道協会や海外メディアも会見に入れてあげてください! htt
p://t.co/M4eZ7bJ via @fpaj
posted at 14:48:09
首相官邸前離脱なう。あきらめた。官邸職員、内閣記者会の方は政府発表をつ
ぶやいてください。それをRTしますから。 QT @_nat ぜひ自由報道協会や海外
メディアも会見に入れてあげてください! http://t.co/M4eZ7bJ via @fpaj
posted at 14:53:30
久保長官が片山総務大臣の部屋に入った。記者は排除されている。 QT @maior
itatensi27 @kharaguchi 自由報道協会が入れないとの事。原発問題に何か隠
し事があるのですか? 不安が広がります。
posted at 14:55:21
最新情報。 RT @47newsflash: 福島第1原発1号機の原子炉格納容器から蒸気
を外部に放出するのに成功。原子力安全・保安院発表。 http://bit.ly/17n4i
z
posted at 15:39:15
【さらなる速報】爆発で骨組みだけに。窓を閉めて外出しないように。最悪の
状況を考えて行動を。 RT @uesugitakashi: 【速報】 原子力安全・保安院に
よると、福島第1原発1号機で炉心溶融(メルトダウン)が始まった模様。放射
性セシウムが検出。安全を確保して退避を。
posted at 17:25:39〉
政府中枢、東電社員、学者、科学者、米国政府、米軍、欧米メディア、そして
原発現場の作業員からの情報をクロスチェックしながら、私は覚悟を決めて【
さらなる速報】までのツイートを行った。結果、これはスクープになった。
だが、もちろん日本のメディアはそこは徹底して無視している。それどころか、
先述したように依然「嘘つき」のレッテルを貼ったままである。
なぜか。それは、自分たちの情報隠ぺい、そしてそれに加担した犯罪行為がバ
レてしまうからに他ならないからである。
(つづく)
2012-03-05 21:45
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