マイページ | 新規会員登録 | オンライン版について

定期購読のお申し込み | 月刊「FACTA」のご案内 | よくある質問 | ご意見・お問い合わせ | サイトマップ

阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

FACTAleaks――対セラーテム戦争15 四度目の質問状

2010年10月01日 [leaks]

于文革氏からの抗議文が届いた翌日、本誌はセラーテムに四度目の質問状を送った。今回も締切ぎりぎりである。于文革氏は「回答する義務はない」と啖呵を切ったが、痛いところを突けばおそらく反応すると読んでいたからだ。

同時に、セラーテムの会計監査を担当するパシフィック監査法人の笠井浩一会計士にも質問状を送った。そちらも併せて公開しましょう。

*   *   *   *   *

セラーテムテクノロジー
取締役会長 于文革 様
代表取締役社長 池田修 様
取締役CFO 宮永浩明 様

本誌の質問状に対する于文革会長の回答書(9月9日付)を受け取りました。本誌の報道にご気分を害されたのだとしたら遺憾ですが、質問の内容は日本の投資家が当然抱くはずの疑問ばかりです。それに一切回答しない、あるいは回答できないとすれば、株式公開企業の経営トップとしての責務をないがしろにしていると考えざるを得ません。

于会長は回答書の最後に「今後貴社の質問に対して回答する義務はない(対于今后貴公司的問題、我公司没有義務回答)」としています。しかし「回答しない」とは明言しておられませんので、ここに改めて追加の質問を送らせていただきます。ご検討のうえ、ご回答をお願いします。

1)北京誠信能環科技のオフィスについて
本誌は北京市朝陽区の観湖国際1座9層のオフィスを数度にわたり訪問し、8月12日以前はオフィスに社員が数人しかおらず、人の出入りもなかったことを確認しています。その後、8月24日に訪問した際には急に人が出入りしていて驚きましたが、オフィス内の見学は拒否されました。さらに8月27日、北京誠信能環の登記上の住所である豊台区科技園のオフィスを訪問しましたが、「数日前に入社した」という女性が1人いただけでした。北京誠信能環には400人を超える社員がおられるそうですが、彼らはいったいどこに出勤しているのですか? 本当のオフィスの住所を明かせない理由があるのですか?

2)于文革氏と北京市供電局の関係について
8月12日付の回答書の中で、御社は「『北京華電恒盛電力技術公司』は、北京市供電局傘下企業200数社のうちの1社であり、于文革氏は北京市供電局の幹部として複数の傘下企業の代表者として登記されておりました。于文革氏は、『北京華電恒盛電力技術公司』の代表者としても登記されていましたが、同社は、2002年よりほとんど事業を休止しており(以下省略)」としています。北京市工商行政管理局の企業登記情報によれば、于文革氏は現在も北京華電恒盛電力技術の法人代表として登記されており、登記証は毎年更新されています。ということは、于文革氏は現在も北京市供電局の幹部なのですか?
北京誠心能環のオフィスがどこにあるかを明かせないのは、北京華電恒盛電力技術と同様に実体のない会社だからではありませんか? 于文革氏は、セラーテムが2009年12月に北京誠心能環を買収する直前まで「北京京供誠信電力工程有限公司」の法人代表と総経理を務めていました。北京誠心能環のオペレーションは、現在も北京京供誠信電力工程および北京市供電局と一体なのではありませんか?

3)2010年7月16日付「スマートグリッド受注」のIRについて
上記IRにおいて、御社は「北京市民政局住宅合作社及び北京中弘投資有限公司との間で、北京市内における『地域内スマートグリッド建設』に関する契約をそれぞれ締結いたしました」と発表しました。しかし8月30日付の中国「新世紀」雑誌の報道によれば、事業主はいずれも「広い意味での智能化は取り入れているが、本格的なスマートグリッドではない」という趣旨のコメントをしています。また、北京誠信との契約についてもはっきり認識していないようです。これらのプロジェクトは正真正銘の「スマートグリッド」と呼べるものなのですか?

4)白雲峰氏の科信能環CEO就任について
8月12日付の回答書の中で、御社は「現時点で白雲峰氏が科信能環の役員に就任した事実はありません」としました。しかし本誌は、8月6日に東京の大和証券の会議室で開催されたセラーテム取締役会に白雲峰氏が出席し、科信能環CEOとして報告を行ったとの情報を得ています。また、白雲峰氏は7月15日に母校の華北電力大学で開催されたイベントに科信能環CEOの肩書きで出席したほか、8月18日から北京科技大学で開催された「科信能環杯」の開幕式にも出席し、冠スポンサー代表としてスピーチしています。これらは事実ではないのですか?

以上の4点について、9月13日までにご回答ください。
よろしくお願いします。


2010年9月10日
月刊FACTA発行人
阿部 重夫

*   *   *   *   *

パシフィック監査法人
代表社員 笠井浩一 様

お世話になっております。
先月ご連絡させていただいた際はどうもありがとうございました。

追加で確認させていただきたい件があり、再度連絡させていただきました。昨年12月の、セラーテムによる北京誠信能環の子会社化に関することです。

2009年6月、中国系投資ファンドの「Wealth Chime Industrial Limited(WCI)」および「New Light Group Limited(NLG)」の2社がセラーテムの第三者割当増資を引き受け、同社の大株主になりました。その後、セラーテムは北京誠信能環の買収資金を調達するため、WCIに対して再び第三者割当増資を行い、2009年12月21日付のIRで北京誠信の子会社化完了を発表しました。

この買収に関して、セラーテムは「WCI、NLG、北京誠信の3社の間に深い関係はなかった」と主張していますが、買収がWCIのオーナーである趙広隆氏の仲介で行われたことを否定せず、NLGのオーナーである庄瑩氏が北京誠信と顧問契約を結んでいたことを認めました。また、庄瑩氏が北京誠信副総経理の肩書きで行動していたことについて「あったかもしれません」と事実上認めました。つまりセラーテムは、大株主(庄瑩氏)が副総経理を名乗って顧問を務めていた企業(北京誠信)を、筆頭株主(趙広隆氏)の仲介で買収し、大株主(庄瑩氏)の元雇い主(于文革氏)を会長職につけたことになります。

以上の経緯については、担当監査法人の会計士としてよくご存じのことと思います。そこで以下の質問にご回答ください。

1)上記の事実から、セラーテムによる北京誠信の買収は、企業会計基準が開示を義務付けている「関連当事者との取引」に該当するはずです。しかし、セラーテムの有価証券報告書には全く記載されていません。笠井先生は監査にあたり、どのような判断を下されたのですか? 「関連当事者との取引」に該当しないとすれば、理由を教えてください?

2)北京誠信の子会社化と同時に、中国側から于文革氏ら3人がセラーテム取締役に就任し、日本側からは池田修氏が北京誠信の取締役に就任しました。親会社から子会社への派遣が1人で、子会社から親会社への逆派遣が3人というのは異例です。同時に、セラーテムは社外取締役のポストを新設し、東京大学名誉教授の高橋満氏を招聘しました。
この社外取締役のポストは、笠井先生のアドバイスにより設けられたと聞いています。その理由は何ですか? IRでは「コーポレートガバナンスを強化するため」と説明していますが、具体的にはどういう意味でしょうか?

以上の2点について、9月13日までにご回答ください。
どうぞよろしくお願いします。

2010年9月10日
月刊FACTA発行人
阿部 重夫

投稿者 阿部重夫 - 17:00| Permanent link | トラックバック (0)



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://facta.co.jp/generator/mt-tb.cgi/574

※記事の内容に無関係なトラックバックにつきましては、削除させていただく場合がございます。ご了承ください。トラックバックが正常に動作しない場合はsupport@facta.co.jpまでご連絡ください。

発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

カレンダー

2010年10月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

ブログ更新通知 [RSSフィード]

RSSとは記事のタイトルや概要を配信するための技術です。RSSに対応したソフトウェアやサービスを利用すると、最新の記事のタイトルや概要が取得できます。詳しくは「RSSフィードについて」をご覧ください。

当ブログは以下の規格に対応しています。

RSS 1.0
RSS 2.0
ATOM