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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

FACTAleaks――対セラーテム戦争7  9項目質問状

2010年09月07日 [leaks]

8月6日の会見後に9項目質問状を、池田、宮永両人に手渡した。質問状を作成したのは7月30日であり、途中の回答期限を8月6日としたのは当方の誤記である。

7月30日にFAX送信するのをやめて会見で手交することにしたからで、この時点での回答期限は8月9日(火)とすべきところだった。次回で披露する回答で噛みついてきたが、質問状の内容を読めば、単にアリバイ的な質問ではなく、取材の経過も含めてFACTAの意図を丁寧に説明してある。

これがセラーテムを震撼させたことは間違いない。即答できないほど慌てたに違いないが、こちらも締め切りがあり、そもそも取材拒否して逃げ切りを図ったのはセラーテムなのだから、時間の問題は彼らに責任がある。

*   *   *   *   *

セラーテムテクノロジー
代表取締役社長
池田 修 様


平素はお世話になっております。

弊誌の取材依頼をお受けいただけない旨のご連絡をいただき、大変残念に思っております。『当社は方針により、雑誌等の取材はご遠慮させていただいております』とのことですが、御社は最近もアエラ(8月2日号)やラジオ日経(6月19日放送)の取材を受けており、理解に苦しみます。

御社の中国事業については多くの投資家が感心を寄せており、十分な情報開示が望まれます。メディアの取材への対応は、上場企業として当然の責務であるはずです。つきましては、弊誌が御社に取材を申し込むに至った経緯、および具体的な質問事項について、以下に説明させていただきます。ご一読のうえ、取材にご対応いただけますよう、改めてお願い申し上げます。


取材申し込みの経緯

中国経済の高度成長と日本経済の長期停滞を背景に、中国企業が日本の上場企業を買収したり、日本企業が中国市場に活路を求めるケースがかつてなく増えています。弊誌はそうした事例を調べる中で、偶然セラーテムのケースに行き当たり、非常に興味を持ちました。

御社は昨年6月、英領バージン諸島に登記された中国系投資ファンド「Wealth Chime Industrial Limited(以下WCI)」および「New Light Group Limited(以下NLG)」に対する新株予約権付き社債の割り当てを行いました。この社債は昨年9月に株式に転換されています。相前後する昨年8月、御社は中国の電力関連企業「北京誠信能環科技(以下CEE)」と戦略提携し、11月には同社を子会社化すると発表しました。CEEの買収に必要な資金を調達するため、御社はWCIに対する第三者割当増資を行い、契約支配型ストラクチャーによってCEEを連結対象の完全子会社としました。
この一連の操作により、WCIはセラーテムの発行済株式の49.56%を保有する筆頭株主になりました。NLGも4.56%を保有しており、両社を足すと過半数を超えます。また、CEEの子会社化に伴い、御社はCEEから于文革氏(CEE董事長)、王暉氏(CEE総経理)、蔡静偉氏(CEE董事)の3人を役員として受け入れ、于文革氏はセラーテム会長に就任しました。その結果、御社の取締役会は総勢7人のうち3人が中国子会社からの派遣で、会長職も子会社出身という異例の状況になっています。

弊誌は公開情報の分析と独自の取材を通じて、これら一連の操作の目的が、①中国資本による実質的なセラーテム買収、②CEEの日本の株式市場への「借殻上市(Back Door Listing)」にあったという結論に至りました。

表向き、セラーテム株の過半数を単独で支配する株主はいません。また、49.56%を保有する筆頭株主のWCIに関して、御社は有価証券報告書の「事業等のリスク」の項目で、『当社はWealth Chime Industrial Limited との交渉を通し、同社が当社の議決権の過半数を超える経営権を取得する意思がない点、中長期的にも同社が当社の経営に関与する意思がない点、当社の既存株主に対し十分に配慮を行っている点を確認しております』としています。WCIおよびNLGとCEEの間に、直接の資本関係を示す資料もありません。

しかしながら、WCI、NLG、CEEは現実には一体の存在であり、セラーテムを実質的に支配しています。そのように考えるのが自然と思われる事実が、数多く見受けらるのが理由です。

まず挙げられるのが、NLGのオーナーである庄瑩氏が、実はCEEの副総経理であり、于文革氏の部下であることです。さらに、セラーテムによるCEE買収は、WCIのオーナーである趙広隆氏の仲介で行われました。庄瑩氏(NLG)と趙広隆氏(WCI)は昨年6月に同時に同額の社債を引き受けるなど、同一歩調で行動しています。つまりセラーテムは、大株主(庄瑩氏)が役員を務めている企業(CEE)を、筆頭株主(趙広隆氏)の仲介で買収したうえ、大株主(庄瑩氏)の上司(于文革氏)を会長職につけたことになります。

次に、東証一部上場の中国企業「チャイナ・ボーチー」を媒介とした密接なつながりです。WCIの趙広隆氏と、NLGの庄瑩氏は、ともにチャイナ・ボーチーの顧問を務めています。また、セラーテム側で一連の操作を主導した宮永浩明取締役は、現在もチャイナ・ボーチーの上級顧問を兼務しています。チャイナ・ボーチーの日本事務所は、セラーテム本社とオフィスを共有しています。

趙広隆氏と庄瑩氏を宮永取締役に紹介したのは、チャイナ・ボーチー副董事長(前CEO)の白雲峰氏です。趙広隆氏は中国で「北京国能中電能源」という企業を経営し、山西省のボタ発電所建設プロジェクトでチャイナ・ボーチーと合弁しています。趙広隆氏と白雲峰氏は業務上密接な関係にあります。さらに白雲峰氏は、セラーテムの中国法人である「科信能環(北京)技術発展」の開業式典に出席しており、于文革氏とも近い関係にあります。このように、関係者全員が顔見知りで、業務や雇用を通じた利害関係者であることは明白です。

以上の事実関係を整理すると、①NLGの庄瑩氏はCEEの于文革氏の傀儡としてセラーテムに出資。②WCIの趙広隆氏はCEEの于文革氏の代理人または投資パートナーとしてセラーテムに出資。③NLGとWCIの両社でセラーテム株の過半数を握ったうえで、CEEを買収。④于文革氏ら3人を取締役会に送り込み、セラーテムの経営を実質支配。⑤中国資本による実質的なセラーテム買収とCEEの「借殻上市」が完成。このように考えれば、全て辻褄が合います。

なお、御社の宮永取締役は、中国側とともに一連の青写真を描いた中心人物であり、中国側(于文革氏ら3人の中国人取締役、趙広隆氏、庄瑩氏)と完全に利害が一致します。3人の中国人取締役に宮永氏を加えれば、取締役会の過半数を占めています。セラーテムは資本と経営の両面において、中国側の支配下に入ったと考えるゆえんです。

なお、「借殻上市」は中国や香港の証券市場でしばしば行われています。適法かつ十分な情報開示を伴って行われれば、「借殻上市」それ自体に問題はないと考えます。

しかしながら御社の場合、既存株主を含む日本の投資家に対して十分な情報開示を行っているとは思えません。また、CEEが中国で行っている事業の中身も、具体像がまったく見えません。そこで弊誌は、投資家に代わって御社を取材し、事実を明らかにしたいと考えました。長くなりましたが、以上が取材申込みに至った経緯です。

質問項目

下記の項目に関して、8月6日(金)までに面談による取材をお願いします。承諾いただけない場合は、その理由と各項目に対する回答を、同じく8月6日までに文書でご送付ください。

注) ここが日付を間違えた箇所である。正確には9日とすべきでした。

1)上述の「取材申込みの経緯」の事実関係について誤りがあれば、具体的な箇所の指摘と反論をお願いします。

2)NLGのオーナーである庄瑩氏はCEEの副総経理であり、CEEのトップである于文革氏の長年の部下です。また、CEEの買収はWCIのオーナーである趙広隆氏の仲介で行われました。つまりCEEは、NLGおよびWCIという大株主と、雇用および業務上の深い関係があったことは明白です。にもかかわらず、CEEの買収にあたり、日本の投資家に情報を全く開示していないのはなぜでしょうか。

3)セラーテムがCEEとの戦略提携を発表する直前に、于文革氏はCEE株の11.06%を取得しています。同時に、于文革氏の親戚と見られる于文翠氏がCEE株を18.81%買い増し、株式の23.75%を握る筆頭株主になっています。これらの株式取得には、額面ベースでも2100万元(約2億7000万円)が必要です。于文革氏はこの資金をどこから調達したのでしょうか。趙広隆氏が融資したのでしょうか。

4)2006年の規制強化により、中国企業がオフショア企業を介して海外市場に上場するには、中国証券監督管理委員会(CSRC)の許可が必要になりました。CEEがWCIとNLGを介した複雑な操作により「借殻上市」したのは、CSRCの規制を回避するためではありませんか。

5)昨年12月、セラーテムはCEEの子会社化と同時に「負ののれん」が発生したと発表しました。15億円の買収で3億4000万円の負ののれんが生じたということは、CEEを実際の純資産より2割以上安く買収したことになり、常識では考えられません。なぜこれほどの負ののれんが生じたのですか。負ののれんに伴う特別利益の計上で、セラーテムの見かけの業績を底上げしたのではありませんか。

6)CEEは電力関連企業であり、外資による買収が規制されています。このためセラーテムは、直接的には科信能環(北京)技術発展を子会社化し、CEEとの間に排他的契約を結ぶことで実質支配する「契約支配型ストラクチャー」を採用しています。その結果、CEEは外資が支配する内資企業というグレーなポジションにあります。CEEの顧客の多くは政府関係であり、外資企業と見なされれば受注を取れない可能性があります。このリスクについて、投資家に一切説明しないのはなぜでしょうか。

7) 御社は今年3月、科信能環(北京)技術発展が火力発電所向け大型省エネ事業とスマートグリッド事業に新規参入すると発表しました。また今年7月には、CEEがスマートグリッド2件を受注したと発表しました。しかしながら、中国では外資の電力関連事業への参入が禁止されています。一体どのようにして参入、受注が可能なのでしょうか。また、そのリスクについて投資家に一切説明しないのはなぜでしょうか。

8)CEEのウェブサイト(http://www.c-ee.cn/)を見ると、日本企業との戦略提携に関する記述を除き、セラーテムによる子会社化の情報が全くありません。それどころが、于文革氏ら経営陣の名前が一切伏せられており、異様な印象を受けます。「連絡先」に記載された代表電話番号(010-59283951)に何度かけても誰も出ません。そこで、中国のジャーナリストに依頼してCEEの住所を訪ねたところ、受付の女性は「買収なんてわからない」と答えました。また、オフィス内にはほとんど人がいませんでした。CEEは本当に実体のある会社なのですか。

9) CEEは外資の参入が禁止されている政府関連事業を受注するため、セラーテムの子会社である事実を隠し、あくまで中国企業を装っているのではありませんか。同様に、セラーテムは中国資本に支配されているにもかかわらず、中国進出に成功しV字回復を遂げた日本企業を装っているのではありませんか。このような行為は、顧客および投資家の信頼を欺くものではありませんか。

以上、ご回答をよろしくお願い申し上げます。

月刊FACTA発行人
阿部 重夫

投稿者 阿部重夫 - 08:00| Permanent link | トラックバック (0)



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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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