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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

FACTAleaks――対セラーテム戦争5  お笑い決算会見(中)

2010年09月03日 [leaks]

8月6日のセラーテム決算説明会の会見の続きをお知らせしよう。FACTAの追及に続き、会見に出ていたアナリストも質問を始めた。

*   *   *   *   *

他の質問者 先日、御社は中国でスマートグリッドを受注されたというリリースが出たので、私、問い合わせましたけれど、対応した方の説明だと、単に電力メーターを遠隔監視をするというシステムだという説明でした。それはそもそもスマートグリッドと呼ぶのでしょうか。

セラーテム池田社長 まず、開示いたしました3件のところで、先ほどの図のところの川下と川中で、送電網に関してはおっしゃるとおりで、送電の仕組みのなかでどれだけ最適化するかということでリモートでモニタリングをするなどのシステム的な部分があります。

川下に関しては、送電網から、いわゆるスマートメーターを単純に置くというだけではなく、電力の流れのネットワーク化に近いものなので、そういったかたちで使用量に応じて最適な量で制限する。それを送電からまず町、町のなかからそれぞれのマンション、マンションからマンションのそれぞれの部屋ということで、それを最適化するようなシステムもあるので、最初に言われたスマートグリッドのいわゆる大きな概念のなかの一部と考えていただいて結構です。

すみません。ご説明のほうがちょっと不十分だったかもしれませんが、そういったものです。

注) まったく不十分で、どこかで聞いたスマートグリッドの説明をおうむ返しに言うだけ。スマートグリッド受注案件3件とは、10年7月16日発表の北京市民政局住宅合作社と北京中弘投資有限公司、そして7月30日に発表した広東電網公司との契約のことだろう。対セラーテム戦争3で報じたように、「財新メディア」の取材ではその実体に疑問符がついている。

他の質問者 ここも子会社になって北京の会社ですけれどもね。

セラーテム池田社長 そうです、はい。

他の質問者 設立が2004年ということで、比較的若い会社だと思いますが、もともとは何を作っていた会社ですか。

セラーテム池田社長 もともとは省エネというところで、まずシステム的に例えば先ほどの省エネの診断システムであったり、同じようなもの、いわゆる電気の使い方をいかに効率的にするか。どこが効率的ではないのかというような診断のシステムを作っています。

それからその診断システムのもとに、例えばどの設備を入れたほうがいい、どの設備をリプレースしたほうがいいというような、これはノウハウになりますが、例えば機器の選定をしてあげたりとか、そういったかたちのサービス。それから運営した後のポストサポートのサービスをするというようなかたちの会社です。

ですから、ハードウエア自体を何か作るというよりは、ハードウエアは基本的には仕入れて売る場合と、お客様に「こういったハードウエアがいいですよ」というようにコンサルをして、お客様が直接買われる場合は、うちは入らないでシステム的なところだけをというような商売の体系をしていた会社です。

ですから、スマートグリッドは若干延長と言えなくもない、当然な部分ではありますので、ノウハウは若干もともと持っていたものを使っていくということは可能です。

他の質問者 ハードを作っていない会社が、今、ご説明にあったような高度なシステムを受注するというのが、まずもって信じられないですよね。というのは、日本においてスマートグリッド関連銘柄として実体のある企業が手掛けているのは、せいぜいメーターを作っている大崎電気のような会社ぐらいです。中堅重電各社も今、おっしゃったグリッドに直接接続している電気の需給管理をすべて丸ごとやるような、そんな高度なシステムは持っていないのですけれども、なぜサービスをやっていた会社ができるのか。

セラーテム池田社長 サービスと言っても先ほどの診断のシステムであったり、今の電力業界にもともと向けたソフトウエアやシステムをつくっていたということなので、それの延長線上でやっている、例えば今回発表させていただいているものに関しては、1件に関してはハードウエアを仕入れる場合もありますが、ほかの件に関してはシステム及び、いわゆるサポート、導入のサポートもサービスをしてやっているので、どうしてできたかというか、もともとの延長線上で認めていただいて導入ができたと。

ただ、導入をしてリリースでもしましたけれども、これをきちんと納品してはじめて、内容物もきちんと納品されてちゃんと動いているということで実績になっていきます。納品予定が年末ということで開示させていただいているので、それに向けてきちんとしたものができて、はじめて実績ができたということになると考えております。

他の質問者 最後の質問ですけれども。電気自動車の充電システムの話ですが、電気自動車の充電システムというのは思いつきで作れるものではないと思うんです。これは北京の会社がつくるのですか。

セラーテム池田社長 はい、その予定と、あとは第三者から仕入れるということも含めて考える。

セラーテム宮永取締役 充電ステーションのシステムというよりも、充電ステーションというのは事業主は国家電網であったり南方電網であったり、我々がそこの彼らオーナーから建設業務を下請けとして受託建設という感じなので、もちろんその規格に合格した設備については我々が仕入れるということで、そもそも充電ステーション、充電設備については中国はむしろアメリカと日本より研究で先行しています。その技術がたぶん世界レベルから見ても中国のほうがトップクラスだと思います。

注) また助太刀。スマートグリッドをよく知らない池田社長ではボロが出ると危惧して、あわてて補強したのだろうが、充電システムは米国や日本より中国のほうが優れているなどと、珍妙な発言になった。もとは中国人の宮永取締役だけに、はからずも中華思想が出てしまったらしい。中国の優れた充電技術とやらをぜひ説明してほしいものだ。

他の質問者 確認したいのですが、充電器を作るわけではないんですか。

セラーテム宮永取締役 私どもは充電ステーションの建設ということなので、その設備については南方電網と国家電網の要望について、そういった合格したスペックを私どもが仕入れして、それを周辺の設備とともに建設するという意味です。そういう充電設備の開発で我々がシステムをつくったりなどはしていません。それは本日発表したプレスリリースをご覧ください。

FACTA 先ほどのリスクを提示したという、ニュースリリースの何ページ目かをちょっと伺いたいのですが。何ページ目にどういう文章でリスクを提示したのですか。

セラーテム宮永取締役 11月13日のですね。

FACTA リリースはここにありますから、何ページですか。

セラーテム宮永取締役 少々お待ちいただいて、今、インターネットでちょっと見ますから。

注) 自分でネットを検索し始めたのにはあきれた。どういう文言でリスクを提示したのか、ちゃんと覚えていないらしい。浙江省出身で京大に留学した元中国人の宮永氏だが、日本語の文章は速読できないのか。あわてているので手間取っている。

FACTA いや、ここにありますけど。どこにどういう文章で提示したのかというのがわからないので。

「5.北京誠信子会社化のスキーム」というところに、「信頼できる知名度の高い中国法律事務所によりその有効性について法律意見書をいただいております。また会計処理上も連結決算の対象になることを当社の監査法人より確認をいただいております」という、このくだりですか。

セラーテム宮永取締役 (社員が駆けよって耳打ち。やっと答える)決算短信のですね、開示文書と同じですから、決算短信。例えば、本日発表させていただいた決算短信の24ページ、「企業結合等関係」のところの1の(4)「企業結合の法的形式」のところで開示しています。

FACTA これがリスクの提示ですか。では、去年の11月にリリースしたときにはこの部分はないですよね。

セラーテム宮永取締役 同じような記述が11月13日のプレスリリースの部分に記載されています。

FACTA 「免許などの外資規制で当社が直接株式を買収することができない」というのが、リスクの提示になるのですか。

セラーテム池田社長 私どもがどのように北京誠信を買収するか。これは中国政府による免許などの外資規制で当社が、本来であれば直接、株式を取得することのほうが望ましいのですけれども、直接、取得することによって免許が剥奪されるというリスクがあるので、当社は、中国では一般的に使われているそういった支配目的の複数の契約を締結することによって、北京誠信を実質的に当社グループが支配しております。これについてはもちろん、はい。

注) ここもオウンゴール。池田社長は北京誠信を直接買収すると「免許を剥奪されるリスクがある」と認めた。では、支配目的の契約を結ぶことによる実質子会社化ならリスクはないのか。とんでもない。

セラーテムが用いる「契約支配型ストラクチャー」は、中国政府の外資規制を尻抜けにするための常套手段で、それ自体は珍しいものではない。だが、個別のケースが合法かどうかを判断するのはあくまで中国の規制当局で、企業自身やそのお雇い弁護士ではない。

セラーテムは北京誠信の子会社化を発表した09年11月13日付のIR(投資家向け広報)で、「契約支配型ストラクチャーの有効性については、信頼できる知名度の高い中国法律事務所よりその有効性について法律意見書をいただいております。また、会計処理上も連結決算の対象になることを当社の監査法人より確認をいただいております」としているが、中国当局のお墨付きを得たとはどこにも書いてない。

そこで、契約支配型ストラクチャーのリスクを理解するための格好のテキストを紹介しよう。07年4月に鳴り物入りで東証マザーズに上場したものの、創業経営者による横領と粉飾決算の疑いが発覚し、わずか1年余りで上場廃止に追い込まれた中国企業「アジア・メディア」の有価証券報告書だ。

アジア・メディアの上場をサポートしたのは、主幹事が野村証券、会計監査があずさ監査法人、法律顧問が森・濱田松本法律事務所というそうそうたる顔ぶれだった。それだけに、有価証券報告書の「事業等のリスク」の項目は実に10ページ以上を使って詳しく説明しており、契約支配型ストラクチャーのリスクだけでほぼ1ページを割いている。

「中国の関連当局により、当社グループの支配関係に関する契約ストラクチャーが中国の広告産業に対する外資規制に合致しないと認定された場合、当社グループは中国の関連行政機関により厳しい制裁が科される可能性があります。(中略)当社グループは上記の契約ストラクチャー及びそれらを通じた当社グループの中国における業務運営が中国の現行法の規定に合致すると認識しておりますが、当社グループは中国政府が現行法について異なる解釈を行う事、または新しい法律、法規を公布することはないと保証することはできません」

皮肉なことに、アジア・メディアはこうしたドキュメンテーションについては優等生だった。ところが、肝心の経営者がペテン師で、これだけ周到な文面でも上場廃止に追い込まれたのだ。

では、セラーテムはどうか。宮永取締役が「開示した」と言い張る有価証券報告書で、ここまでリスクをきちんと開示しているか。読んだら、笑えますよ、ほんとに。大証の上場グループの目は節穴ですね。少しは恥を知ったらどうか。さてQ&Aに戻って、いよいよ核心に踏み込もう。

FACTA いや、要するに北京誠信という会社に実体があるのかどうかということを伺っているわけです。我々は北京のお宅のオフィスに伺っているのです。けれども、あのオフィスでニュースリリースで発表されているような受注ができるとはとても思えない。

セラーテム宮永取締役 北京誠信という会社が実在されていないという、そういうこと?

FACTA 要するに、あの会社で(スマートグリッドを受注)できるのかと伺っているのです。

セラーテム宮永取締役 あの会社で何ができないと。

セラーテム池田社長 リリースしている内容のことが実際にできているのかどうかと聞いているのですか。

FACTA そうです。

セラーテム宮永取締役 我々が複数の契約を締結した契約書も、日本の関係当局にも提出しているので、そこが、どこが問題なのか。

FACTA 関係当局というのはどこですか。

セラーテム宮永取締役 大証さんには提出しておりますし。

FACTA 大証は当局ではないですよ。

*   *   *   *   *

もう少し続きます。

投稿者 阿部重夫 - 08:00| Permanent link | トラックバック (1)



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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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