原発事故に伴う電力不足が懸念される中、神戸大学大学院海事科学研究科の西岡俊久教授(63)が「海洋エネルギーを活用した大規模発電装置の仕組みを発明した」と発表した。海を巨大ダムに見立て、海中で水力発電を行うという独創的なアイデア。理論的には原子力をはるかに上回る発電が可能といい、国際特許を申請している。(今泉欣也)
西岡教授は、破壊動力学の第一人者。物体に亀裂ができるメカニズムを解明するなどし、文部科学大臣科学技術賞、兵庫県科学賞などを受賞している。
海洋発電を考えたきっかけは、英スコットランド行政府が2008年に創設した「サルタイヤ賞」。海洋エネルギーだけを利用した革新的発電技術の開発者に賞金1000万ポンド(約12億円)を贈る賞で、西岡教授は地球の端が滝になっている「地球平面説」の絵からヒントを得たという。
海洋発電装置は、大型船のような海上浮遊物と海中の発電機2基、海中の配管で構成される。
まず、海水が海上浮遊物に付設した配管に入り、水の勢いでタービンを回して発電。海水はその後、潜水艦のような耐圧容器に入った海中に向けて配管内を落下し、発電機のタービンを回す。電気は海底ケーブルなどから陸上に送電し、海水はモーターを使って容器外に排出する。
配管の素材として用いる「スペクトラ繊維」は、鉄の10倍の強度。「金属疲労が生じず、かつ軟らかいので巻いて収納できる」と西岡教授。発電量は水の流量と落下の高低差で決まり、「例えば、海中の発電機が深さ千メートルであれば原発千基分(1基分の発電量約100万キロワット)の電気を作り出すことも可能だ」と強調する。
西岡教授は「ばかげた話と思うかもしれないが、実現すればクリーンな自然エネルギーで国全体の必要量を賄える。兵庫県内の企業など日本の英知を結集し、可能性を探りたい」と話している。
(2012/02/28 15:30)
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