バレーを長く撮影してきたカメラマンは表彰式でMVPの発表を聞いたとき、シャッターが押せなくなった。
「僕はずっとバレーをスポーツだと思って撮影してきたんです。これじゃあ、ショーと同じです」
バレーボール世界選手権女子のMVPは、6位に終わった日本の竹下佳江だった。MVPは記者投票を“参考”に国際バレーボール連盟(FIVB)が決定することになっていた。
このMVP選出はバレー界の問題点を象徴的に表している。近年、視聴率のとれるコンテンツとして人気を集めるバレーは他のスポーツに比べて、中継局が大会運営に大きな発言権を持つ。20億円を越えることもある莫大な放映権料をFIVBに支払い、ゴールデンタイムで放送するテレビ局にとって、バレー中継は“絶対に負けられない戦い”。結果、FIVBは日本にだけ、さまざまな“特別ルール”を認めている。
日本戦の前にアイドルが歌う、DJが試合中に日本の応援を煽る、2セット終了後10分間の休憩が入る。対戦国と当たる順番を指名できるというケースさえある。竹下のMVP選出も、その“特別ルール”と見られても仕方がない。
現代のスポーツイベントはテレビを無視して成立しないのは事実だ。だが、視聴率がほしいテレビの演出はどんどんエスカレートする。世界選手権前の全日本女子の練習にはアイドルが参加していた。
今回のMVP選出は、新聞を中心に大きな批判を受けた。MVP騒動前にも、今やバレーは、ボクシングの亀田と同じだと論評したスポーツ紙もあった。
バレー界は、批判を重く受け止める必要がある。来年は、五輪、世界選手権と並ぶ三大大会の一つであるW杯が日本で開催され、フジテレビが中継する。フジのスタッフは、自局の中継でない国際大会やVリーグにも熱心に足を運び、選手の信頼も得ている。選手たちの汗と涙を最もよく知るフジだからこそ、そろそろ真のスポーツとしてバレーを中継すべきではないか。少なくとも、三大大会では“特別ルール”を廃止すべきだ。
スポーツは公正な競争が前提である。このままでは、バレーがスポーツでなくなってしまう。その結果、最も傷つくのは選手たちである。
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