[中国国防費]もっと透明性を高めよ

2012年3月6日 09時16分
(27時間6分前に更新)

 世界経済を引っ張る中国は、国防費も2桁の高い伸びをみせている。だが、中国の国防費に関しては不透明な点が多い。「隠れた国防費」があるとみられ、実際の国防費はさらに膨らむ、という見方が専門家の間では有力だ。

 中国側は「数字はとても透明だ」と主張するが、海洋権益の拡大を目指す動きと相まって、周辺諸国に「中国脅威論」が広がる。

 中国には、懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、経済大国にふさわしい、軍事費の透明性を高める姿勢を求めたい。

 中国当局は2012年度の国防予算案が約6702億元(約8兆7千億円)になると発表した。前年度実績比11・2%の増加である。

 国防費は09年度まで21年連続で2桁増を示していたが、11年度から再び2桁増が続いている。

 ドル換算では、約1063億9千万ドルとなり、初めて1千億ドルの大台に乗った。経済とともに米国に次ぐ世界第2位の国防費である。

 ただ、この数字を額面通りに受け取る専門家はほとんどいない。実際の国防費は公表額の1・5~3倍に達するとみられている。

 中国人民解放軍の内部文書で研究開発費や外国からの兵器購入について「財政省が支出している」と明記していることが昨年明らかになった。公表されている国防費以外に別枠の財源があることを示すものだ。

 中国側が反論するにもかかわらず、透明性に強い疑念の目が向けられるゆえんだ。

 中国は自国の近海に米軍を近づけない「接近拒否戦略」をとる。ウクライナから購入した中国初の空母「ワリャク」の試験航行、「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル「東風21D」、次世代ステルス戦闘機「殲20」の開発を進めており、海洋権益確保のための軍拡路線が鮮明だ。

 中国の念頭には米国の存在があり、米国もまた同盟国とともに、中国の軍事的台頭に対抗するため、アジア太平洋地域を重視する新国防戦略を打ち出している。イラク・アフガニスタンからのシフトである。

 中国の接近拒否戦略に対し、米国は空海両軍の統合作戦能力を高める「エアシーバトル(空海戦闘)」戦略をとる。オーストラリアに最大2500人規模の海兵隊を駐留させるのも中国にらみだ。

 冷戦時代に逆戻りしたような両国の軍事的動向は気がかりだ。日本が島嶼(とうしょ)防衛の強化を計画するなど沖縄も無関係ではないからである。

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件以来、中国の複数の艦艇が宮古島の沖合を通過したり、中国の公船が久米島沖で海上保安庁の測量船に調査の中止をたびたび要求したりしている。久米島沖は、海洋資源の主権を持つ日本の排他的経済水域(EEZ)である。

 中国は周辺海域で軋轢(あつれき)を生むような行動を慎むべきだ。

 中国と米国は互いに軍拡競争をエスカレートさせる「安全保障のジレンマ」に陥ってはならない。周辺近海を「争いの海」にしないためにも米中の自制を促したい。

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