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農地復旧、進度に差 東北津波浸水2万ヘクタール超
 | 新年度は560ヘクタールが作付け可能になると見込む仙台市。浸水被害が大きかった仙台東部道路(写真下)の海側でも一部作付けが始まる |
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東日本大震災による大津波で2万ヘクタール超が浸水した東北の農地の復旧が、着実に進みつつある。この1年で浸水面積が最も多い宮城県では、作付け可能になる面積が被害面積の4割程度に達する見通しだ。国は今後3年間で全面復旧させる計画だが、壁は厚い。地盤沈下などで営農再開のめどが立たない地域や、福島第1原発事故の影響で被害状況の把握さえ進まない農地も残る。
<塩害を克服> 仙台市は耕作地の3割が津波被害に遭った。宮城野区の農業庄司力さん(59)の水田は、川を逆流した津波で40アールが浸水。塩分濃度は3%で、コメ栽培が可能とされる0.1%を大きく上回った。 昨年4月下旬以降、代かきを4回行っても塩分濃度は下がらなかった。それでも「駄目でもともと。とにかく植えよう」と5月下旬にササニシキを植えた。 1カ月半は根が張らず一進一退が続いたが、夏ごろに好転し収穫できた。10アール収量は例年並みの約420キロ。食味も最上位に続く評価で、塩害は回避できた。庄司さんは「田の水を切らさず、塩分濃度を上げないようにしたことが奏功したのでは」とみる。 宮城野区の農業鈴木久可さん(66)の水田は、がれきが多く、昨年は作付けを見送った。ことしは除塩作業を経て9.2ヘクタールで作付けを目指す。 がれき撤去に伴う表土の掘削は免れた。泥などによる富栄養化でイネの成長が進みすぎ倒伏の恐れがあるため、茎が太い「まなむすめ」を植える。鈴木さんは「再開に3〜5年かかると言われた。1年で再開できるとは」と感慨深げに語る。
<離農危機も> 市内では浸水農地のうち、本年産で560ヘクタールの作付けを目指す。市と農協、土地改良区で復興連絡会をつくり、国と県も加わり、復旧スピードが増している。 関係機関は作付け不能期間の長期化が、離農や耕作放棄を招くという危機感を共有する。東北農政局のアンケートでは、市内の被災農家の約2割が耕作をやめたいと答えた。仙台農協の高野秀策組合長(68)は「農地の復旧を急がなければいけない。併せて集約化など新しい農業モデルの模索も必要だ」と強調する。 国のプランでは2014年度までに岩手、宮城両県で浸水農地の95%が復旧可能と見込む。ただ文字通り「塩漬け」になりそうな農地もある。
<めど立たず> 宮城県塩釜市は離島の耕作地が軒並み浸水し、復旧の見通しはほとんど立っていない。「壊れた堤防の整備が先。海水の流入を止めないと何もできない」(浅海農政係)と危機感を強める。農地の浸水割合(推定値)が93.4%と、被災地で最も高かった宮城県七ケ浜町なども同じ状況だ。 福島県浜通りでは、福島第1原発事故の影響が再生を阻む。 原発に近い警戒区域と計画的避難区域の作付け制限は新年度も継続。警戒区域外の相馬市では今春、浸水農地の1割強の130ヘクタールでの作付けを目指し整備が進むが、警戒区域にかかる市町は「被害の実地調査も行えない」(浪江町)状態が続いている。
2012年03月07日水曜日
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