政府は、今の国会に提出する新型インフルエンザ対策の特別措置法案をまとめ、緊急事態のときは、国の対策本部が予防接種の対象者や接種する時期を定めるとして、法律上、すべての国民を予防接種の対象とすることを可能にしています。
政府は、毒性や感染力の強い新型インフルエンザが大流行した場合、最悪のケースで64万人が死亡すると推計していて、去年9月には、すべての国民が予防接種を受けることができる体制の準備を進めることを盛り込んだ行動計画をまとめました。
これを受けて、政府は、新型インフルエンザ対策の特別措置法案を今の国会に提出するため、医療関係者などからも意見を聞いて内容をまとめ、6日に開かれた民主党の部門会議に示しました。
それによりますと、新型インフルエンザが流行したときには、総理大臣が本部長を務める国の対策本部を設置し、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えると判断した場合には「緊急事態」を宣言するとしています。
そのうえで対策本部は、予防接種の対象者や接種する時期を定めるとしており、法律上、すべての国民を予防接種の対象とすることを可能にしています。
また、予防接種は市町村が実施し、費用の半分から9割を国が負担するなどとしています。
政府は、今月9日に法案を閣議決定したうえで国会に提出し、成立を目指すことにしています。
政府がすべての国民を予防接種の対象とすることを可能にする法案をまとめた背景には、毒性や感染力の強い新型インフルエンザが大流行した場合でも、社会的な影響を最小限にとどめようというねらいがあります。
国は、去年9月にまとめた「新型インフルエンザ対策行動計画」で、毒性や感染力の強い新型インフルエンザが大流行した場合、死亡者は最大で64万人に上り、ピーク時には、1日当たりの入院患者がおよそ40万人、企業などの欠勤は従業員の40%程度に上るという試算をまとめています。
こうした状況では、医療態勢がひっ迫したり、流通が滞って食料品や生活必需品が不足したりするなど、生活のあらゆる面に支障が出ると予想されています。
行動計画では、社会的な影響を最小限にとどめる対策として、発病や重症化を防ぐワクチンの活用を挙げています。
しかし、実際に日本の全人口を対象に接種を進めるには多くの課題があります。
まずワクチンの供給です。
インフルエンザのワクチンは、鶏の卵でウイルスを培養して作るため、全人口分を製造するまでに1年半から2年ほどかかります。
国は、国内のワクチンメーカーに交付金を配って、新たな製造方法の開発と施設の整備を進めていて、平成25年度までに製造期間を6か月に短縮することを目指しています。
しかし、3年前、当時の新型インフルエンザが国内で流行入りしたのは、メキシコで発生が確認されてから僅か4か月後だったことから、6か月後に全人口分のワクチンを準備できたとしても、効果は限定的ではないか、とする見方もあります。
さらに別の課題もあります。
ワクチンを確保したあと、どのような順番で接種を進めるかという問題です。
優先順位の決定には、重症者や死亡者をできるかぎり抑えるため持病のある人たちを最優先する、国の将来を守るために子どもを最優先するなど、さまざまな考え方があります。
こうした考え方を十分に検討し、ウイルスの性質が分かった段階で速やかに優先順位を決定できるようにしておく必要があります。
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