日々の戯言


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3月2日(金) BLACKCAS [7] [この記事]

朝日新聞で、存在を報じる記事 [URI | 魚拓] が出て以来、WOWOW 他 4 社が共同声明を発表と読売 online で報じられる [URI | 魚拓なし] といった具合に目まぐるしく物事が動いていてついていくのが大変ですが、今回は BLACKCAS に対して有料放送事業者等がどのような対策が可能かということを書いていこうと思います。

◇◆◇

まず最初に松コースから。これは次の手順で対処が進むことになります。

  1. 現在使われている暗号アルゴリズム (プロトコル番号 0)と、それとは異なるアルゴリズム (プロトコル番号 1) 両方に対応した新 B-CAS カードを作成する
  2. 新しく販売される受信機には、新 B-CAS カードを添付する
  3. 現在有料放送を契約している視聴者には、新 B-CAS カードを直接郵送し、差し替えをお願いする
  4. 新カード郵送後、半年後あたりで、ECM/EMM の暗号アルゴリズムを、現在のプロトコル番号 0 から、プロトコル番号 1 に切り替える
  5. これまでに販売された BLACKCAS は、新暗号アルゴリズムに対応できないので、有料放送は視聴できなくなる
  6. 新 B-CAS カードを持っている人は、これまでと何も変わらずに有料放送を契約できる
  7. 旧 B-CAS カードを持っている人が、有料放送を契約しようとした場合は、新カードを改めて郵送し、カードを交換してもらう

解説します。松コースですので、かなりお金がかかります。現在、WOWOW およびスカパー E2 等で有料放送に加入している約 400 万人に対して、新カードを送付することになるので B-CAS カードの原価である約 400 円と、送料・事務費で一枚あたり 100 円と考えて、計 500 円がかかるとすると、有料放送の契約者に対して新カードを送付するだけで、約 20 億が必要になります。

しかし、BLACKCAS の中の人は EMM の復号アルゴリズムを知っているので、EMM 経由で B-CAS カードをアップデートすることはできません。(そもそもそれが可能なのかどうか、STD-B25 を読んでもよく判らないのですけれど)

ですので、郵送で物理的に別カードを送付して、カードの差し替えをお願いすることになります。この方法であれば、BLACKCAS の中の人に新暗号アルゴリズムがすぐにバレてしまうことはないので、もう一度新カードを物理解析して、アルゴリズム等を突き止められるまでの時間を稼げることになります。多分 2 年程度は新たな BLACKCAS が現れる心配をしなくても済むようになるのではないでしょうか。

◇◆◇

松コースで説明した暗号アルゴリズムの変更、そんなことをして現在の受信機は大丈夫なのかと心配になる方もいるかもしれませんが、ARIB STD-B25 6.0 の 27 ページに次の記述が存在します。

(3) プロトコル番号
IC カード内処理機能、暗号アルゴリズム等の識別を示すコード

これは、EMM 先頭にあるプロトコル番号という 1 バイトデータの説明部分なのですが、ここからは、B-CAS カードが元々プロトコル番号を変更することで、暗号アルゴリズム等を変更することを想定して作られていることが読み取れます。

受信機にとっては、丸ごと B-CAS カードに渡すだけのデータである ECM/EMM の中だけで閉じた情報のことですから、何の影響もありません。そのカードがそのプロトコル番号のデータを処理することさえできれば問題なく機能します。

◇◆◇

次に竹コースです。こちらは DTV 板の BLACKCAS スレで「電機屋の中の人」を名乗る方が書き込んでいた内容で、真偽は不明ですが、次の手順で対処が進みます。

  1. 今後発売される TV 等では、異常に長い (2 年以上?) 未来の契約期限を持つ B-CAS カードを、不正カードとしてエラー扱いする
  2. 現在発売中・および過去に発売された TV 等も、可能な限り同等のファームウェアアップデートを行う

こちらは、受信機メーカにかなりの負担がかかる形の対策です。また、当然ながら、パイオニアやビクターといった TV の生産から撤退しているメーカや、既に事業清算されてしまっているメーカー製の機器ではファームウェアアップデートが不可能ですので、対応としては完璧なものにはなりません。

また、既に漏れてしまっている暗号アルゴリズム等を使い続けるということですから、BLACKCAS の中の人が、カード内の契約期限が 1 ヶ月を切る毎に翌年までの EMM を生成するようなアップデータを作成してしまったら、どうするのだろうと心配になったりもします。

◇◆◇

最後に梅コースです。こちらは既に書いたことのある Kw の一定期間毎の更新なのですが……えーっとやらないよりはマシだと思うのですけれども、やっても無駄だと思うのですよね。

おそらく BLACKCAS の中の人は、有効な有料放送の正規契約を (Km が判明している B-CAS カードを使って) 維持していて、そのカードに向けた EMM を監視しているでしょうから。新しい EMM が降ってきたら、Km を使って復号して、新しい Kw が追加されたかどうかすぐに知ることができる訳ですし。

で、Kw の追加が判ってしまえば、後はこれまでに販売した (当然のように Km は記録してある) 各カード向けのアップデータを作ることは簡単なことです。やらないよりはマシかもしれないのですが、対策してるポーズにしかならないんじゃないかなぁと思ってます。

◇◆◇

技術的に可能な対策としてありうるのは、以上の 3 つぐらいだろうと考えています。費用を度外視して、完全な対策を求めるのであれば、松コースをオススメします。

特に、松コースの場合、BLACKCAS の中の人が、EMM の暗号アルゴリズムや、M001/M002 カードから Km を取りだすための手法等を公開するという現在の商売を諦めるに等しい行為に踏み切ったとしても、有料放送に与えるダメージを 0 にできます。

問題になる費用に関しては…… M001/M002 のメーカに対して「お前の作ったカードの瑕疵のせいなんだから、交換費用負担しろ」とか言っておけばいいんじゃないでしょうか。


2月26日(日) BLACKCAS [6] [この記事]

BLACKCAS の話の続きです。前回、16 日間体験視聴の EMM を BLACKCAS に入れることで、スカパー E2 系チャンネルの有効期限が 2038/04/22 から 2012/03/10 に短縮してしまいました。

というわけで、BLACKCAS のサポート窓口に状況とカード ID を伝えて「復旧用の EMM を 16 進ダンプで送ってもらえないか」とメールで問い合わせてみました。

結果、先週末からの集中注文の発送処理が終わったと思われる 25 日夜に、BLACKCAS の中の人から EMM と ECM が 16 進ダンプで届きました。

◇◆◇

届いた EMM (こちらは 16 進データを晒すのは止めておきます) を BLACKCAS カードに処理させたところ、結果は次のようになりました。

◇◆◇

更新された契約期限が当初の 2038/04/22 ではなく、2012/08/23 だった件について BLACKCAS のサポート窓口に問い合わせたところ「もうしばらく EMM 監視しててくれ、16 日間体験視聴の EMM が送信されなくなった段階で、契約期限を FIX する EMM を送る」との返信がありました。

◇◆◇

また、おまけで届いた ECM は次の内容のものでした。

00 1e 02 b8 c0 61 40 fb 2b 40 2e d4 2f bb 58 80 
4f 6e de 67 48 45 c1 8f 5e 33 72 ea 4f 22

こちらは、2 バイト目で明らかなように、事業体識別 0x1e (無料広告放送) 向けの ECM で、こちらを (BLACKCAS に限定されない) B-CAS カードに処理させると、次の Ks が得られます。

4d 61 72 75 6d 6f 40 42 6c 61 63 6b 43 41 53 00

さて、この 16 進データを ASCII として解釈してみると…… "Marumo@BlackCAS" となります。いやー BLACKCAS の中の人もなかなかシャレの効いたことをしますね。

◇◆◇

という訳で、2 月 7 日 [URI] に推測として書いた内容のうち、次の点はほぼ事実として確定しました。

現時点で推定として残っているのはどのようにして各カードに固有の Km を割り出したかの部分ですが、これまでのところ 2ch BLACKCAS 関連スレッドで報告されたものが M002 に限定されていることから、ID -> Km のアルゴリズムまではまだ漏れていないのではないかと考えています。


2月24日(金) BLACKCAS [5] [この記事]

BLACKCAS の話の続きです。前回 B-CAS ID を晒したことで、2 月 22 日からスカパー E2 から EMM が送られてくるようになりました。これが放送事業者が対策の為に独自に送ったものであれば楽しかったのですが、残念ながら誰かが 16 日間体験視聴を申し込んだだけのようで、WEB から 16 日間体験視聴の手続きを進めてみたら「カードは登録済みです」とのエラーが表示されてしまいました。

月末まで放置されたあたりで「こんなことで、くやしいっ!! でも……」とかいいながら 16 日間体験視聴を申し込もうかと思っていたのですが……無意味になってしまいましたね。B-CAS ID を晒す際に check_code の部分の下 3 桁を隠しておけばよかったなと後悔してます。

◇◆◇

本題です。2/22 に送られてきた EMM は次の 71 byte のもので、これを EMM 受信コマンドで BLACKCAS に送ると、リターンコード 0x2100 で正常に EMM が処理されました。

00 07 37 c7 90 0e 40 00 08 65 1c 67 53 81 72 8c 
64 51 b8 39 4e 7d 76 36 ae cc 5f 7f 7a 3f 79 52 
c9 3c 31 8c c7 f2 f7 ef d9 9a a5 23 03 f9 d5 25 
66 e4 c7 a8 84 30 02 f1 1f 77 a0 fc 4d 87 8b 08 
f6 b5 aa c7 2b 5c 2d 
◇◆◇

この EMM を BLACKCAS に送った結果ですが、casinfo で出力される情報は次のように変化しました。

◇◆◇

このように、BLACKCAS でも通常の B-CAS カードのように EMM を有効に受け付けます。2 月 7 日 [URI] に書いたように、HW 自体は B-CAS カードをそのまま利用しているという仮説の確からしさが少し高まりました。

PC 環境で利用せず、一般に販売されている TV やレコーダで利用している方、BLACKCAS の B-CAS ID を不用意に晒すとこのように EMM が送られて契約期限が縮まることになるので、5 万円が惜しい方は止めておきましょう。

まあ、BLACKCAS の商品保証に「カードご購入後は適切にご使用し、大事に保存してください。半永久視聴を確保するため、絶対カード番号を他人に教えたり、ICチップを損傷したりしないでください。」と書かれていることなのですけれどね。


2月20日(月) BLACKCAS [4] [この記事]

BLACKCAS の話の続きです。予告からは多少遅れましたが、到着&視聴確認開始から 16 日以上が経過した 2/20 でも、難視聴含めて受信可能な BS 局は全局視聴可能であることが確認できています。

動作確認にも飽きてきたので、今回、到着した BLACKCAS の B-CAS ID を晒してみることにします。上の写真に写っている casinfo の出力から読み取れる通り、到着した BLACKCAS の CARDID は 0000 3100 0596 4944 2958 でした。

繰り返しますね。0000 3100 0596 4944 2958 でした。

◇◆◇

13 日以降、BS ANIMAX (BS17/TS1) を 06:00〜18:00 の間全サービスで録画して、0x0000/0x0001/0x0011/0x0014/0x0700 の pid を保存していますが、これまで上記カード ID に向けた EMM は送信されていませんでした。

今後も、06:00〜18:00 の間 BS ANIMAX を保存してみて、EMM が送信されるようになるか、EMM が送信されたらそれを BLACKCAS に与えてどうなるか調べていきたいと考えています。


2月13日(月) ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラム ver. 0.2.5 [この記事]

久しぶりの更新です。[URI] からダウンロード可能です。今回の更新内容は次の点です。

手元で BLACK LAGOON に利用していたら、問題を見つけてしまったので更新しました。

◇◆◇

補足。復号が行われなかった TS パケットはスクランブルフラグが立ったままなので、症状が出ていれば検出は可能です。


2月11日(土) 芸術文化に係る補助金等の不正防止に関する検討会 (第 1 回) - 感想 [この記事]

2 月 8 日 (水) に文化庁にて標記の面白そうな検討会 [URI] が開催されていたので、我慢しきれずに傍聴しに行ってしまいました。手抜きモードで傍聴した感想をここに記録します。

現時点ではまだ文化庁サイトに当日配布された資料があがっていないようなので、スキャンした PDF をこのサーバに置いておきます。配布資料は以下の通りです。

資料 2 「議事等の公開について」にある通り、めずらしく「撮影・録音」が完全に自由な会議だったので、IC レコーダで遠慮なく録音しておこうかと思っていたのですが……私のミスでレコーダが二台とも空き容量不足で録音に失敗してしまっていました。

◇◆◇

この会議が開かれるに至った経緯ですが、資料 4 「検討資料」にあるように、昨年・一昨年と「日本オペラ連盟」「東京室内歌劇場」「日本浪曲協会」と補助金に関する不正が明らかになり、このままでは補助金が事業仕分けの対象になってしまうのではないか(ひいては天下り先の減少に繋がってしまうのではないか)という危機感から開かれたものなのだろうと邪推しています。

今回は、座長の選任と、事務局からの状況説明、各委員の自己紹介&意見表明、意見交換という流れで進みました。座長選任の部分は非公開ということで傍聴者は一時会議室の外に出ることになった訳ですが……大学教授・文化財団理事・弁護士・公認会計士・芸団協職員 というこの委員名簿 (資料 1 / 2 ページ目) を見るに、座長選任の部分を非公開にする意味があるのかなと疑問を感じたりもします。多くの方が予想しているだろう通りに座長には静岡文化芸術大学 片山 泰輔 教授が選任されました。

◇◆◇

今回傍聴していて興味深かった発言は、米屋 尚子 委員 [日本芸能実演家団体協議会 芸能文化振興部長] の、文化庁の補助金運用方針自体に対する不満でした。曰く……

いやー、補助金を「適正」に受け取るのって大変なんですね。

◇◆◇

この会議を聞きながら、思い浮かんだのは 有川 浩「シアター」[URI] で描かれていた世界でした。片山 泰輔 座長 的には、全ての補助金受け取り団体に「春川 司」級のビーン・カウンターが居ることが理想なのかななどと考えつつ……そんな人は普通、劇団とかに関わろうとしないよなぁと難しさを感じたりもしました。

さて、この検討会は資料 6 によれば第 3 回までで一定のとりまとめを行う予定らしいのですが……どの辺りが落としどころになるんでしょう。


2月8日(水) BLACKCAS [3] [この記事]

BLACKCAS の話の続きです。今回は BLACKCAS カードの法的解釈についてです。これはカードを提供(製造・販売)している側の評価と、カードを購入して使用している側の評価に分かれます。

◇◆◇

まず BLACKCAS の基になっている B-CAS カードは「有料放送を契約して、正規の Kw と契約期限が書き込まれた B-CAS カードでなければ視聴できないようにする」というものなので、BLACKCAS のように非契約者が有料放送を放送事業者の意思に反して視聴できるようにするカードは、不正競争防止法 第 2 条 1 項 11 号に記述されている技術的制限手段を回避していると見なされるだろうと考えています。昨年、平成 23 年 12 月 1 日から施行されている現行不正競争防止法での条文を次に記載しておきます。

(定義)
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
<中略>
十一  他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)

この条文は非常に読みづらいのですけれども、B-CAS カードに関連する部分だけを抜き出すと、次の形になります。

十一  他人が特定の者以外の者に影像の視聴をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像の視聴を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入する行為。

これでもまだ判りづらいと思いますので、さらに言葉を変換しつつ要約してみます。

放送事業者が契約者以外に視聴できないように暗号化している放送を、契約者以外が暗号を復号して視聴できるようにする装置を譲渡したり、引き渡したり、あるいは譲渡・引渡し目的で展示・輸出・輸入するのは「不正競争」行為とする

このように私は BLACKCAS カードは不正競争防止法 第 2 条 1 項 11 号にある「装置」に該当すると考えています。ただし不正競争行為と見なされるのはあくまでも 譲渡・引渡し あるいは 譲渡・引渡し目的での展示・輸出・輸入 なので 購入使用 は不正競争行為には該当しません。

今回の BLACKCAS の場合のように国外の者から個人が直接購入する場合、国外の販売者に対して、不正競争防止法 第 3 条 / 第 4 条にある 差止請求 / 損害賠償請求 ができるのか、第 21 条 2 項 4 号にある 5 年以下の懲役・500 万以下の罰金 (併科可) といった罰則を負わせることができるのかまでは調べきれていません。(まず無理だろうと思っていますが)

個人で自己使用目的で輸入する場合は 譲渡・引渡し目的での輸入 には該当しないので、不正競争行為となる心配をする必要はないと考えていますが、ネットオークション等に流す目的で輸入する場合 譲渡・引渡し目的での輸入 に該当して不正競争行為となってしまいますから、国内に居住する日本国籍を持つ人がそうしたことを行うのは止めておいたほうが良いと思います。

特に、昨年 12 月 1 日から施行されている現行不正競争防止法で 第 21 条 2 項 4 号が追加され、第 2 条 1 項 10 号 / 11 号が刑事罰対象となっており、福岡で任天堂 Wii を改造していた事業者が 2/2 に逮捕・2/3 に起訴されている [参考] ことからも判るように警察側は積極的に摘発する姿勢を見せているので、代理購入といったことも行わない方が安全だと考えています。

念のために、不正競争防止法 第21条 2 項 4 号の原文を下に載せておきます。

(罰則)
第二十一条  <中略>
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
<中略>
四  不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第二条第一項第十号又は第十一号に掲げる不正競争を行った者

また、関税法も昨年改定されており、第 69 条の 11 が改定され、不正競争防止法 2 条 1 項 10 号 / 11 号を構成する物品は税関で没収・廃棄できるようになっているので 譲渡・引渡し目的での輸入 は避けた方がよいと考えます。関税法の当該条文は以下の通りです。

(輸入してはならない貨物)
第六十九条の十一  次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
<中略>
十  不正競争防止法第二条第一項第一号 から第三号 まで、第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為(これらの号に掲げる不正競争の区分に応じて同法第十九条第一項第一号 から第五号 まで又は第七号 (適用除外等)に定める行為を除く。)を組成する物品
2  税関長は、前項第一号から第六号まで、第九号又は第十号に掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる。

このように、税関で輸入を止められるようになったとは言え、あくまでも不正競争防止法の定義を満たす場合に止められるだけなので、譲渡・引渡し目的での輸入 ではなく、個人使用目的での輸入の場合は税関でも没収・廃棄はできません。

個人で利用したいのに税関で止められてしまった場合は、税関からの連絡に対して「譲渡・引渡し目的ではなく、個人使用目的である」と主張すれば、没収・破棄を回避して通関させることが可能です。

◇◆◇

以上のように、現行不正競争防止法では技術的保護手段を回避する装置の譲渡や引渡しを妨げることは可能ですが、個人の入手や利用を直接妨げることは不可能となっています。BLACKCAS に関わろうとする人は、この線をうっかり越えてしまわないように気をつけましょう。余計なお世話かもしれませんが。


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