【北京・成沢健一】中国財政省は5日、第11期全国人民代表大会(全人代=国会)第5回会議に提出した2012年の予算案を公表した。治安対策などに充てる公共安全費を前年実績比11・5%増の7017億6300万元(約9兆1200億円)としており、国防費を予算額と伸び率のいずれでも上回った。
温家宝首相は全人代の政府活動報告で「社会管理の機能を強化する」と表明。指導部が交代する共産党大会を秋に控え、社会の安定維持を最優先する考えを鮮明に示した。
公共安全費には治安対策を担う武装警察や公安部門、司法機関などの経費が含まれる。中国では土地の強制収用などに対する住民の抗議行動が各地で相次ぐほか、チベット族やウイグル族の居住区で分離・独立に向けた動きも目立つ。中東・北アフリカの民主化の動きが波及するのを防ぐため、当局は民主活動家らへの監視も強めており、増額にはこうした状況が背景にあるとみられる。
公共安全費は2010年の実績ベースで国防費を初めて上回り、予算でも国防費を上回った昨年は前年実績比で13・8%の伸びを示した。今年の国防費としては前年実績比11・2%増の6702億7400万元(約8兆7000億円)を計上している。
毎日新聞 2012年3月6日 東京朝刊