'12/3/5
イコカ普及で切符販売困った
JR呉線新広駅(呉市広古新開)で、障害者通所施設「若椿作業所」がJRから受託している切符販売業務が存続の危機に直面している。ICカード「ICOCA(イコカ)」導入で切符を買う客が減少。通所者の賃金などに充てる手数料収入が半減したためだ。施設関係者は「現状では手を引くしかない」と嘆く。
無人駅である同駅の駅舎に入居する作業所は同年3月、JR西日本広島支社から業務を受託した。窓口販売に限り売り上げの5%を手数料収入として得る仕組みで、04年ごろは月30万円余りの収入があった。指導係2人の賃金計約25万円を差し引いた残りが、販売に当たる通所者の賃金になっていたという。
転機は07年。JR西日本が広島エリアでイコカを導入。電子マネーでの支払いが増え、窓口販売は減少した。売り上げの大きな割合を占める定期券販売も減った。同駅ではIC対応の定期券が販売できないためだ。
JR西日本広島支社によると、IC定期券は全国のJRが共用するホストコンピューターに接続できる「マルス端末」を置く駅のみ販売できる。端末があるのはJR直営か、業務全般をグループ会社に委託した駅で、同駅にはない。
作業所の手数料収入は現在、月約15万円で約10万円の赤字だ。作業所の稲葉真由美所長(56)は「作業所の誇れる特色だったが…」と肩を落とす。
JRも複雑だ。同駅の10年度の1日乗客数は約3600人。呉線に無人駅は14駅あるが飛び抜けて多い。今も作業所が休む土、日曜は呉駅の駅員を派遣して対応しているほどだ。委託をやめるなら有人化や駅舎改修などが検討課題として浮上してくる。
障害はコスト面だけではない。同駅は近くの公共施設や病院などへのアクセス向上を望んだ地元の「請願駅」で、整備費計約7億6千万円は市や病院などが負担した。駅舎など主要施設は市の所有で改修するにしてもJRの一存では決められないのだ。
JR西日本広島支社は今後の対応について「呉市や作業所の意向を確認した上で検討したい」とコメントしている。
【写真説明】新広駅の窓口で客に切符を販売する作業所の通所者(右)