「無難な数字」で経済の失敗を回避する
(8) 4% 教育費
政府はGDPの4%を教育経費として支出するとし、「地方財政も相応の」予算計上を求めた。中国では内陸部の貧困地域をはじめ初等教育の水準に問題がある地域が多く、底上げが急務になっている。政府活動報告でも、農村の小・中学校の立地を改善し通学しやすくするほか、「栄養改善計画」の実施を掲げている。有力大学の多くが大都市に立地していることも、教育格差がなかなか縮小しない一因とされる。
また、格差改善の数字としては、2011年、中国の都市化率(都市部に住む人口の割合)が50%を超えた。ただ、出稼ぎ農民を表す「農民工」や、高学歴ワーキングプアを示す「蟻族」といった話題が絶えず、経済格差が縮小した実感は薄い。さらには、「一人っ子政策」の下での急激な人口移動が、独居老人の介護問題なども引き起こしており、中国が高齢化の重荷にどう対応していくかが注目される。
(9) 1兆2287億元 農業支援
政府が三農(農業、農村、農民)問題に費やす金額だ。これは前年比で1868億元の増加としている。農地の規模拡大や灌漑の整備、災害対策が柱となっているほか、水道や電気などインフラ整備も進める計画だ。食料安全保障の観点でも、増収対策に力を入れる考えを示す。一方、農村部における生活水準の底上げや格差対策は後回しになっているとの批判も根強い。
(10)PM2.5 環境規制
この数字は直径が2.5μm以下の超微粒子を指す。ディーゼル車の排気ガスなどに含まれ、ぜんそくや気管支炎を引き起こすとされる。この言葉が初めて政府活動報告に盛り込まれたことが注目を集めている。
活動報告では北京や天津、上海を含む長江デルタ地域、広州を含む珠江デルタ地域などでPM2.5の観測を始めると明記されており、近い将来、環境規制に盛り込まれる可能性が高まってきた。
中国は政権交代期を迎えて、権力争いが激化している。政府活動報告は「無難な」内容が多く盛り込まれた。無理に高度成長を追わないことで、経済が次代のリーダーを狙う有力者の思わぬ「落とし穴」にならないように、細心の注意を払っていると見ていい。